王都アグリアス陥落までのカウントダウン
直人達が旅立って1年と少し過ぎたある日の王都アグリアスでのこと。
「エドワード、最近の街の様子はどうかしら?」
「姫様の頑張りもあり、前よりも賑やかになっております。近隣の村々も最近は人の出入りも多く、とても良い方向に向かっております。」
「そう、それならよかったわ。お父様が王位と私に譲ってから、王都や近隣の村々がゴーストタウンになってはならないからね。ここからさらに活気づかせるわよ!」
「はい!このエドワード、姫様の為に全力を尽くしてまいります。」
(一時はどうなるかと思ったが、王位を継承されたことで姫様もここ1年で立派になられたものだ。すべては直人様達のおかげか。)
「こら、エドワード!何をボサッとしているの!?街の視察に行くわよ!」
「かしこまりました。」
エリーは、たまに時間をみつけては街に繰り出し様子を見るのであった。街の食糧問題、それから治安、さらには近隣の村々への視察。数えればキリの無いくらい仕事をしている。そんなエリーが冒険者ギルドに立ち寄ると、
「あ!エリー王女!こんにちわでやんす。」
そこに居たのは3人組は、以前凛の大切な杖を壊してアリスとガロードにボコボコニされた盗賊だった。あの後騎士団に捕まり1年の禁固刑に処された後最近刑が終わり、今では盗賊から足を洗って冒険者として暮らしている。
「あなた達は確か、1年前に凛ちゃんの杖を壊してアリスとガロードにボコボコにされた3馬鹿よね?」
「3馬鹿って・・・ひどいでやんすね。ま、確かにあの時はなんて馬鹿なことをしたと思っているでやんすが。いつか、凛様にも謝りたいと思っています。もちろん、アリスの姉さんや、ガロードの旦那にもですぜ。」
「そう、叶うといいわね。って、ずいぶん話し方が変わってない?前はオラオラ系だったのに!?」
「いや、あっしたちもあんなチンピラみたいしゃべり方はどうかと思いまして。心改め、しゃべり方も改めましたでやんす。」
「あ、あ、そうなの。それは良かった。でも、今の方がよっぽどチンピラみたいしゃべり方になってると思うのは私だけかしら?」
「エリー王女、そりゃないいでやんすよ。」
「あははははは!ごめんなさいね!でも、本当にこれからは真っ当に生きなさいよ!みんなの為にね!」
「もちろんでやんす!世のため人の為になるでやんす!では、あっし達は依頼があるのでこれで失礼するでやんす。」
「気を付けて行ってらっしゃい。」
こうして、3馬鹿たちは自分たちの受けた依頼主の所に向かうのであった。
(ククククククッ。バカな王女様だぜ!簡単に俺達の事を信じてやがる。そう簡単に変わってたまるかよ!俺達の味わった屈辱いつかはらしてやる!それに、あの聖女とあのメイド、それからあのクソガキ。必ず殺す。覚えてやがれ!)
それから何日かが過ぎ、いつも通り街の視察を終えたエリー達は王城へと戻り今後の事への計画を立てていた。すると、イザベラ部屋に入ってきた。
「エリー様、どうやら伝書バトが手紙を運んできたみたいで。内容を確認いたしますか?」
「伝書バト?今時珍しいわね?誰からかしら?どれ、見せてちょうだい!」
イザベラは、伝書バトの足についていた手紙をエリーに見せる。直人達とは手紙でやり取りをたまにしていたが、ガロードは居場所を転々としていたためこの1年連絡が取れていない。その事もありエリーは、直人達からの急ぎの連絡かと思い恐る恐る手紙を開封する。
すると、手紙はガロードからでその内容はガロードがライオネルから得た情報が記載されていた。もちろん、ガロード達もアグリアスに向かうと書いてあり、出来れば急ぎ直人達にもこの事を伝えてくれとのことだ。手紙を読み終えたエリーの顔から血の気が引けるのを確認したエドワードが、
「姫様、大丈夫ですか?顔色が優れないようですが?なんて書かれておりましたのですか?」
「大変よ、エドワード!今すぐ街の者を広場に集めなさい。大至急よ!」
エリーが手紙をエドワードに預けるとすぐさまどこかに行くようにエリーは部屋を出る。エリーから受け取った手紙を見るエドワードは、
「ま、まさか。こんなことが・・・・・。」
すると、手紙を読み終えたエドワードも街の者を集めようと準備を開始しようとしたのだが、
「し、失礼します。エリー王女は居ますか?大変なことが起きました!」
「エリー様は、これから民衆と話すべく準備をしておられるところだ。どうした?何があった?」
「そ、それが。ア、アレンシア王国と、クリスタ王国が堕天使の手により落ちました。」
「な、なんだと!それは本当か?」
「は、はい。確かな情報です。間違いありません。」
「では、直人様達はどうなった?確か王都イザークに居たはずだろ?」
「それが、確認できてないのです。逃げた住民も居るようなのですが、直人様達を見かけたという情報はありません。」
「な、なんと・・・。」
「我々は、いかがいたしましょう?」
「お前たちは、急ぎ住民を集めこの街およびこの近隣で依頼をしている冒険者達を呼び戻せ!いいな!」
「はっ!」
(まずいことになったぞ。ガロード殿の見立てよりずいぶん早いな。それに直人様達が行方不明となると。ええい、こうしちゃおれん、私も急ぎ準備をせねば。)
この数日後、王都アグリアスは堕天使率いる魔王軍との戦闘に入るのであった。




