フィーレ王国へ出発。
ライオネル達が去った後、馬車の中に隠れていた依頼主が、
「お、おい君たち、大丈夫か?」
慌てて馬車の中から出てきた依頼主が問いかける。
「ああ、俺らは平気だ。それより、おっちゃんは王都に引き返した方がいい。この先の村も襲われるかもしれない。王都なら、冒険者達も居るし次の村よりかは安全なはずだ。」
「そうだな、そうするしかなさそうだ。君たちはどうする?王都に戻るなら、乗っていくといい。ちゃんと護衛の報酬も払うよ。君たちが居なかったら私は死んでいたからね。」
「いや、俺達は急ぎフィーレ王国に向かう。奴らが王都アグリアスを襲う計画を立ててるみたいだからな。一刻も早く向かわないと。」
「そ、そうか。冒険者ってのは大変なんだな。」
「まーな。でも、これで飯食ってるから仕方ないんだが。」
「じゃ、報酬を渡さないと。受け取ってくれ。」
「いや、俺達はおっちゃんを次の村まで案内しきれてないから受け取れないよ。」
「いや、いいんだ。さっきも言っただろ?兄ちゃんたちが居なかったら、この金も荷物も奪われていたんだからな。それに、この後フィーレ王国に向かうんだろ?距離もあるし、持っていたことに越したことないじゃないか!?」
「まあ、そういう事なら素直に受け取らせてもらうか。ありがとうな、おっちゃん。」
「いいってことよ!それより、兄ちゃんたち死ぬなよ。死んだら元も子もないからな。」
「わかった。必ず生きてまたおっちゃんと会えるのを楽しみにしているよ。その時は、無償で護衛してやるよ!」
「そいつは楽しみだ。それと、こいつを使え!伝書バトと傷薬だ。情報を伝えたいなら、こいつが一番早い。傷薬はおまけだ。」
「何から何まですまない、助かるよ。じゃ、俺達はそろそろ行くよ。じゃな、おっちゃん!」
「ああ、達者でな!」
こうして、行商人は王都へと引き返しガロードはレイナとシーレの元に向かう。
「レイナ、大丈夫か!?」
「うん、解毒薬のおかげで少しは動けるよ。それより、ガロードの方は平気なの?」
「ああ、いつものことだ。何ともない平気だ。」
「そっか、良かった。あとはシーレちゃんが・・・。」
シーレはMPの使い過ぎと、ライオネルの攻撃で気絶したまま起きない。
「シーレのやつ相当無理したっぽいからな。あんなシーレ今まで見たことないぞ。俺以外の事で怒るなんて。」
「そうなの?優しい子だからそんなことないと思うんだけど。」
「あいつは、いつも誰かに対して敵視むき出しにしてるからな。レイナは何か特別なのかな?」
「特別か・・・。ならいいんだけど。これからどうするの?」
「俺とシーレは、フィーレ王国に向かう。レイナはついて来ないほうがいいと思う。さっき以上に、激戦になりそうだからな。」
「で、でも・・・。フィーレ王国に行けばお姉ちゃんに会えるかもしれないし。それに、私だって冒険者なんだから、そう簡単には死なないつもりよ!?」
「親父の話しじゃ、あんなのがゴロゴロ集まるって話しだぞ?それでも行くのか?」
「行くわ!シーレちゃんや、ガロードが守ってくれたみたいに、今度はあたしが2人を守る番!」
「なら、いいんだが!くれぐれも無理はするなよ!?今度は、俺もシーレもレイナを守れる保証はないぞ!?」
「大丈夫!任せなさい!」
「よし、じゃレイナはガルに乗って行け!俺はシーレを連れて走る!」
「え?3人で乗れば!?ガルなら、3人乗せるぐらい余裕じゃない?それに、ガロードだって戦ったばかりで相当疲れているんじゃない?」
「い、いや。そ、それはそうなんだが。色々問題がありまして・・・。」
「どんな問題?ガロードがシーレちゃんを抱っこして、あたしがガロードに抱き着けば済む話しじゃない!?」
「い、い、い、い、いや、それが問題なんだって!!」
「ん!?あ、さてはあたしに抱き着かれるとドキドキしちゃう?まったくウブだなー、ガロード君は!」
「う、うっせー!ほら、さっさと行くぞ!ガル、第二形態に変身してくれ!」
「ガルルルルルルルッ」
すると、ぬいぐるみ化していたガルが第二形態に変化して、レイナがガルに跨る。少し後ろのポジションに座って、
「ほら、ガロードも乗って!その方が早いでしょ?時間が無いんでしょ?」
「そりゃ、そうだけど・・・・・。」
「ガルルルル。」
ガルも早くしろと言わんばかりにガロードを見て唸っている。
「わ、わかったよ!れ、レイナ!へ、変なところ触るんじゃないぞ!いいな!」
「な、何よ変なところって!」
「変なところは変なところだ!さ、触った瞬間ガルから降ろすからな!覚悟しておけ!」
「はーい!」
ガロードは、渋々シーレを抱えガルに飛び乗る。ガルも、ようやくかという顔でガロードを見る。
「な、何だよガルまで。って、レイナそんなくっつくなよ!」
「何よ!こうしないと振り落とされるでしょ!?それに、こんなかわいい子が抱き着いてるのよ!?ありがたいとおもいなさい!」
「い、いやしかしだな・・その・・なんだ。なんか2つの柔らかいものが背中に当たってだな・・・」
自分の体勢がどうなっているのかを冷静になったレイナが顔を真っ赤にして、
「が、ガロードのエッチ!な、な、な、な、何考えてるのよ!?」
「し、し、知らねーよ!レイナが勝手にそうしてるんだろ?俺は何も悪くないぞ!」
「が、が、ガロードが意識するからいけないんじゃないの!!この変態!」
「な、何だと!?変態はレイナの方だろ!!」
「な、な、何よ!やろっての?上等じゃない!受けて立つわよ!」
「いったなこの野郎!上等だ!降りろ!」
すると呆れたガルが、付き合ってられんと走り出す。突然ガルが走り出したことによって、さらにガロードとレイナの体が密着する。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「し、しっかり、つ、つかまってろよ。振り落とされるなよ。」
「う、うん」
なんだかんだで、2人はその後恥ずかしさが勝り黙り込むのであった。




