シーレの力
無事に王都に着いたガロード達。辺りはすっかり暗くなり、王都の中も昼間と違って落ち着いた雰囲気となっている。出歩いている冒険者も少なく、街の住民もちらほら居るだけだ。
「さて、ここいらで解散とするか。色々ありすぎて疲れただろう。ゆっくり休んでくれ。」
「何から何まで本当にありがとうございました。それとガロードさん、洋服代を返さないと。こんな立派なお洋服をタダで貰うわけには・・・。」
「いや、いいよ。これから先、お金も必要になるだろうし。気持ちだけ受け取っておくよ。さて、シーレが眠そうにしてるので俺達は宿屋に帰るよ。この先の冒険も気をつけてな。変なパーティーにつかまるなよ。」
そういって、ガロードは眠そうにしているシーレを抱っこして自分たちの宿屋に帰るのであった。
「ガロードさん達みたな冒険者ばかりだったらいいのに。」
レイナは、去っていくガロードの背中をみてそんな事を口にしていた。
「そうだね。でも、現実は違う。私は今日1日で思い知らされたわ。レイナ、私明日には王都を出て自分の村に帰るわ。」
「そう・・・。そうね、それがいいわ。いつまでもここに居るものでもないわ。私も近いうちにここを出てお姉ちゃんを探すわ。必ず探し出して見せる。」
レイナとニコルは今日が2人で居る最後の日となり、この後宿屋で今までの冒険の思い出を語り合った。そして、夜が明け次の日の朝。
「チュン、チュン、チュン・・・・・・。」
今日も朝からシーレは、ガロードのバックに何か入れている。昨日、森の中で拾った木の実や、葉っぱそれと少しボロボロなロケットペンダント。そんなことも知らず、ガロードは相変わらず寝ている。ガロードの横ではぬいぐるみ化したガルも寝息を立てて寝ている。
中々起きて来ないガロードに対してシーレは暇を持て余していた。ガロードの寝顔を見て満足すると、ガロードのほっぺたを叩き始めた。
「ペチン。ペチン。ペチン。」
「んー。」
起きないガロードにシーレは悪戯を始める。お腹をくすぐったり、髪の毛を引っ張ったり、鼻をつまんだりするが、一向に起きないガロード。ついにはシーレが怒り出し、ガロードの背中を押して、ベットの下に落とす。
【ドンッ】
「いて!何だ!?敵か?」
そんなボケたことを言うガロードをみて、ベットの上で飛び跳ねて大喜びをするシーレ。一緒にガルも飛び跳ねている。
「おいコラ!シーレ、何てことをしてくれてやがる。いてーじゃねーか!」
そんなことはお構いなしに、着替えを始めるシーレ。まるで「自分が起きないから悪いのだ」と言わんばかりに、ガロードをチラッと見て洋服を脱ぎ始める。
「んー。んー。んー。」
相変わらず、洋服を脱ぐのが苦手なシーレ。じたばたするのを止めて、ガロードが助けてくれるのを静かに待つ。
「何だシーレ。まさかとは思うが俺が助けてくれると思っているのか。」
「・・・・・・・・・・・。」
微動だにせずだんまりを決め込むシーレ。やがて、ガロードが助けてくれないと悟り、泣き始めてしまう。
「んー・・・・。んー・・・・。」
「俺は知らないぞ!シーレが俺に悪戯するからこうなるんだ。自分でなんとかしろ。」
そんな言葉を聞き、さらに泣いてしまうシーレ。次第に、シーレの周りに紫色の電流らしきものが現れる。これにはガロードも今まで見たことない光景で慌て始める。次第に、地面が揺れ部屋の花瓶などが割れ始める。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待ったシーレ!俺が悪かったから落ち着けって。」
ぬいぐるみ化しているガルも何やら慌てている。それでも一向にシーレの周りにある紫色の電流らしきものはおさまらない。
「ごめん、ごめん、シーレほら抱っこしてあげるから泣き止んでくれ。」
両手を万歳して途中まで洋服を脱ぎ掛けているシーレをガロードは、パジャマを元の状態に戻し泣いているシーレを抱きかかえようとするが、電流らしきものが意外と痛い。
「いててててて。何だこの力は・・。こんな力今まで発動したことなかったぞ。これも堕天使の力なのか?」
なんとか抱きかかえることに成功したガロードは、シーレの頭を撫でる。
「よし、よし、シーレごめんよ。俺が悪かったよ。許しておくれ。」
次第に泣き止むシーレ、するとかなりのMPを消費したためかそのまま寝てしまう。
「いったい、シーレのなかで何が起こったんだ。この力はいったい。」
謎に包まれたシーレ抱いたまま考え込むガロードであった。




