王都イザーク防衛戦 其の3
【直人達が魔物襲撃の話しを聞く30分前】
【王都イザーク王城にて】
「ふん、何かと思えばそんなくだらない事か。アレクよ、お前は優しいからいつも騙されてしまうのだ。今回もそう、あのスカイなんちゃらとかいうパーティーに唆されているだけだという事がなぜわからん。」
「しかし父上、ここ最近、近くの村が次々と魔物に襲われているではありませんか!?」
「襲われているだけで占拠はされておらん。今回はそのSランクパーティーがしくじっただけの事だ。あいつらのランク降格も考えないとな。」
「父上!それはいくらなんでも・・・」
「黙れアレク!」
ここまで王の横で話しを聞いていた第1王子のヴィクトリアが口を開いた。
「お前はいつまで父上に迷惑をかけるつもりだ。今回も勝手に村からの子供を引き受けるなど。どうするつもりだ。」
「兄さんは子供たちを見殺しにしろとでも言うのですか?」
「そうは言っておらん。ただ、親を失った子供たちをどこで面倒みるというのだ。この王都には孤児院などないのだぞ?見ず知らずの子供を誰が引きとるというのだ?金持ちの貴族か?金持ちの貴族に引き取られてみろ、あいつらは子供たちをゴミ同然に扱うだろう。だったらその村で死んでいった方が楽だったかもしれないと子供たちに後悔させることになるのだぞ。」
「父上や兄さまは、この国の民を大切だと思わないのですか?なぜ、困っている民に手を差し伸べてあげないのですか?彼らだって必死に王都のために働いております。彼らが育てた食料があるからこそこの王都が成り立っていることになぜ気が付かないのですか?」
「うるさい!所詮は平民。そいつらが王都に食料を差し出して当然なのだ。金を払ってるだけありがたいと思うのが普通だろ。」
「・・・・・・・腐ってる。」
「ん!?何か言ったかアレクよ!?」
「もういいです。子供たちは私が面倒をみ・・・・・」
【ドオオオオオオオオオオオン】
「な、何だ?何事だ?」
「し、失礼します。お、王様!魔物達の軍勢が街に侵攻してきました。」
「な、何!?シールドや魔道兵器はどうした?」
「そ、それが得体のしれない黒い羽の生えた魔物が、街の中心にある魔石を破壊して起動しません。」
「羽の生えた魔物?」
「ま、まさか直人さん達が言っていた堕天使!?」
「な、何という事だ!す、すぐに王城の守備を固めろ!冒険者どもにここを守らせるのだ!ええい、早くしろ」
「か、かしこまりました。」
兵士は慌てて部屋から出て行った。王や、第1王子のヴィクトリアはかなり混乱している。あれだけ自負していた王都イザークの防衛システムが破壊されたのだから、混乱するのは当たり前である。兵士の後に続き、アレクも外に飛び出していった。
「何処に行くアレク!戻ってこい!」
しかしアレクは聞く耳を持たず街へと繰り出していった。
「ほおっておけ。あんな出来損ない居ても居なくてもよい。それより近衛騎士をこの部屋に集めろ。我々も逃げるぞ。王都は破棄する。」
「わかりました。直ちに準備いたします。」
こうして、ここからそれぞれの運命が分かれることとなる。




