村の生存者
直人達は、王都イザークからほど近いトーリ村に来ていた。ここが最近魔物の被害にあっている村だ。小さい町ではあるが作物を育てている畑の面積はかなり大きい。畑を見ると、様々な野菜、麦、果物が育てられている。だが、おそらく魔物の被害にあったであろう畑もちらほらある。直人達はまず、この村の村長にあいさつするべく村の中を見て回るが・・・・・・・。
「静かすぎる・・・・・・。どういうことだこれは?村人が1人も居ないぞ・・・・・・・いったいこの村はどうなっているんだ・・・・・・」
周りを見渡しても村には人の気配がしない。このあまりにも異常な光景に直人は手分けして村人を探そうとしだが、アリスがそれを拒む。
「もし、仮に堕天使が関わっていたら対処できないと思うのでここは3人離れず固まって探した方がいいと思う。」
「それもそうだな。自ら自分達のリスクを負って探すこともないか。2人も俺から離れるなよ。何か見つけたら教えてくれ!」
「はい」「わかった」
直人達は家、母屋、畑などを虱潰し(しらみつぶし)に探した。すると、
「兄さん、あそこの家に人のオーラが複数あります。」
「何?本当か!?」
「はい、ただ地面の中だと思います。」
「地下室か何かか・・・・。よし、細心の注意を払って行くぞ!気を抜くなよ」
直人達は、凛が言う人影があると言う家に入っていった。一見、普通の家で争った感じなどはない。すると、台所の床に一箇所だけ違和感のある場所を見つける。直人はその床を調べてみると、地下へと繋がる梯子を見つける。
「まずは俺が先に行く。合図をしたら2人とも降りてきてくれ。」
「「了解」」
まず直人が先に降りて辺りを確認する。どうやら地下はシェルターみたくなっており、梯子を降りたら直ぐに1つの部屋を見つけた。そっと扉を開けると何人かの子供が居る。
「お兄ちゃん、誰か来たよ。」
「シッ!ユイ喋るな!また奴かもしれない!みんなも声を出すなよ」
その部屋には大人は1人もおらず、複数の子供達だけが居た。みんな息を殺して居る事がバレない様にしている。それでも直人はSランクパーティーのリーダーだと言うこともあり、子供達の気配を感じ取る。
「そこに誰か居るのか?俺達は王都イザークから来た冒険者パーティー、スカイセイントだ。もう大丈夫だ!助けに来たぞ!」
直人は子供達に警戒心を解いてもらおうと優しく声をかけるのだが、誰1人出てこない。
(参ったな。誰も出てきてくれないぞ。部屋の中が暗すぎるのが悪いか。敵も居なそうだし、2人を呼ぶか。凛なら上手いことやってくれるだろ。)
「みんな、そこを動かず少し待っていてくれ。今、仲間を呼んでくる。大丈夫、君たちに危害は加えない」
直人は急ぎ凛とアリスを呼びに行った。降りた先は、部屋が1つしかなく魔物も居ない、そして子供たちが警戒していることを2人に話した。
「というわけで、男の俺より凛やアリスにお願いしようと思うんだがどうだ!?」
「この場合だと、一番年下の凛様が適任かと・・・・。」
「え!?私?私にできるかな・・・・・・?」
「まずは部屋が暗くて俺たちの顔が見えないから部屋を明るくしてみよう。そうすれば警戒心も少しは解けるはず。」
「そうだね。顔が見えないと子供たちは不安になるよね。分かった!私やってみる。」
そして、凛を先頭に直人達はさっきの部屋まで来た。中に入った凛が魔法を唱える。
『ホーリーライト(聖なる灯り)』
すると、部屋一面が電気が付いたように明るくなる。
「みんな、怖い思いさせてごめんね。助けに来たよ!この村で何があったかお姉ちゃん達に教えてくれるかな?」
そう凛が言うと1人の子供が近づいてくる。
「おい!ユイ戻れ!」
すると、先ほど兄に注意されたユイが凛の側までやって来て話し始める。
「あ、あのね、村に悪い魔物が来てお父さんやお母さん、それに村の人まで連れて行っちゃったの。魔物が村に現れてから、お父さんが私達にここに居ろって言って魔物に連れていかれちゃったの・・・・・・・。」
ユイは瞳に涙を浮かべながら凛に事情を説明する。魔物どんな奴だったのか、どれぐらいの数なのか、知ってる情報すべて凛に話した。
「そっか。ありがとねユイちゃん。怖かったよね、話してくれてありがとう。私達が来たからには、凛ちゃんたちに指一本触れさせないから安心してね。」
凛はやさしくユイを抱きしめ頭を撫でる。そして、安心したのかユイが泣き始めると皆凛の側に来て泣き始める。
「お、お父さん・・・・お、お母さん・・・・」
何ともやるせない気持ちになった凛が、
「兄さん、アリスさん一刻も早く村の人を救いましょう。」
何かを決意したのか、凛が珍しく鋭い目つきをして直人に言う。杖を握りしめたその手は震えていた。
「ああ、そうだな。早く見つけ出してやらないとな。」
直人達は、子供たちにここから出ないようにと念をおして魔物討伐に向かった。




