意味のない面会
タニアを含め直人達4人は王城のとある部屋に来ていた。部屋の中には直人達の他に国王ディアス、第1王子ヴィクトリア、第2王子アレク、近衛騎士3人の10人が居る。直人達は、ディアスに直接王国の防衛策を徹底するべきだと伝えに来た。
「お主たちがSランクパーティーの天空の聖人か。して、今日はどの用件で我々と話しがしたいと?」
「はい、この王都の防衛面での見直しを進言したく参りました。」
「ほほう。これはまた面白いことを申すな。この王都の防衛面で不満があるとそう申すのか?」
「はい、単刀直入に言います。国王様は堕天使の存在をご存じでしょうか?」
「堕天使?見たことは無いが文献には何やら記載されてた覚えがあるが。それがどうした?」
「ここ1年で、3体の堕天使が目撃されました。というより、我々はその3体の堕天使と直接戦闘をしました。1体は我々の仲間が倒したのですが、残りの2体は逃走を図りました。あいつらの目的は魔王を復活させるといっております。」
直人はシーレがガロードと共に居ることをふせた。少なくと、シーレは堕天使だが敵ではない。もし、シーレが堕天使だとわかれば殺されるからだ。直人達はシーレに何かしらの秘密があるとみている。だからここでは迂闊なことは言わない。
「ふむ、なるほど。で、それとこの王都の防衛面での不満があるというのはどういった事だ?この王都は、魔石による防衛設備がある限り王都には魔物1匹たりとも入れん。現にこの王都は何百年もの間魔物の侵入を許したことは無い。」
「それは、今までに堕天使が現れなかったからの事です。奴らの強さは異常です。1個体で何個の村や街が消えて無くなるかわかりません。それほどまでに恐ろしいのです。」
するとここまで黙って聞いていたヴィクトリア王子が口を開く。その顔は何をバカげたこと言っているのだこいつらはと言わんばかりの顔をしている。
「はん、バカバカしい。堕天使ごときでこの王都が落ちるとでも?冗談は寝てから言え。この王都が落ちるわけなかろう。そうでしょ父上?」
「そうだな。この王都は魔法結界がはられており、無人魔道兵器が王都に近づく魔物どもを一掃してくれる。故にこの王都が進行されるなどありえない。」
「ですが、もし王都の中心にある魔石が破壊されたら、それらは機能しないはずです。そしたら、この王都は1日かからず侵攻されるでしょう。」
「馬鹿げているな。話しにならん。王都の中央にある魔石には最大限の魔法結界がはられている。Sランクパーティーの【魔導士】の最上級魔法でもびくともせん。」
「失礼ですが、王様は堕天使を舐めすぎています。魔法結界など堕天使の攻撃でいとも簡単に打ち破られることでしょう。」
「ありえんな。これ以上話しをしても時間の無駄だ。お引き取り願おうか。」
「ですが、王様このままでは・・・・・・・」
「くどい!立場をわきまえろ。おい、そこの兵士!こいつらをつまみ出せ。」
「はっ!」
「くそっ」
こうして、堕天使の事を軽視していたことが後に大損害を招くことになるのはまだ誰も知らない。
王城を追い出された直人達は仕方なく借宿に戻ろうとしていた時に1人の男に呼び止められる。
「ま、待ってください。はあ、はあ、はあ」
「あなたは確か・・・」
直人達を呼び止めたのはこの国の第2王子のアレクだ。アレクだけは他の2人とは違い事の重大さに気が付いていたのだ。魔法結界を信じすぎて、もしもの時のことも考えてない2人は違って。
「はい、第2王子のアレクです。先ほどの話し詳しく聞きたくて引き止めました。すみません。」
「いや、俺達の話しを聞いてくれる人が居るだけでもだけでもまだ対処法があるってもんだ。」
直人達は堕天使の強さ、人数、特徴など知っていることを全てアレクに話した。
「なるほど。確かにこの街は一瞬で壊滅するでしょうね。私の方でも対策の準備はしておきます。まず手始めに冒険者の人数を増やしてみます。戦力は多いことに越したことは無いので。」
「よろしくお願いいたします。私達も長くは王都にはいないので。調べ物が終わり次第、次の街にでも向かおうと思いますので。」
「調べものですか?いったい何を?」
「俺達は、呪いの事を調べるために旅をしています。中々手がかりが無いのですが。」
「呪いですか。もしかしたら文献が残ってるかもしれないので、私の方でも調べてみます。」
「本当ですか?それは助かります。」
「いえ、直人さん達が居なかったら、この街は長くはもたなかったでしょう。ですが、皆様が助言をしてくれたことにより、この先も王都の安全は守られることでしょう。」
「だといいのですが。」
こうして、直人達の王様への無駄な面会は終わった。唯一の救いが、アレク王子だけはまともだという事だ。