別れ。そして新たな旅へ
シーレが直人たちのパーティーに来た翌日。
「やってくれたな・・・・・・・・・・。」
何やら必死にガロードに向けて話すシーレ。言いたいことは分かるが伝わらない。
「んー。んー。んー。んー。」
「ま、しょうがないけどな。」
シーレの頭を撫でるガロード。そんなシーレは申し訳なさそうにしている。そう何を隠そうシーレは・・・・・・
お漏らしをしてしまったのだ。
ガロードの横で一緒に寝ていたシーレがお漏らしをしてしまったという事は、もちろんガロードも、
「俺もびしょ濡れだぜ・・・・・・。」
「「・・・・・・・・・」」
2人して沈黙する。そんな時、朝の訓練を終えた直人が部屋に入ってきて、
「何だ?ガロード、その歳で漏らしたのか?」
「ち、ちげーよ!これはだなシーレが・・・・・・・」
チラッとシーレを見ると明後日の方向を向いて吹けない口笛を吹く真似をしている。
【ひゅ、ひゅ、ひゅー。】
「こ、このやろう・・・・・・。」
【ゴツンッ】
ガロードがシーレに拳骨をした。
「んー。んー。んー。」
部屋の隅に移動して座り込むシーレが必死に頭をおさえて何か言っている。
「ったく、シーレこっちに来い。お風呂と洗濯してくるぞ。」
ガロードがそう言うと、シーレはニコニコしながらガロードの方に行き、ガロードはシーレの手を取り、備え付けのお風呂場へと消えていく。
「ほんと、あの2人を見てると飽きないな。」
直人はニコニコして2人を見送った。そして、風呂と洗濯を終えたガロード達は朝食を食べるために宿泊者が集まる食堂へと移動する。
「で、シーレ!?何でそこに居る?」
テーブルを皆で囲っているのだが、ガロードの正面に直人、直人の横にアリス、アリスの横にエドワード、ガロードの横に凛、凛の横にエリー、ガロードの膝の上にシーレ。
「シーレ、めっちゃ食べにくいんだが。」
「んー。んー。」
ここはシーレのポジションだと言わんばかりに動こうとしない。そして、シーレはガロードの正面に向き口を開ける。
「いや、自分で食えよ。」
「んー。んー。んー。」
シーレが頬を膨らませ、ガロードを叩きながら怒っている
「いてててててて。やめろシーレ!」
「ほら、しーちゃん。お姉ちゃんが食べさせてあげるよ、ほらあーん。」
シーレはチラッと凛を見てプイッとそっぽを向く。
「んー。」
「こらこら、いくら優しいお姉ちゃんでもそろそろ怒るよ!」
シーレは、歯をむき出しにして凛を威嚇する。
「んー。んー。んー。んー。」
「お前は犬か何かか!?」
「相変わらずガロード以外には心を開きませんね。」
苦笑いをするアリス。
凛はしょんぼりして諦める。
「ったく、しょうがねーな。ほれシーレ口を開けろ。」
これでもかっていうくらい大きく口を開けるシーレ。
「んー。んー。」
とても嬉しそうにするシーレ。
「ところで、兄さん。前に行ってた一緒に旅をするって話なんだが、やっぱり俺はついていけないや。シーレを連れて親父を探そうと思う。」
「え!?ガロード君一緒に行ってくれないの?」
「ああ、悪い。俺が居ると凛さんの呪いを解く目的も遅くなっしまうし、姉さんの妹さん探しも遅くなっちまうからな。」
「そ、そんな・・・・・。」
「そうか、分かった。くれぐれも気をつけろよ。」
「ああ、わかってる。シーレがいる以上堕天使も現れる可能性もあるしな。」
「そうね、確かにシーレが居ると堕天使が現れる確率は上がるわね。何かあったら王都アグリアスに手紙を頂戴。手助けを出来るかもしれないから。」
「ありがとうエリーさん。」
「お礼を言うのはこっちよ!私のわがままで危ない目に合わせたんだから。今度はこっちが助ける番!」
「恩に着る」
「出発はどうするんだ?」
「今日にでも行こうと思う。エリーさん達も今日帰るんだろ?途中まで護衛するぜ」
「そうね私達も今日発つわ!」
「そっか・・・みんなともお別れか。」
「凛ちゃん、一生会えないわけじゃないわ!いつかまたこうしてみんなで会える時が来るわよ!」
「そうだぜ凛さん、根性の別れじゃないんだし。またいつか会えるさ。きっとその時はシーレも心を開いてくれるさ」
「んー。んー。んー。」
相変わらず凛に歯をむき出しで威嚇するシーレ。
「ははは。だといいんだけど。」
「じゃ、飯でも食うか。その後みな旅の支度をして出発だ。」
「うん」「そうね」「そうですね」「そうですな」「へーい」「んー。」
そして皆旅の支度をして街の入り口に来た。
「じゃ、みんなそれぞれ気を付けて!」
「エリーちゃんも、エドワードさんも、ガロード君も、シーレちゃんも体に気を付けてね。」
「んー。」
あいかわらずシーレは凛に対して怒っている。
「最後まで嫌われるのか・・泣きそう。」
「あはははは。ちゃんと教育しておくよ。」
「じゃ皆様、お世話になりました。またお会いしましょう。」
こうして皆別々の目的のために別の道へと歩いていく。
第2章 王都イザーク編へ続く。




