襲われた馬車
俺たちは今、村から定期的に出ている王都行きの馬車の中にいた。乗客は、俺たちの他に3人家族が1組だけだった。この家族は俺達とは別の村から乗ってきた。
その親子はこれから王都まで買い出しに行くとの事だ。小さな娘さんがおり、凛はその子の相手をしている。俺も、その子の両親と王都について話していた。すると、
『と、盗賊だ!』
馬車の御者が大きな声でそう叫んだ。
前方を見てみると、1台の馬車が盗賊達に囲まれている。見える限りでは盗賊は15名ほどその他に馬車を護る形陣取っている者7名ほど。あきらかに、馬車の護衛の方が分が悪い。助太刀に行くべきかと考えていたら凛が、
『行ってきたら兄さん。行きたいんでしょ?私の事なら平気よ。いざとなったら例のアレを使うから。ほら、何の心配もないでしょ?はい、人助けして来なさい。』
凛は俺の俺の心をよんだかの様にそんな事言ってくる。
『わかった。行ってくる。凛、危なくなったら呼べよ!』
と言って俺は襲われている馬車へと駆け出す。
『相変わらず兄さんは人が良いな。困っている人が居ると助けたいって気持ちがすぐ顔に出るから分かりやすいよ。まったく。』
と凛はブツブツと言っている。
その頃直人は、手に持っている刀を抜き臨戦態勢のまま馬車へと近づく。
『助太刀する!』
そう直人が言うと、髭面の男性が
『すまない!助かる!』
馬車の中をチラッと見ると、金髪で品のある若い女性と目が合う。その横には銀髪でショートカットのメイド服を着た若い女性が横に居る女性を護る形で前に出た。
俺はそのメイド服の女性をみてお互いの視線が合った時、こくりと頷き外の盗賊達に攻撃を始める。やはりただの盗賊ではい。
各々の戦闘技術が段違いで優れている。こちらが俺と、髭面の爺さん、メイド服の女性、合わせ3人に対して向こうはまだ8人も居る。
(なかなかキツイなあ。人数差では圧倒的に不利だし、尚且つあの金髪の女性を守りながら戦うとなると、もしもの時の為の護衛で1人は金髪の女性を守らなければならないので貼り付け状態だ。そうなると1人あたま3人は最低でも相手にしなくてはならない。)
とそう思っていると盗賊達が先に動き出すが、直人の思っていた構図とは違う形となる。直人に2人、髭面の爺さんに2人、メイド服の女性に4人となる構図になった。
『しまった!やられた!』
直人、それから髭面の爺さんがメイド服の女性の方に助太刀に行こうするがお互いの2人盗賊が邪魔をする。直人は決して弱いわけではないが強いとも言えない。
ずっと田舎の村で過ごしてきた為、これと言って剣術を師に教わるということがなく、自己流でやってきてた為いつから限界を迎えていた。
『このっ!このっ!このっ!』
直人に焦りが生じる。
『クソっ!当たらねえ。』
時に焦りは致命的なミスを及ぼす。
短刀を持った2人の盗賊はかなりの連携が取れており、1人の盗賊が一瞬の隙を突いて直人の右足に蹴りを入れて、もう1人が直人の顔面を殴打する。
焦って武器ばかりに集中してた直人は武器を持ってない手や足の攻撃が来ることに注意を払っていなかった。そして、もろに顔面への殴打を喰らった直人は吹き飛び、二転三転と転がる。
『ぐはっ。』
直ぐに起き上がり態勢を整えるが盗賊の攻撃が止まらない。直人は防戦一方を余儀なくされている。
一方、髭面の爺さんも攻撃こそ喰らっていないがこちらも決定打に欠けている。どちらも譲らない攻防が続いていてメイド服の女性の助けに行けない。
メイド服の女性はと言うと、こちらは物凄い戦闘を繰り広げている。1体4という圧倒的に不利な状況にも関わらず、お互いに一歩も譲らない。
メイド服の女性は、短刀とクナイを上手く使い分けて馬車に盗賊を近づけさせていない。動きも非常に良く、無駄の無い動きで敵の攻撃をかわし、直ぐ様攻撃に出て盗賊の1人を倒す。だが、まだまだ状況は芳しくない。
1人を倒した所でまだ3人いる。徐々に体力を消耗し始めたその時、倒したと思っていた盗賊の男が馬車に向けて持っていた短刀2本を投げた。
『死ねえ!!』
『チッ!小賢しい!』
メイド服の女性は、その短刀に向けてクナイを2本放つが1本は当たりもう1本は無情にも外れ馬車の金髪の女性目掛けて飛んでいく!
『クッ!姫様!お逃げ下さい!』
ニヤリと笑う盗賊だったがその時・・・・。




