凛とエリーの絆
直人達は、エリー達を連れて宿屋まできた。
『コンコン』
「凛、俺だ!入るぞ。」
直人が凛のいる部屋に入ると、直人から貰った杖を抱きしめて座っている凛が居た。
「あ、兄さんお帰りなさい。」
力ない声で凛が答える。
「ただいま。さっき戻って来た。悪かったな1週間も留守にして。」
「別にいいよ。兄さんだって忙しい事ぐらい分かってるから。それで用事はもう済んだの?」
「ああ、もう大丈夫だ。明日からはこっちで色々動く予定だ」
「そっか。ごめんね兄さん。迷惑かけて・・・・・。」
今にも泣きそうな表情で凛は直人に謝った。
「気にするな。人は誰だって立ち止まってしまう事ぐらいある。俺だって、凛が呪いをうけてしまった時正直どうしたらいいか分からなかったしな。」
「・・・・・・・。」
「でもな凛、いつまでもそうしていちゃダメなんだ。ここで1歩を踏み出さないと、これから先得られる物も得られなくなる。俺はなあの時、このまま凛がこの先ずっと呪いをうけたまま生き続ける事が悔しくてな。何であの時凛がした事を俺がしてやらなかったのか毎日後悔してる。俺がうけるべきだったと。」
「兄さん、それは違うよ?もし、あそこで呪いをうけたのが兄さんだったら私はおそらく今でも何も出来ていない。それこそ、自分では兄さんの呪いを解くために旅に出るって選択は出来てなかったと思う。私にはそんな勇気なかったから。何も出来ないで、兄さんに甘えてばかりの妹でしかなったと思う。だから、呪いをうけたのが私で良かったんだよ。私は、今でも幸せなの兄さんがそばに居て、アリスさんも居てくれる。ガロード君も優しくしてくれる。それに、私の初めて出来た友達エリーちゃんに出会えた。すごく嬉しかったの。私にこんな素敵な出会いをさせてくれた、毎日が充実した日々を送らせてくれてる兄さんには感謝してる。だから呪いをうけたのが私で良かったの。だから兄さんはそんなこと考えないで。」
すると、痺れをきらしたエリーが部屋に入ってきて、
「ちょっと凛ちゃん!何言ってるの!?自分が呪いをうけて良かった?それ本気で言ってるの!?もし本気で言ってるなら私は凛ちゃんを許せない!直人さんがどれだけ辛い思いをしてるか考えたことある?唯一の家族が自分を庇って呪いをうけてしまった事への罪悪感。それも可愛がっていた妹よ!どれだけ悔しい事か考えたことある!?きっと罪悪感で心が折れそうになったことも数えきれないくらいあるでしょうね。そう言った罪の意識はねこの先ずっと消えないのよ?少なくとも凛ちゃんが呪いをうけてるうちはね!」
「え!?エリーちゃん何でここに居るの?」
「は!?何でここに居るの?じゃないわよ!杖が無くなったぐらいでへこんで、凛ちゃんの呪いをどうにかしてあげなくちゃと思ってる直人さんにそんなことで足を引っ張って!そんな足手まといの顔を見に来たのよ!はんっ!笑っちゃうわね!凛ちゃんがこんな愚図だったとはね!見損なったわ!」
「ちがう!ちがうもん!これは兄さんに貰った宝物だもん。エリーちゃんにはわからないよ!大切にしている物が目の前から無くなってしまった時の気持ちなんか!」
「あー、わからないね!わかりたくもないわ!でもね、本当に大切にしているものがあるのに何も出来ない自分が居る悔しさだって凛ちゃんにはわからないでしょうね!」
「・・・・・・・・・・・・。」
「私はね、今自分が憎くてしょうがないのよ!王女なんかに生まれて来なければあなたと旅が出来る。あなたの呪いを解く手伝いだって出来る。直人さんやアリスの力にだってなれる!でもね、王女ってだけで生きてくうえでの制限もかけられる。やりたい事も何一つ出来ない。みんなが必死になって呪いを解く方法を探しているのに、私は指をくわえて王城で待つことしかできない。この悔しさがわかる?素のままで居られる唯一の友達が苦しんでるのに何も出来ないでいるの。こんなの辛すぎる。出来るなら私だって一緒に旅をしたい。呪いが解けた時にそばに居たい。でも、それが出来ないの!
王女に生れたってだけで・・・・・・。」
そう言うとエリーは膝から崩れ落ち泣き出してしまう。
「悔しい・・・・・悔しいのよ・・・・私は・・・。」
「エリーちゃん・・・・・・・。」
泣いてるエリーを凛は抱きしめる。そして
「ごめん。エリーちゃん。エリーちゃんがそこまで私の事を思っていてくれたなんて知らなかった。ごめんね。」
凛も目から涙が零れる。
「エリーちゃん。私頑張ってみるよ。みんなのために、みんなの努力を無駄にしないために、私頑張る!」
凛はエリーの頭を撫でながら言う。
「な、なにお姉ちゃんぶっているのよ!私のが先に生れたんだから凛ちゃんより年上よ!」
「おいおい、何だか話しが脱線してねーか?」
とガロードが言うとアリスが
「黙れガロード。死にたいのか。」
「はい、すみません。」
「さて、凛とエリー気が済んだか!?」
と直人が言うと
「兄さんごめんなさい。」
「すみません直人様」
「いや、2人して謝るなよ。そしたらエリー。ほれ例の!」
「あ!そうだった。エドワード!?」
「はい、こちらですね。」
「あ!エドワードさん!お久しぶりです。」
「はい、凛様お久しぶりです。相変わらず可愛らしいですね。」
「何よエドワード!私にはそんなこと言わないじゃない!」
「はい、いいません。私は思った事しか言わない主義ですので!」
「エドワード覚えてなさい」
「はい、今忘れました。で、姫様こちらを」
「相変わらず逃げるのがうまいわね。ま、いいわ」
エドワードから杖を受け取ったエリーが、
「凛ちゃん手を出して。」
「手?こう?」
差し出された凛の手の上にエリーは杖を置く。
「これって・・・・・杖?」
「そうよ!昔私が使っていた大切な杖。こう見えて私のクラスは【精霊士】なの!昔は使っていたのだけれど、今はもう前線に出ることもないから、私には不要な物。そこでこの杖を凛ちゃんに使ってもらいたいの。受け取ってもらえないかしら?」
「え!?でも大切な物って今・・・・」
「ええ、とても大切な物よ!亡くなったお母様か頂いたものなの。だから誰も使わないんじゃなくて、正しく使ってくれる人に渡したかったの。それが凛ちゃんなの。前は直人さんに貰った杖を大事そうに使っていたじゃない?その杖が無くなってしまった今、凛ちゃんならきっと大切に使ってくれると信じているから、貰ってほしいの。」
「でも、私なんかが・・・。」
「私の唯一の親友に使ってもらいたいの!他の誰でもなく凛ちゃんに!だから、ね!?お願い!私にも凛ちゃんを助けさせてよ。」
「・・・・・・・・・・わかった。大切にする。ずっと大切にする」
「よかった。ありがとう。」
「良かったな、エリーちゃんと渡せて。」
「そうですね。これで心置きなく遠くから凛ちゃんの応援が出来る。」
「良かったですね姫様。これで心置きなく王都の仕事が出来ますね。良かった、良かった。」
「いや、そこは嫌よ?」
「さ、さっそく王都に帰って仕事ですぞ!姫様!」
「えええええええ!嫌だーーーもっと凛ちゃんと一緒にいる。てか旅に出る。」
「何をおっしゃりますか!先ほど自分は王都から出れないと言ったばかりですぞ。」
「そこは得意の忘れなさい。」
「いつまでも覚えています。」
「いやだああああああああああ」
こうして長い1日が終わったのである。