いざ凛のもとへ
直人がリッカ街を出て1週間が経った。
「また背中がガラ空きですよ」
『ドガッ』
「ぐはっ」
「いいですか!?ガロードは目の前の標的に集中しすぎです。実戦だと敵は1人とは限りませんよ。私みたいに暗殺者は常に背後から攻撃することを意識してますから。」
「けどよ、背中に目があるわけでもねーのにどうすりゃいいんだよ!?」
「常に周りの気配を感じながら戦うのです。」
「んな無茶な。姉さんじゃあるまいし。出来るわけねーよ!」
「なら死ぬだけです。それを出来るようになるための修行です。ガロード、あなたは素質があります。いつか私より強くなるはずです。」
「素質ね・・・・・。ほんとにあるのかねえ。姉さんに1度も攻撃当てられてないし。心が折れそうだ。」
「こんなところで弱音を吐いても強くなれませんよ。いいんですか?貴方にはやることがあるのでしょ?」
「むむむ。ま、確かにこんな所で弱音吐いててもしょうがねーか!よし、姉さんもう1回頼む!」
「はい、喜んで!いきますよ!」
とその時、【風切り】
『ゴゴゴゴゴゴゴン』
「クッ!?」
『ドガンッ』
「うわぁ」
「流石はアリスだな!あれを避けるか・・」
「直人様!お戻りになったのですね!」
「いててててててっ。ってあれ?兄さんいつの間に」
「よう!ガロード!お前はもう少し周りに気を配れ」
「・・・・・ついさっき同じことを姉さんに言われた。」
「あはははは!そうか!そりゃ悪かった!」
「ほらガロード!直人も同じこと言うじゃない!これで分かったでしょ!?」
「はーい。これからは周りも意識してみます!」
「よろしい!」
「ん!?ずいぶんとこの1週間で仲良くなったな!」
「そりゃまあ、毎日一緒に修行してたからな。それに、姉さんの言う事聞かないと怒られるし。」
「ははははは!そうかそうか!」
「笑い事じゃねーっての!」
「それで直人、用事はすんだの?」
「ああ、おかげ様でばっちりだ!助かったよ、アリス、ガロード」
「気にしないで!これくらいお安い御用よ!」
すると、自分だけ蚊帳の外だと感じたエリーが
「あ、あの・・・・・・そろそろよろしいでしょうか?」
「え!?エリー様?どうしてここに!?」
「エリー!?誰だ?」
「ガロード、このお方は王都アグリアスの第1王女のエリー様です。」
「へー、第1王女ね・・・・・・・・王女様!?」
「はい、王都第1王女のエリーです。どうぞよろしく。」
「あ、あ、あ、あ。兄さん俺、王女様に向かってなんて口の利き方を・・・・・・。殺されないかな?」
「ああ、多分死罪だな。残念だけど。」
「いやあああああああああ。死にたくなーい!」
「直人様、何勝手な事言ってるのですか!怒りますよ!」
「あははは!悪い、冗談だ!」
「もう!」
「姫様、そろそろ本題を・・・・」
「ああ、そうね!懐かしくてつい。」
あまりに話しが進展しないので、あきれてたエドワード本題に入るよう促した。
「こほん。で、今日私達が来た目的はズバリ凛ちゃんにこれを渡すためです!」
そう言って、アリスとガロードにドヤ顔で杖を見せるのであった。
「エリー様、これって・・・」
「ええ、そうよ!私が昔使っていた大切な杖よ!この杖を今日凛ちゃんに託すの!そのためにここまで来たのよ!」
「ですが、よろしいのですか?これはエリー様の亡きお母様から頂いたもの。」
「え!?それは聞いてないぞエリー!」
「だって言ったら受け取ってくれないでしょ?だから内緒にしてたのよ!ここまで来たら、もう渡すしかないでしょ?ふふふっ」
してやったりの顔をするエリー。してやられた直人。
「やられた・・・・・。」
「この杖は、もう私にはもう必要ないもの。だったらこの大切な杖を、大切な人に使ってもらいたいの!それだけよ!」
「わかりました。エリー様が良いというなら。きっと凛様もお喜びになるでしょう。」
「きっと凛ちゃんならこの杖を使いこなせるはず。そう私は思っているの!それで凛ちゃんは今何処に?」
「宿屋にいます。あの日から一歩も外に出てないのです。」
「大体の話しは直人様から聞いたわ。さすがにすぐには立ち直れないでしょうね。」
「エリー様、私からもお願いします。凛様を助けてください。」
「もちろんそのつもりよ。任せなさい!さっ、凛ちゃんに会いに行くわよ!案内しなさい!」
こうして再びエリーと凛は思いもよらない形で再開するのであった。