再会その3
『さて、ここからどうしたものか。』
凛を逃しても不安はまだある。ここで自分が盗賊を食い止めなければならないのだが、敵の攻撃を受け過ぎていた。腹や足に弓矢による攻撃を受けているからだ。満足に身体も動かない。それでも盗賊たちの攻撃は激しさを増すばかり。
『ん!?敵が1人しかいないぞ!!まずはあいつをやれ!もう1人の奴はその後だ!』
剣や斧を持った盗賊たちが、アリスを肉眼でとらえ始めた。
近接戦闘になり、アリスは窮地に追い込まれる。MPの残量もけして多くはない。
それでも何とか持ちこたえている。すると後方から、
『お前たち!何をやっている!敵はたかが1人だぞ!周りを囲め!』
盗賊のリーダーだ。こいつは冒険者ランクAクラスの実力があることをアリスは知っている。元々は冒険者でAランクだけで結成されたパーティーに居て、実力はあるものの素行が悪くパーティーを追い出されてそこから盗賊になったのである。
どんどん悪化する状況。それでもアリスは諦めない。
『雑魚が何体来ようと私は負けない。負けてたまるか!!』
最後の力を振り絞り、必死に応戦する。だがここで盗賊のリーダーが前に出てきて、アリスと戦い始める。
『おらおら!さっきまでの威勢はどうした!?ああん!』
(クッ!攻撃が重い。何て馬鹿力だ・・・・・・・。)
盗賊のリーダーの武器は大剣!腕や足に怪我をしている今のアリスにとって踏ん張りがきかない分1撃1撃が重すぎたのだ。ついには耐え切れず吹き飛ばされてしまう。
『ぐはっ・・・・・。』
短刀も手放してしまい、もはやなす術なしのアリス。
『手こずらせやがってこのアマ!』
盗賊のリーダーがアリスの腹を思いっきり蹴った。
ボキッボキッボキッ。アリスのあばらの骨が何本か折れる。
『ゲホッゲホッゲホッ・・・はあ、はあ、はあ・・・・。』
もはやまともに息もできない。そんなアリスを盗賊のリーダーはアリスの髪の毛を掴み持ち上げて、腹に何発も拳を打ち込む。
『チッ!つまらねーな!これで終わりかお嬢さんよ!!』
アリスの顔面に拳を入れた後アリスを放り投げる。
(ダメだ・・・もう完全に身体が言うことをきかない。私はここで死ぬのか。ま、当然だな。自分の私欲のために皆を裏切ったのだから。これは自分への罰だ。素直に受けよう。)
『ごめんなさいエリー様。ごめんなさいエドワード。ごめんなさい直人様。ごめんなさい凛様・・・・ごめんねレイナ。最後にもう1度会いたかった。ダメなお姉ちゃんでごめんね。あなたは幸せになるのよ・・・・・・。』
『何をぶつぶつ言ってやがる!とっとと死ねボケカスが!』
『くっ・・・・・』
盗賊のリーダーは大剣を両手にもち上からアリスに向けて振り下ろすのだが
『坂柳流壱の剣、【風切り】』
アリスの後方から風属性の衝撃波が飛んでくる。その衝撃波は盗賊のリーダーの振り下ろしかけていた大剣にあたり体が大きく後ろにのけ反る。
『なっ!な、なんだ!?』
盗賊のリーダーのは一瞬何が起きたのか分からなかった。分かることと言えば、剣ごと体が後ろに吹き飛ばされて数歩後ろに下がってることぐらいだ。
手がしびれて握力がない。
『おい、てめー!何、アリスに好き勝手なことしてんだ!ボコボコじゃねーか!?ああん!俺は今切れてんだよ!返答次第じゃ容赦しねーぞ!』
意識を失いかけてたアリスが目の前に居る直人を見て驚く。
『直人・・様?どうしてここに。』
『ようアリス!どうした?ボコボコじゃねーか。お前ほどの強者がここまでやられるとはな。ま、凛を守りながらなおかつこの敵の人数じゃ、しょうがねーか。よく頑張ったな!そして、生きててくれてありがとう。死んでたら凛に何言われるか。』
涙が溢れるアリス。普通ならとっくに凛と合流出来て王都に向かっていると思ってたアリスだが、なぜここに直人が居てしかも凛を誘拐した張本人を助けているのか分からなかった。でも、嬉しくて涙が止まらないアリス。
『あとは俺に任せてゆっくり休め。』
『い、いけません直人様・・・早く逃げてください。殺されてしまいます。あの者はただ者じゃありません。戦った私が1番よくわかります。凛様を連れてはやく王都に・・』
『何寝ぼけてこと言ってるアリス!ボコられ過ぎて頭までイカれたか?女性をここまでボコボコニするイカれたサイコパス野郎に俺が負けるとでも?冗談はその胸だけにしろ!』
『な、な、な、何を言ってるんですか!!直人様!怒りますよ!』
『あはははははっ!わるいわるい!ま、見てろってアリス!侍の本当の実力を見せてやる』
『さっきからゴチャゴチャうるせーぞガキ!てめーも血祭りにあげてやる!いけーお前らあいつを叩きのめせ!』




