色彩の街、祈りの社にて
――風がやさしく吹いた。
街と呼ぶにはまだ小さな場所。けれど、かつての祈りの社は、今やたぬき村の仲間たち、そして旅の仲間が集う“色彩の街”へと変貌を遂げつつあった。
ぽんたが設計したお菓子の家は、甘い香りで通りすがる者を誘い、クロがこだわって作った静かな読書小屋は、まるで木々と会話するように本棚が並び、りとの選んだ香木と薬草の並ぶお香の店には、いつも静かな祈りが宿っていた。
悠真は、街の中心に一本の色の樹を描いた。七色の葉を揺らすその木は、色を失った世界にわずかな希望を灯す象徴となっていた。
「……ずいぶん、整ってきたわねぇ」
こっくりさんが、ぽんたの店先でふわりとあくびをしながら言った。
「これなら、あんた達……次に進めるんじゃない?」
ぽんたとクロが顔を見合わせる。悠真はその言葉に、懐から一枚の紙を取り出した。それは、りとが見つけてきた古代の写本の一部。風の力で運ばれてきた不思議な欠片には、こう書かれていた。
「七つの記憶を辿りし者よ。
色を繋ぐは、巫女の想い。
回廊に眠る記憶を集めよ。
さすれば、色の根源へ至らん。」
「色彩の巫女……そして“七つの記憶”……」
悠真の言葉に、クロが呟く。
「でも、そんなのどこに……」
そのとき、ぽんたが小さな手で、社の奥の壁を指さした。
「なぁ……この紋様、前はなかったやろ?」
そこには、浮かび上がるように刻まれた模様。色彩の巫女と、七つの花弁の印。そして、黒く歪んだ何かの影。
「……迷いの者、そしてその奥にいる“災厄の本体”。これも関係しているわね」
こっくりさんが呟く。
色を失ったこの世界を救うための、新たな旅が始まろうとしていた。




