紫煙の先にいるもの3
――師匠との出会いは、偶然だったのかもしれない。
けれど、あの時の自分には、まるで導かれるようにしか思えなかった。
すべてに嫌気がさしていた。
未来も、過去も、自分自身さえも――何ひとつ信用できなかった。
何かを求めていたわけじゃない。ただ、どこか遠くへ行きたかった。
そうして気づけば、足は“そこ”に向かっていた。
町外れの小さな神社。
木々に隠れるようにして建てられた、歪んだ形の赤い鳥居。
誰が呼んだか――通称「迷い鳥居」。
まるで自分を映すようなその名前に、不思議と足が止まった。
鳥居をくぐったその奥、小さな祠の前に、ぽつんと机が置かれていた。
そこにいたのが、あの人だった。
「おや、また迷ってきたの?」
初対面のはずなのに、まるで何度も会っているような言い方で。
その声は不思議と暖かく、そして少しだけ意地悪だった。
「ここは“見えないもの”を見たい人が来る場所さ。……まあ、大抵は怖くなって逃げ帰るけどね」
にやりと笑って差し出されたのは、一枚のカード。
「さあ、お前さんは――何を知りたい?」
震える指先で引き抜いた一枚のカード。
そこに描かれていたのは――「死神」。
(……なんで、よりにもよって……)
よりによってこれか。
何もかも上手くいかないこの日を象徴するかのように、悠真は心の底から落ち込んだ。
「……俺って、ほんとついてないな……」
その呟きに、目の前の人物がピクリと反応した。
「――ぶはっ」
次の瞬間、師匠は腹を抱えて笑い出した。
「はっはっは! あ〜〜〜! こりゃあ傑作! まじでアンタ、死神引くとか……最高すぎ!」
涙を流し、ヒィヒィと肩を揺らして笑い転げるその姿に、悠真は目を見開いた。
(……なんなんだ、この人)
まるで悪意の塊みたいな笑い声に、腹立ちと困惑と、そして妙な虚しさが胸を締めつける。
(占いにすら……見限られたみたいだ)
うっすらと目眩がした。
けれど、笑いながらも、師匠はちゃんと悠真の顔を見ていた。
「ったく……お前さん、占いの“見方”も知らんのか」
師匠の声が、ふいに真顔に戻る。
「死神ってのはな、“終わり”と“始まり”のカードだ。古い何かを終わらせ、新しい何かが始まる兆し。それを“ついてない”で済ませるようじゃ、占いなんて向いてないぜ?」
紫煙の向こうで、師匠の瞳だけが不思議と澄んで見えた。




