1話:司郎という男
「……」
(……ああ、そうか……お前たちが殺したんだな)
拳に力が入る。
この感情は、怒りなのか……
昨日であったばかりで、長い間話したわけではないのに……
なぜこんなにも腹が立ってしまうのか……
(そうか……これがあなたが感じていた……)
どれだけ考えていたのかは分からない。
「くくくっ」
あのおじいさんを殺した男たちが、ニヤニヤしながらこちらを見ている。
「そうか……今度は私を殺すんだね……」
そう呟く。
すると突然━━━━━━━━━━━━━
「だーれがお前を殺すって??」
聞いたことのある声が後ろからした。
振り向くと、眼帯した少年……司郎が後ろにいた。
「なんで、ここに?」
そう尋ねると
「ああ、ただの死体回収……そんままそこにあると臭いし、邪魔だろ?だから回収しに来た。それが俺の仕事だからな」
と答えた。
「……そういえば、気になったんだけど……なんで司郎は名前があるの?ナンバーで呼ばれないの?」
「今日は質問が多いな……」
司郎の目が急に冷たくなる。
(してはいけない質問だったのだろうか?)
「だって、私はここに来てそんなに日がたってないし、ここには誰も頼れる人がいないから……だから、一番最初に会ったあなたに聞いてはいけない??」
「……まどろっこしい聞き方すんな。気になったからだけでいいだろ……」
「え、それだけ?」
(なぜこの男はこんなにも私のことを……いややめよう)
「……んで、質問の答えはな……」
少し恥ずかしそうにしながら頭をかき、
「俺がこの世界の管理人の1人だからだ。」
「え?1人?1人ってことはほかにもいるってこと?」
「ああ、合わせて7人……いや6人いる。そいつらは全員この塔の各階にいるぞ。」
「え、ちょっと待って?ここって塔なの???」
「ああ、そうだ。ちなみにな、この塔の1番上まで行ったら、管理人の1人と戦う権利が得られるんだよ。管理人に勝てたら、自由の身になれるけど、まあお前はそもそもこの地下から出ること自体無理だろうな(笑)」
バカにしたように話す司郎にイラッとする。
「……そんなのやってみなきゃ分からないでしょ……どうやったら上に登れる??」