③二人の関係
学校の四時限目。美術の時間。午後のまったりとぬるい空気が美術室に満ちていた。なかなか集中出来ないので、デッサンしながら全く別のことを考えていた。
パンッ!
聞き慣れたその両手を叩く音に苦笑いしつつ、周囲を見渡すと教室には、僕以外の生徒が消えており、美術教師もいなくなっていた。
「神様……。イタズラやめれ」
目の前の机には、先ほどまで置かれていた彫刻の代わりに神様がちょこんと細い足を組んで座っていた。
「私をデッサンしてよ~~。あっ、でも……裸は恥ずかしいから服着てて良いよね?」
「あぁ……。うん……。最初に言っておくけど、描くの超下手くそだから」
しばらくして、必死に描いた絵を神様に見せた。何度も何度も修正したから、手が真っ黒。
「…………本当に下手くそじゃん。謙遜かと思ってた」
「わ、悪かったな!! 早く返せ。恥ずかしいから」
なぜか、神様はその下手くそな絵を二度と返してくれなかった。いつまでも僕の絵を見ながら満足そうに、うんうんと頷いていた。
放課後。神様を家に呼び、前から気になっていたことを聞いてみた。
「あのさ………。僕の親のことなんだけど……。どこに行ったの? もう何週間……いや、もっと…………長く見てない。おかしいだろ、覚えていないなんて。どうせ、神様が関わってるんでしょ?」
「それを知ったら…あなたは……」
今まで見たことのない寂しい顔で、僕を見つめる神様。そのキレイな両目からは、今にも涙が溢れそうだった。
卑怯。
そんな顔されたらさ………。もう、何も言えないよ。
「神様が言いたくなったら、教えてよ。ふぅ~~……あ~~~! 久しぶりに二人でゲームする? 菓子とか買ってさ、朝までやろうぜ」
「ハクシ………。私を許して」
聞こえない振り。
「聞こえない振りしないで」
「……とりあえず、キスしても良い?」
「ハクシってさ、たまにスゴい爆弾発言するよね。人間の分際で神に欲情するなんて、ほんと良い度胸してる。まぁ、でも……いいよ。ハクシは特別だから……」
彼女を失いたくなかった。親の話を聞くことで今の二人の関係が無になってしまうなら、知らなくても良い。
とりあえず、今はーーーー。




