⑭サヨナラ
「ふぁ~……ん~! 良く寝たぁ」
「大丈夫?」
ナタリに膝枕されていた。マシュマロ的な太股。今までに感じたことのない柔らかさと良い匂いが、首から脳へと伝播する。この状況に軽く眩暈がした。
「う~ん。ふぁ~~~」
「そのイケない手を股の間からどけないとひっぱたくよ?」
「………………」
「今は、ダメ。我慢して。安静にしてないとね」
まだ夢の続きを見ているのか。
それともーーーーー。
急に眠くなり、目を開けていられなくなった。
ナタリが、両手を叩く。
「次に目が覚めたら、すべて終わっているから。ハクシのこと、大好き。………本当に好き。だからね、サヨナラしなくちゃいけないの。もう……アナタが傷つく姿を見たくないから。苦しめたくないの………」
両目から、涙を流すナタリ。
この小さな手だけは絶対に離しちゃいけない。だけど力が抜け、何も考えられなくなった。
『今まで、ごめんね』
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天国に戻って、ちょうど三ヶ月が経った。死神の仕事は相変わらず忙しくて、でもその忙しさのお陰で余計なことを考えずに済んだ。
「ねぇ、ナタリ。アナタが戻ってくれて本当に嬉しいわ。………下界に追放なんかしてごめんね。命令違反したアナタが、許せなかったの」
「いえ、謝らないで下さい。全部、私が悪いので」
「うんうん。まぁ、そうね。あっ! あの人間も結構イジメちゃったからさ、彼には特別に彼女をプレゼントしたから。人間の中で一番彼と相性の良い女をね」
「…………ありがとうございます」
「約束通り、もう二度と彼には手出ししないから大丈夫よ。それにさぁ、アナタにはあんな人間よりもっと素敵で優秀な者を私が選んであげるって。だから、寂しくないよ。心配しないで」
お姉ちゃんの汚れのない白い手で優しく頭を撫でられた。
でもーーーー。
彼とは、違う。
全然………違う…よ。ポロポロと目から何かがこぼれた。




