⑪日常
立ち入り禁止になっている学校の屋上。普段は不良達のたまり場になっているが、今の季節は寒くて誰も来ない。
フェンスに寄りかかり、灰色の世界をぼんやりと見ていた。
「黄昏過ぎじゃない?」
「ここから見る景色が好きなんだ」
「私も好き。はぁ~~。今日は、バイト休みだから自由だぁあーーー。シャーーーー!!」
背伸びして、拳を天高く突き上げる少女。足が、プルプル震えていた。
「………いやいや、バイト中も好き勝手やってるじゃん。ところで……あ、あのさぁ。えっ……と、ん~~んん~~。そろそろ一緒に住まない? ナタリもアパートの家賃払うの大変だろ。僕、一人だからさ………。空いた部屋使えばいいし」
「…………エッチぃことしない?」
「それは、約束出来ない。ごめん。ただ、今よりももっとナタリと一緒にいたい。それだけなんだ。いつも僕のそばにいてほしい」
「うん……。分かった。あっ! 頭にゴミがついてるよ。取ってあげるね」
ゴミを取ったついでに、神様は母親のような優しさで、僕の頭を撫でてくれた。誰にも見られたくない姿。
「今だけは私のこと、ママって呼んでもいいよ? 帰ったら、いっぱいいっぱい膝枕して甘えさせてあげるね」
「やめ…ろ、それ……」
「ハクシは、こういうの好きだと思ったんだけどなぁ?」
意地悪く笑う。
「…………」
カリっ!
「そんなとこ……噛んじゃ…ダ…メ」
甘噛し、照れ隠し。こういう行動が、いかにもガキっぽい。
夕陽よりも頬を染め。新たな癖が発動しそうな自分を必死に抑え込んでいた。
今のナタリとの生活が、僕の全てだった。
今までは、小説を書いては捨て、書いては捨てを繰り返してきたが、最近は書いた物を捨てずにとっておくようになった。小説は、自分を写す鏡だと思い始めていた。どんなに駄作でもそれが『僕』自身。まぁ……いつかは、過去の自分が何かのヒント、きっかけを与えてくれるかもしれないし。
ナタリは、そんな不完全で未熟な過去の作品群を楽しそうに読んでいた。
寝る前の静かな時間。
「天国って、どんな所? みんな、笑ってるイメージだけど」
「こことあまり変わらないよ。神様を頂点にしたピラミッド構造なだけ。普通」
「ふ~ん」
「でもハクシは、地獄行きだから全く関係ないけどね」
「あぁ…………うん。よく、そんな笑顔で言えるな」
「??」




