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彩の異世界転生  作者: 巴空王
9/44

  9 旅立ち

キラグンガ城から暗殺隊が旅立った翌日、

ピコル達は洞窟を出発した。

西に旅立つ前に、まづ、アバ家の城下町で、

旅支度を充実させる必要があった。

ピコル達は服と金、背負子しか持っていない。

旅をするには装備が足りなかった。

それに、お金を持っているが、

使った経験が一度もなかった。

ここで経験しておきたかった。


最初に、ピコル達は靴屋を探した。

この世界では、子供や貧しい大人など、

靴を履かない者が多い。

しかし、旅となれば靴は必要となる。

靴はこの時代、(ほとん)どがオーダーメイドであった。

出来合いの靴は少ない。しかし無いわけでも無かった。

新しい靴を作る場合、古い靴を売るものがいる。

古い靴は修理され、出来合いの靴として売られる。

ピコル達は靴屋に入った。


ピコル「出来合いの靴を見せてください」

店主「どちらの」

ピコル「両方、先にパピのを」


店主はパピを椅子に座らせ、足の土をハタキで払う。

足のサイズと形で、出来合いのブーツを4足持ってきた。

ピコル「パピ、気に入ったのはある?」

パピ「こいつが良いが、くるぶしの辺が緩い」

店主「ここが緩いな。調節する」


そういって、1分も掛らず、皮を縫い縮めてくれた。


パピ「良い感じ。これにする」

ピコル「値段は?」

店主「金貨1枚と銀貨3枚だ」


ピコル「私のも見せて」

店主「出来合いに女物がない」

ピコル「男物でかまわない」


店主はもう1つ椅子を用意し、

ピコルを座らせ、足の土をハタキで払う。


店主「小さいな。子供用でちょうどいいのがある。

選んでくれ」


ピコルは武骨で頑丈そうなブーツを選んだ。

履いてみると、本当にぴったりだった。


ピコル「これが良い。ピッタリ」

店主「これは荷引き用の靴だ。本当にいいのかい?」

ピコル「かまわない。これが良い」

店主「まあ、そういうなら、良いか。

銀貨9枚だ」

ピコル「パピのと、これ両方買う。マケてくれる?」

店主「金貨2枚でどうだ」

ピコル「ありがとう。買う」


ピコル達の、初めての買い物は上手く出来た。

あと、必要な物を調達する。

雑貨屋では水筒、旅の食器、ナイフ、砥石、

火打ち、地図、サポの実などを買った。

薬屋で塩を、パン屋で硬パンを買った。

これで旅支度は完了した。


旅支度を終えるころには、時刻は、お昼になっていた。

ピコルとパピは広場の噴水の横に座り、

携帯食で軽い食事をした。

その後、地図を広げ、

どのルートで西を目指すか話し合う。


まづ、西であるが、港町ルフを目指すことになった。

領都から港町ルフまでは70kmほど。

領都から港町ルフまでは街道が通っている。

途中、村が3つある。

村では食料調達も可能で、都合が良いルートであった。

今日は天気が良い。

絶好の旅の出発日和であった。


ピコルは気分が良かった。

自然と鼻歌が出た。彩の知らない曲であった。

戦闘ペットなる前から、ピコルが覚えていた曲。

ピコルは2小節しか覚えていない。

それを繰り返し、歌った。

この曲はパピのお気に入りで、ピコルがこの歌を歌うと、

パピは機嫌が良くなる。


10分ほど南に道を進むと、視界が開けた。

アバ家の城下町は高台にあり、

南側には、見渡す限りの平地が開けていた。

高台の淵から平地までは、なだらかな坂が、

2kmほど続いているのが見える。

坂を下りきった所で、

道は東西を結ぶ街道とぶつかっている。


ピコル達は坂道を下って行った。

坂を下りきり、あと少しで街道という所で、

ピコルは川のせせらぎの音を聞く。


探していた川だ! 水浴びができる!


ピコル「パピ。川がある。行こう」

ピコルはパピの手を引き、音のする方向に、

(やぶ)を避けて進む。

パピは、何のことか分からなかったが、

ピコルに付いていく。


川はすぐ見つかった。流れが、岩でせき止められ、

水浴びにちょうどいい深い所があった。


ピコルは背負子を下ろし、

革袋からサポの実を取り出した。


ピコルは着ている服を脱ぎながら、パピに話す。


ピコル「パピ、水浴びするよ。服脱いで」

パピ「え~、俺も」

ピコル「パピも。私が洗ってあげる。

マロ、荷物、盗られないように見張ってて」

マロ「了解です」


マロは上空の端末で、川の周りを見渡した。

ガウイ、人間共見当たらなかった。


パピは観念したようで、服を脱ぎ始めた。

ピコルは水辺の草をムシる。

その草を丸め、サポの実で揉むと泡立ってきた。

パピはもたもたし、なかなか服を脱ぎ終わらない。


ピコルは自分の体を草で洗いながら、パピを急かす。

パピもようやく服を脱ぎ終えた。

ピコルは自分の体を洗うのを中断し、パピの体を洗う。

腕、足、背中、頭、髪、胸、お腹、股間、お尻の順で

丁寧に洗う。

パピはピコルの為すがままであった。

ピコルはパピの体を洗い終え、自分の体を洗う。

ピコルから開放されたパピは川に潜り、

魚を捕まえるのことに夢中になっている。


ピコルは水浴びを終え、

日の当たる岩の上で体を乾かしていた。

パピは4匹の魚を捕まえ、内臓を抜き、草で(くく)っている。


ピコル「パピ、体乾かして。ここで」


ピコルはパピを隣に呼び寄せ、2人で日を浴びた。

暖かく心地よかった。

小一時間ほど、日を浴びた。体は完全に乾いた。

さあ、旅を続けよう。

服装を整え、街道に戻ろうとすると。


パピ「ピコル。こっち」


パピは街道に戻らず、勝手に、

川の下流の方向に下っていく。


ピコル「道に戻らないと」

パピ「大丈夫、近道」


パピは行ってしまった。

ピコルは仕方なしに、パピの後を追った。

100mほど、川筋を下った所で木橋とぶつかった。

どうやら東西に延びる街道に出たようだ。


パピ「やった。近道成功」


パピは自分の思惑が当たり、大喜びしている。

ピコルも自然と笑顔になった。

しかし、場所を確かめなければ。

ピコルは地図を取り出し、臨時の作戦会議を始めた。


ピコル「今、ここにいる。東西の街道のここ。

西に行きたいから、橋を右に進む。

今日は1つ目の村の手前のここら辺まで進もう。

そこで野宿する。

問題ある?」


異議はなかった。

ピコル一行は街道を西に歩き出す。今は午後3時ごろ。

日暮れまで後、3時間歩ける。

ピコルは水浴びしてすっきりしたせいか、体が軽かった。

(しばら)く歩いていると、突然、マロが声を上げる。


マロ「ピコル、パピ止まって。

声を出さないで。

100m前方に怪しい人間の男が3人いる。

街道を見張ってる。

たぶん、強盗かなんか。

ピコル。考えるだけで話せるから。意見聞かせて」

ピコル「聞こえる?」

マロ「聞こえる。ピコル上手。パピは?」

パピ「これでいいのか?」

マロ「聞こえる。パピも上手」

ピコル「街道を避けて進めば、3人組に会わずに進める。

そうしよう」


皆、異論は無かった。

ピコル達は街道を()れ、森を進んだ。

3人組がいる所を迂回(うかい)した。

街道を進むうち、日が西に傾き、暮れようとしていた。

ピコル達は街道から80mほど森に入り、

森の中の空き地で、野営することにした。

今日の夕食は、パピが川で捕まえた魚を、焼いて食べた。

魚は空腹だけでなく、舌も満足させた。

ピコルは焚火を見ながら、パピに抱かれ、幸せだった。

こんな幸せがあるんだ。

彩の時には、思い浮かべることすらなかった幸福感。

それを味わいながら、眠りに落ちていく。


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