8 暗殺指令
ここはキラグンガ城、ガウイ王国の王都である。
ガウイ王国は大小98の小国を支配する。
アバ家も、98の小国の1つである。
ガウイ王国が支配する面積は1400万平方キロ。
支配する奴隷住民は2千万人。
この奴隷住民を10万体のガウイ族が支配する。
ガウイ王国は、中央大陸では並ぶもののない、
超大国である。
ガウイ族は寄生種族である。力により、
人間種を支配している。
ガウイ族は哺乳類ではない。
もし、欧米人がガウイ族の顔を見たら、
サタンを連想するであろう。
日本人なら鬼を連想する。
ガウイ族は戦闘力が高く、
最も戦闘力のない白ガウイでも、
1体を倒すとすれば、最低でも人間の兵士200人、
圧倒するなら500人が必要となる。
ハビアロンの人間種は、最初から戦うことを諦めていた。
ガウイ族には4種の種別がある。
黒ガウイ。体長4.5m。体重1000Kg程度。
体色が深い黒色。
千体に1体ほどしか生まれない。
知能、戦闘力共にガウイの中で最高。
生殖の中心である。
赤ガウイ。体長4m。体重800kg程度。
体色が赤黒色。
百体に1体ほどしか生まれない。
知能、戦闘力共に高い。
生殖の参加する。
青ガウイ。体長4m。体重800kg程度。
体色が青黒色。
百体に1体ほどしか生まれない。
知能、戦闘力共に高い。
生殖の参加する。
白ガウイ。最も個体数が多い。
体長3.5m。体重600kg程度。
体色が薄い黒色。
知能、戦闘力は黒、赤や青より劣る。
生殖の参加しない。
キラグンガ城の執政の間、
国王であるゾラン二世が中央、上段の王座に座り、
執政官達から報告を受けていた。
下座に座る宰相に、連絡官が何やら耳打ちしている。
宰相は頭を下げながら、ゾラン二世に近づき、
耳打ちをする。
宰相は小声で「陛下、神聖球が光りました」
ゾラン二世も小声で「であるか。 準備せよ」
宰相は大声で告げる。
宰相「執政官、陛下は急用で退席される。
執務は明日の午前9時から再開する。
予定は変更、万事滞りなく手配せよ」
宰相が話終わると同時に、ゾラン二世は退出する。
執政官達は手を床に着け、頭を下げて、退出を見送った。
ソラン二世は神聖球の間に入った。
神聖球の間には、王1人しか入ることが許されていない。
ガウイ族にとって神聖な場所で、厳重に守られていた。
ソラン二世は神聖球の間に入り、精神を整える。
そして光る神聖球に手を触れる。
ソラン二世に情報がなだれ込む。
そして神聖球は光を失う。
ゾラン二世は神聖球のお告げを聞いた。
この神聖球のお告げの仕組みは、
サウスがガウイ族を操作すため、用意したものである。
サウスはこうしてガウイ族を操ってきた。
ソラン二世が受け取ったお告げは、以下の内容であった。
アバ家の戦闘ペット2匹が逃げだした。
この戦闘ペットはガウイ族にとって危険な存在になる。
殺せ。
場所はアバ家領内、アバ城の北北西4kmの洞窟。
洞窟の地図イメージ:1点
戦闘ペットの容姿のイメージ:2点
ゾラン2世は絵師を呼び、地図と戦闘ペットの容姿の
絵を描かせた。
地図は、イメージと寸分違わぬ絵が、完成した。
しかし、戦闘ペットの容姿の絵は、
神聖球のイメージとかけ離れた絵となった。
考えてもらいたい。
もし、あなたが、
特徴のあるゴキブリのイメージを得たとする。
それをイラストレーターに伝え、
寸分たがわぬ絵を描かせられるか。
客観的に見た場合、絵師の描いた戦闘ペットの容姿は
辛うじて人間の男、女と判別できるレベルであった。
ガウイ族の常識でも、
一度入れた入れ墨は消すことができない。
この思い込みによる錯誤で、戦闘ペットの容姿の絵には
イメージに無い頬の奴隷紋と、
胸の戦闘ペット紋が書き加えられた。
手配の似顔絵は、全く別物に成ってしまった。
ゾラン二世は、まづ、警察長官を呼び出した。
アバ家の戦闘ペット2匹を、指名手配するよう命じた。
絵師が描いた絵を渡し、指名手配書を作らせた。
指名手配書は、ガウイ王国全土の代官所に配布させた。
手配書には、生死を問わぬ捕縛命令が記載される。
次に、ゾラン二世は暗殺長官を呼び出した。
暗殺長官は年老いた黒ガウイであった。
ガウイ族は一見では、年齢を判断しにくい。
唯一判断できるのが、複眼を保護する駿膜である。
駿膜は年齢が若いうちは透明だが、年齢と共に黒くなる。
暗殺長官の駿膜は、黒く不透明であった。
ゾラン二世「この2匹の戦闘ペットを殺せ。
そして、死体を持ち帰れ」
ゾラン二世は、警察長官が作った
手配書と地図の絵を渡す。
ゾラン二世「戦闘ペットは地図に示した洞穴に潜む」
暗殺長官「陛下、承りました。
暗殺隊を派遣致します。
暗殺実行に当り、陛下にお願いがございます」
ゾラン二世「申せ」
暗殺長官「暗殺は諸国の所領で行います。
陛下の勅使命令状があれば、暗殺隊も動きやすいかと」
ゾラン二世「事務官、勅使命令状を用意せよ。
予が署名したものを、暗殺長官に渡せ。
暗殺長官、これで良いか」
暗殺長官「はは、本日中に暗殺隊を出発させます。
手配がございます故、これで御免いたしたく」
ゾラン二世「下がれ、朗報を期待する」
暗殺長官は考える。
これは簡単な暗殺だ。暗殺と言っても表立って、
殺してかまわない。
殺しを事故に偽装する必要もない。
暗殺長官にとって、暗殺は殺しの芸術なのだ。
暗殺長官は配下に、
芸術的な暗殺を行うプロを抱えていた。
今回は子供の仕事だった。
このような簡単な仕事を芸術家に任せると、
時として失敗する。
暗殺長官は経験則で、このことを良く理解していた。
暗殺長官「誰にしようか。難しいな」
最初に浮かんだのが、
経験豊かな暗殺者と新人の組み合わせであった。
ギルは黒ガウイ。年齢は俺より少し上か。
ギルはもう引退が近い。思慮はある。経験も豊富だ。
若い奴を上手く教育してくれるだろう。
もう一人は新人。
マントマは青ガウイ。年齢も若い。
前回の暗殺では、隊長の命令を実行できず失敗した。
力はあるが、思慮が浅い。
まだ複雑で芸術的な行動は難しい。
ここで、ギルに鍛えてもらおう。
暗殺長官は自室に戻り、
2名の暗殺者に対する命令書を作成した。
今は午後3時、命令書には以下を記載した。
午後11に暗殺長官室に集合。
暗殺長官より直接、暗殺命令を下す。
その場から出発できる旅支度の上、集合せよ。
午後11時、暗殺長官室
ギルとマントマが暗殺長官の前に立っていた。
暗殺長官「集合、ご苦労。
今回は、ギルとマントマで暗殺隊を組む。
ギルが隊長だ。
暗殺対象は戦闘ペット2匹。
この手配書に記載された奴だ。
なお、この暗殺は陛下の意思である。
失敗は許されない。
領主が暗殺隊の命令を聞かぬ場合、
勅使命令状を見せよ」
暗殺長官はギルに、指名手配書と勅使命令状を渡す。
暗殺長官「戦闘ペットが潜む洞窟の地図だ」
暗殺長官はギルに地図を渡す。
暗殺長官「ここからアバ領の城までは600km。
2日で移動せよ。
洞穴を急襲、戦闘ペットを仕留めよ。
もし、戦闘ペットがいなかった場合、
独自に判断、行動せよ。
本作戦は、戦闘ペットを殺すまで完了しない。
永久にだ。覚悟せよ。
何か聞くことはないか?」
ギル「ありません。拝命しました」
暗殺長官「直接、目的地に向かえ。
朗報を期待する。掛かれ! 」