42 カジノランド
ピコル「ところで、いつなの。アイランが景品として出されている日?」
ミラン「今から1カ月半後、10月16日」
ピコル「カジノは何処にあるの?」
ミラン「この港町を出て南に行くと島がある。
ポプカ島という。カジノはその島にある。ポプカ島はカジノランドと呼ばれている」
ピコル「アイランはポプカ島にいるのかな?」
ミラン「たぶん。ポプカ島には奴隷市場があり、奴隷商の店が沢山あると聞く」
パピがミランからアイランを奪還する計画を聞いたが、
ずさん過ぎてとても成功するとは思えないものだった。
パピはミランが話すのをさえぎった。
パピ「もういい。ミラン。お前の計画はダメだ。失敗する」
ミラン「そうか。でも、これしか思い浮かばなくて」
ピコル「私たちがアイランを助けてあげる。
任せて欲しいの。ミランは待って」
ミランの計画ではアイランを強奪できそうにないことはピコルでも分かった。
こういう荒事にミランは向いていない。
参加させると、足手まといになる。
だから待機してもらおう。
我々がアイランを助ければ、
ミランを助ける事になるはずだ。
ミラン「僕も参加する」
パピ「お前、弱いし、鈍い。邪魔」
ミラン「…」
パピの言うことは事実だが、言い方がある。
ピコル「救出した後は、アイランをしっかり守ってあげて。
それができるのはミラン、貴方だけ」
ミラン「ああ、分かった。お願いする」
カジノに詳しい者を、紹介してもらうため、
ピコルは、情報屋のロイドを呼び出した。
ロイドに頼むと、直ぐに、最適な人物を連れてきた。
ロイド「ピコル、パピ。この方がカジノランド案内人のグバロ。
グバロはカジノランドの元フロアマスターでね。
フロアマスターは使用人頭さ」
グバロ「カジノランドで40年働きました。
カジノに多少の知識を、持ち合わせております」
ピコルはカジノのパンフレットを示す。
ピコル「この日の景品の美女を手に入れたい。
どうすれば手に入るか。
手に入れるには何が必要か。
私達に、教えて、そして指導して。
これが、依頼事項」
グバロはピコルから渡されたパンフレットを読みだした。
そして暫く考えていた。
グバロ「カジノで金を稼ぐのではなく、景品が欲しいのですね」
ピコル「そう」
グバロ「分かりました。依頼をお受けします。
料金は実費と成功報酬で金貨100枚。
いかがでしょうか」
ピコル「OK。依頼する。
早速だけど、どうしたら手に入る?」
グバロ「景品は、その日1番の大勝負に勝った者に与えられます。
まづ、カジノで勝たなければなりません。
カジノで、勝つのに必要なものは4つです。
1つは運。
1つは元手。
1つは的確な判断力。
1つは多少の事に動じない胆力です。
しかし、あなた方は実に、運がいい。
前日の景品は、ガンジャの歌姫です。
ガンジャの歌姫を手に入れる勝負は、金貨10万枚を超えます。
大勝負が行われた翌日は、勝負が低調になりやすい。
金貨1万枚程で、景品を手に入れられるでしょう。
金貨1万枚の勝負に出るとすると、
元手は金貨5千枚は用意する必要があります。
的確な判断力と胆力については、
お二人とも並外れていらしゃる。
問題ありません」
ピコル「金貨5千枚か。どうしよう」
パピ「ロイド、この町で、
金をイッパイ持ってる、悪い奴いるか?」
ロイド「え! 金をイッパイで、悪い奴ですか。
悪い奴はイッパイいますが、急には出てきません。
待ってください。先日、知り合いの商会が、
取り込み詐欺に合いました。
取り込み詐欺をやった連中は間違いなく、悪漢です。
金も、イッパイ持ってるはずです。
ですが、何処にいるか分かりませんが、いいんですか」
パピ「うーん、大丈夫。詳しく」
パピはその日から毎日、ピコルが寝入ると、
ベッドを抜け出し、何処かへ行く。
マロまでがパピに同行して行く。
パピに何処に行くか、何をしているか聞くと、
『内緒』と言って、教えてくれない。
マロに聞くとマロも「パピに聞いてください」と言って教えてくれない。
パピは朝方には、帰ってきて、寝ているピコルの隣に滑り込む。
日中はあくびをしている。
それが1週間続いた。
1週間後、パピは荷馬車を宿まで引っ張て来た。
パピ「金貨1万枚、集めた。ピコル使って」
パピはカジノランドで使う金貨を集めていた。
金貨は荷馬車に積んであるという。
荷馬車には、樽が5個、ツボが3つ、積んであり、
ピコルが確かめると、中身は金貨だった。
ピコル「金貨1万枚って、こんなになるんだ」
パピ「そう。重い」
今日は、グバロと打ち合わせの日であった。
ピコル達は、荷馬車で、グバロの家まで行った。
ピコル「金貨をどのようにして、カジノに運ぶのか教えて」
グバロ「方法ですか?」
ピコル「金貨は重いでしょ。5千枚でも30kgぐらいある」
グバロ「実物の金貨は、小口の支払いだけです。
枚数が多くなれば、実物ではなく、為替を使用します」
ピコル「実物の金貨しかない場合は?」
グバロ「両替商で、金貨から為替にします」
ピコル達に無い知識であった。
この知識はこれからも役立つ。
ピコル達は、荷馬車の金貨を為替にするため、さっそく、両替商に赴いた。
グバロも同行して、両替の方法を教えてくれた。
両替商では金貨から為替、為替から金貨、為替から為替への、
両替を有料で行っていた。
ピコル達は、金貨1万枚を『金貨百枚為替』100枚に両替した。
パピ「これなら、革袋に収まる。軽くなった」
グバロ「パピさん。両替には、百分の1の手数料が掛かります。
手数料はバカになりません。
両替は、最小限にとどめてください」
パピ「そうか、分かった」
グバロ「ちょうどいい。
お二人のカジノ衣装を作りましょう。
衣装の仕立て屋は、直ぐ近くです」
景品の勝負を行うカジノのビップルームには、
ドレスコードがあるという。
それなりの服装でないと、勝負に参加できない。
準正装の衣装が必要であった。
しかし、衣装を選ぶ段になり、問題が発生した。
ピコル「やだ。こんな衣装。パンツが良い」
グバロ「カジノでは、女性はロングドレスと決まっています」
ピコル「やだ。ドレスはや!」
グバロは、薄いヒラヒラのドレスをピコルに、着ろと言う。
女々しい服装に、彩の価値観が拒絶反応を起こした。
ピコルはすっかり、しょげ返って、泣きそうだった。
そんなピコルを見かねた店員が、グバロを呼び、
2人で、何か話をしていた。
暫くすると、店員が来て。
店員「ピコル様、ピコル様用のスーツを作ります。
ただ、デザインや色は、店にお任せください。
男装の麗人用の逸品です。
必ずや、気に入って頂ける物を作ります」
ピコル「パンツなら、お任せします」
駄々をこねたピコルであったが、
パンツであれば、受け入れるつもりだった。
店員の提案を了承した。
衣装代はパピとピコル合わせて、金貨200枚。
パピが支払ってくれた。
つい、ひと月前まで、金銭管理はピコルの仕事であったが、
いつの間にか、パピの仕事となっていた。




