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彩の異世界転生  作者: 巴空王
41/44

 41 アイラン

マリオはどうやって、ミランの心を開いたのだろうか。

マリオのお陰でミランと話すきっかけができた。

ピコル達はミランが心を閉ざさぬよう、慎重に会話を進めた。

ピコルがミランの困りごとについて聞こうとした時、パピが心話虫で話しかけてきた。


パピ「ピコル、ストップ! 」

ピコル「何? 」

パピ「これ以上、ミランに聞くなって。 マリオが言ってる」

ピコル「分かった。でもどうしよう? 」

パピ「今はダメ、でも今夜なら大丈夫みたい。

だから、後はマリオと俺に任せて」

ピコル「じゃあ、そうする。後はお願いね」


パピとマリオは今夜の大道芸の公演にミランを招待した。

ミランは招待を辞退した。

しかし、パピもマリオも諦めなかった。

ミランが何回断ろうと、公演への招待を繰り返す。

パピとマリオの善意むき出しの圧力は強力であった。

ミランの心のバリアを取り除いていく。

最後にはミランは大道芸の公演への招待に応じてくれた。


ミランは約束通り、北第2広場に来てくれた。

マリオは張り切っていた。新しい友達が出来た。

その友達が会いに来てくれた。

マリオは嬉しくて仕方なかった。

そのマリオの喜びは観客に伝染する。

マリオ一座の公演は何時にもまして盛り上がった。

パピも本気を出した。ここの観客は、まだパピの本気の曲芸を見ていない。

始めてみるパピの本気に、トリでもないのに、アンコールが掛ったほどだ。


ミラン「招待してくれてありがとう。

素晴らしかった。

マリオ。君はホントに犬なのか?

それに、パピの曲芸には驚かされた。

こんなに楽しめたのは久しぶりだ」

マリオ「ワン」

パピ「ははは、もっと凄いのもあるぞ。今度見せてやる」


ピコル達はミランを食事に招待した。

ミランは快く食事の招待を受けてくれた。

マリオも一緒に楽しめるよう、野外席のある店で食事をした。


ピコル「ミラン、今から大事な話がしたいんだけど」

ミラン「ああ、良いよ」

ピコル「貴方、何か困りごとを抱えているわよね。

ある方にあなたを助けるよう依頼され、私達はこの町に来ました。

何に困っているか、話して欲しいの」

ミラン「ここしばらく、少し落ち込んでいたけど、僕は困っていない。

君たちと友達になれたことで、元気が出てきた。

だから、大丈夫だよ」

ピコル「ミラン。あなたを助けるよう私達に依頼したのは神様なの。

だから、あなたは間違いなく困りごとを抱えている」

ミラン「僕は錬金術師だ。神の存在を信じない」

ピコル「あなたの困りごとを解決するのが私たちの使命なの」

ミラン「僕の困りごとは危険なんだ。友達を巻き込みたくない」

ピコル「そうか、困りごとは危険なのね。

その危険を取り除くために、私達はここに来たの。

私達なら危険でない様にあなたの困りごとを解決できる」


ミランは暫く考えていたが、決断した。

ミラン「アイランを奪還したい。アイランは僕の女神なんだ。

今、アイランは奴隷として囚われの身、もうじき売られてしまいそうなんだ」

パピ「はは、お前、神様を信じないと言ったろう」

ピコル「パピ。アイランは、女神様みたいに綺麗な、人間の女のことなの」

パピ「え! そうなのか」


     *     *


ミランの回想。時は2年半前。


ミランは港町ケファからキエネ王国に来ている。

王立大学に入学したのだ。

将来、錬金術師となるため、ミランは幼いことから勉学に励んだ。

王立大学の入学試験では、ダントツの1位で入学した。


ミラン「銀貨4枚と銅貨6枚か。仕送りが来るまで、あと15日。

耐えるしかないな」


ミランは授業で使う教科書を買ったが、予想外に高かった。

手持ちの金が減り、食事もままならない。

食堂での食事には、朝食では銅貨3枚、昼食では銅貨4枚、夕食では銅貨5枚が必要であった。

今日は朝食と昼食を抜いた。

さすがに今日の夕食は食べないと、明日の授業に影響が出る。

授業が終わり、腹ペコで、俯きながら、廊下を歩いていた。


突然、目の前に、弾ける様な笑顔が現れる。

顔が近い。ミランは少し、のけぞる。


「天才ミラン。今日の授業の問題で、議論したい。いいかな」


青と緑、オッドアイの美しさに、ミランの心は吸い込まれる。

たしか。アイランといったか。クラスメイトであった。


ミラン「あっ、ああ」

アイラン「良かった。ずっと、話すチャンスを待っていたんだ。

嬉しい」


急に緊張したため、ミランの腹の虫が盛大に鳴いた。

アイランは驚いた表情になる。しかし、それも美しい。


アイラン「ははは。腹が減っているのか。

そういえば、ミラン。あなた、朝も昼も食堂に居なかったわね」


ミランは恥ずかしく、答えられない。


アイラン「ミラン。財布を見せて」


ミランがおじおじと取り出す財布を、アイランが奪い取る。

アイランは中身を確かめ、ミランに返した。


アイラン「足りるわね。ミラン、付いて来て」


アイランは学校のゴミ捨て場に行き、

壊れた箱と木切れ、短いチョークを拾い、ミランに持たせる。

学校を出て、花屋に行く。


アイラン「店主。この白いヒナギク、100本で幾ら」

店主「銀貨3枚と銅貨8枚」

アイラン「銀貨3枚におまけして」

店主「商売にならんが、良いだろう」

アイラン「ありがとう」


アイランはミランに金を出させた。

さらに、アイランは歩き、墓地に来た。時刻は夕方。

お参りの人が来る時刻であった。


アイランはチョークで『1本 銅貨2枚』と木の板に書き、

足元の箱に立てかけた。


墓地に人が来ると、アイランは死者を悼む歌を歌った。

透きとおるような高音、そして、どこか暖かい、そんな歌声であった。

その歌に引き寄せられ、お参りの人が花を買ってくれる。

アイランはまた、歌を歌う。

日が暮れかける頃には、花は全て売れた。

売り上げを数えると、銀貨20枚、銅貨8枚であった。


アイラン「花を買ったのはミラン、あなただ。この金はミランのもの。

私も腹が減ちゃった。ミラン。学校に戻り、夕飯を食べよう」

ミラン「ああ。ありがとう。アイラン」


アイランの行動は、ミランの心を捉えるには十分だった。

その日から、アイランはミランの女神となった。


2年が終わり、3年になる間、学校は2か月間、休みとなる。

アイランは教授の推薦で、キエネ王国の第3王子の学導となった。

学導の仕事は、教師から与えられた問題を、王子と共に考る。

そして正解に導くことであった。


2か月の休みが終わり、3年生になった。

王子の要望で、アイランは学導を続けていた。週末、

金曜の授業が終わると、その足で、王宮に行った。

日曜の夕方、学校に戻って来る。


アイランの話によると、最初、王子は政治に興味がなく、

狩りに夢中であったが、最近は、政治に夢中になっている。

特に税制について、アイランと2人で、研究しているそうだ。


アイランを王子に取られたようで、ミランは寂しかった。

しかし、その寂しさをアイランに言えなかった。


3年になって、1カ月が過ぎたとき事件が起こった。

王宮に行ったはずのアイランが、行方不明になった。

ミランはアイランを探した。

しかし、何処にもいなかった。


事故ではない。あるとすれば、人攫いに会ったのだろう。

キエネ王国でも、人攫いは居る。

王国内では人身売買は犯罪として罪になる。

しかし、空曰地帯には法律は無い。

だから、人攫いは攫った人を空白地帯で売る。


同級生にキエネ王国の高官の子がいた。

その学生が、噂話と前置きし、教えてくれた。

最近、第3王子が政治に興味を示し始めた。

それを快く思わない者たちがいる。

原因は学導。原因を取り除くため、そいつらは強硬手段に出た。


アイランを救いたい。しかし、ミランには助ける方法が思い浮かばなかった。

そんな折、クラスメイトの1人が、手がかりを見つけた。

それはカジノのパンプレット。

そこには景品の一覧が記載されていた。

ある日の景品で、美女が出品されている。

名前は書いてないが、美女はオッドアイ、青と緑とある。


オッドアイ自体が珍しい。さらに青と緑。間違いなくアイランだ。


必ず、アイランを取り戻す。

決意を固めたミランは、大学を休学した。

ミランは、力ずくで取り戻すつもりでいた。

多分、カジノは自分の首に賞金を掛ける。

そうなれば、自分もアイランも空白地帯には、住めない。

そんなことは構わない。どうでもいい事だった。

ミランはアイランを連れ、何処か遠くに行くつもりでいた。

自分の行動で、親や友人に迷惑を掛けないよう、接触を絶っていた。


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