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彩の異世界転生  作者: 巴空王
39/44

 39 港町ケファ

ピコル達は大盗賊団が封鎖する街道を抜け港町ケファに着いた。

数日前だが、「ユニヴの意思」が更新された。

現在の「ユニヴの意思」は以下である。


  <西へ行け>

    <港町ケファに行け>

      <錬金術師ミランを助けろ>


港町ケファは大都会だった。

港町リュウの5倍は大きい都市だ。

大道芸を披露する広場だけでも8か所ある。

本格的な演劇を上演する劇場まであり、

人間の国の王都と遜色のない文化度を誇っている。

こんな大都会で人を探すのだ。

素人では無理がある。

錬金術師ミランを探すのは、やはり、情報屋を使うのが賢明だろう。

そういえば、カールとエミリーも、この町の何処かで店を始めている筈だ。

彼らにも会えるだろうか。


大道芸を公演する広場にも格があるようだ。

最も格が高いのが中央第一広場、最も格が低いのが北第2広場。

ピコル達はこの町の新参者である。

そう言う訳でピコル達は北第2広場に来ている。

ここは若い大道芸人が多い。

年齢もピコルやパピと同年代であった。

それに、珍しい大道芸が多かった。

例えばコマの曲芸やパントマイム風の出し物、コントや仮面劇などがあった。

バラエティーに富んでいて、初めて見る大道芸ばかりであった。

暫く、ここで公演しよう。ピコル達はそう決めた。


ピコル達はこの町に慣れるため、最初は大道芸に専心した。

10日ほど過ぎ、そろそろユニヴの意思に取り掛かるため、

仲良くなった芸人達に情報屋を知らないか、聞いて回った。

探すのに苦労するかと思ったが、情報屋はあっさり見つかった。


男「君達、ピコル一座かな」

ピコル「そうだけど」

男「情報屋を探してると聞いたんだけど」

ピコル「そう。探してる」

男「僕は情報屋のロイドという。どんな依頼か聞かせてくれないか?」


ピコル「依頼は人探し。錬金術師のミランを探してほしい」

ロイド「年齢とか名前の他に分かる情報はないかな?」

ピコル「名前しか分からない。専属で契約してほしんだけど」

ロイド「俺の場合、専属は無理。

ただ、人探しは得意分野なんだ。

週金貨1枚。報告は週1回。

見つけた場合、金貨10枚。

それで良ければ契約したい」


本人から人探しは得意と言うだけあり、ロイドの仕事は几帳面で丁寧であった。

町は広いので、町を36地区に分割し、地区ごとに住む錬金術師を調べ、名前と住所の一覧を作っていく。それを週1回、報告してくれた。

もう4地区、その4地区には錬金術師が46人いたが、ミランなる錬金術師は居なかった。

港町ケファは広く、地区も36地区ある。

ロイドは、錬金術師が多く住む地区から、優先的に調べてくれている。

後1カ月、調べて分からいようであれば、

金を追加して、調べる情報屋を増やすよう提案されている。


話は少し、遡る。錬金術師ミランを探し始める前、北第2広場に来て直ぐの頃、

パピに友達ができた。

パピの友達は、ピコル公認でもある。

友達は人間ではなく犬であった。

その犬は大道芸を観覧する客の最前列に、いつも寝そべっていた。

そして大道芸人の公演を眺めている。


パピが興味を持ったのは、その犬の行動であった。

観客が投げた投げ銭が、犬の前に転がって来る。

犬は素知らぬ顔で、硬貨を前足で隠す。

硬貨を1枚隠すと、観客や芸人に気づかれぬよう、

口で拾いどこかへ去っていく。

犬の行動は一夜限りでは無かった。毎夜、硬貨を持ち帰るのだ。

観客、芸人の目を誤魔化せても、パピの目は誤魔化せなかった。


パピ「マロ。心話虫は犬にも付けられるか?」

マロ「どうでしょう。目的外使用なので、不明です」

パピ「マロ。心話虫を1匹出せ。目的は聞くな」


犬の話をして『出せ』である。どう使うかはマロでも推測できた。

パピは借り受けた心話虫を犬に飛ばした。

そしてパピは密かに犬と会話を試みたのだ。

パピと犬の件は、ピコルに内緒であった。

秘密裏にパピは犬と会話を練習した。

1週間後には、犬と会話を成立させていた。


パピは秘密を隠すのは苦手だ。それに、自慢話は大好きだ。


パピ「ピコル。面白い話、聞きたくない」

ピコル「どんな話? 聞かせて」

パピ「どうしようかな」

ピコル「お願い」


自分から話を振っておいて、どうしようかな、は無い。


パピ「ピコル。俺に友達が出来た。紹介する。マリオだ」


そこにはピコルも広場でよく見かける犬がいた。


ピコル「友達になったのね。宜しくね。マリオ。

ところで、名前はパピが付けたの」

パピ「違う。マリオから聞いた」

マロ「パピは心話虫で、犬と会話の練習をしてました。

しかし、名前まで聞きだしていたとは、知りませんでした」


パピ「マリオが首輪が欲しいって。買ってやりたい」

ピコル「わかった。とりあえず、雑貨屋に行って、犬の首輪があるか聞いてみようか」


雑貨屋を3軒はしごし、マリオの気に入った首輪を買った。

首輪は赤の革製で、首輪の前には星形の装飾品が吊るされている。

パピはマリオの首に首輪を掛けた。

これで、マリオは野良犬には見えなくなった。


パピ「マリオがツガイを紹介したいって言ってる。

2匹いるって。

弱っているから、俺達に助けて欲しいと、言っている」

ピコル「2匹も! マリオはモテるのね」

パピ「2匹共、とっても可愛いって」

ピコル「じゃあ、マリオの彼女を助けに行きましょうか」


マリオはピコル達を先導し、運河の方に歩いて行く。

運河沿いの船小屋が並んでいる地区に来た。

この地区の外れにある船が係留されていない、荒れた船小屋に、マリオは降りていった。

そこで、マリオは小さな声で「ワン」と一声吠えた。

船小屋の中から、小さな声がした。

「マリオ。お帰り」

少女の声の様だ。

ピコルもパピも驚いた。てっきり犬がいると思っていた。


パピ「大きい方のツガイだって。マリオが」


ピコルは、少女から事情を聴くことにした。

首を突っ込みたくないが、パピの友達の彼女だ。

放っておけなかった。

ピコルは船小屋の下まで来たが、少女の姿は見えなかった。

何処かに隠れているのだろうか。

優しく声を掛ける。


ピコル「こんにちは。私達はマリオの友達なの。

マリオに案内されてここに来ました。

出てきてくれる?」


しかし、少女は出てこなかった。

マリオが優しく「ワン」と吠えると、天井の扉が開き、

少女が1人、梯子を下りてきた。

少女はやせ細っていた。


ピコル「名前を教えてくれる」

少女「マリベル」

ピコル「マリオは2人いるって、言ったけど」

マリベル「妹は病気なの。上で寝てる」

ピコル「妹さんの名前を教えてくれる?」

マリベル「ビアンカ」

ピコル「ビアンカに、お薬を飲ませたいから、

ここに下すけど、良い?」

マリベル「妹を治してくれるの?」


パピに頼み、ビアンカを天井裏から下した。

マロに頼み、ビアンカにマイクロマシン薬を飲ませた。

ビアンカはやせ細っており、明らかに栄養失調だった。

マイクロマシン薬の報告では栄養さえ与えれば回復可能とのこと、それを聞き、ピコル達は安心した。


ピコルはパピと相談し、マリベルとビアンカを宿に移すことを決めた。

宿はマリオも一緒に居られるよう、馬小屋を併設した宿を、新たに取った。

マリベル達に、暖かい寝床と食事を与えた。

3日もすると、マリベルとビアンカは、見違えるように元気になった。

服装も汚れ、破けていたので、下着と服、靴を買いそろえた。

2人の体の汚れは、ピコルが銭湯で落とした。


今日はマリオ、マリベル、ビアンカを連れて広場に来ている。

マリベル達に事情を聞き、3人のこれからを決めるためだ。


まず、現在に至る事情を聞いた。

マリベル達はこの町に住んでいた。父は2年前に病で死んだ。

母とマリベル達は3人で、質素に暮らしていた。

6か月前、母も病気で死んでしまった。

母の死後、知らない男がマリベル達を引き取りに来た。

男は自分達を売る、そう直観したマリベルは、その男からビアンカを連れて逃げた。

あてもなく夜の街をさまよっていた時、マリオに出会った。

マリオは、自分のネグラである船小屋に案内し、そして匿ってくれた。

毎日、銅貨1枚を咥えてきて、マリベルに渡してくれた。

銅貨2枚溜まると、その金でパンを1個買い、2人は飢えを凌いできた。


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