31 悪者退治
金鉱山ゴンゴを出発したピコル一行は北の東西街道を目指し、道を北上していた。
今日は、東西街道と、北上する道が交わる辺りで、野営する予定だ。
もうじき、東西街道に出ようとする時、マロが警告を発した。
マロ「4km先、人間同士が戦っています。
2人組と8人組です」
ピコル「物騒ね。どうしよう」
パピ「4kmか。まだ遠いな。このまま注意しながら進もう。
近づいて来るようなら、退避する。
マロ、監視してくれ」
マロ「はい。お任せください。
あ、今、2人組の1名が殺されました。
あ、もう1名も殺されました。
決着がついたようです」
マロは勝った8人組の行動を逐次、報告してくれた。
8人組は2人の死体を穴に埋め、馬車を奪って、東に向かっている。
ピコル達が8人組と遭遇する危険は無くなった。
パピ「8人組はどんな奴らだろう?
あと、2人組も」
マロ「8人組にパピが捕まえ、逃がした人間が混じっています。
8人組はケルガ達を襲った奴らの仲間で間違いありません。
2人組は戦闘に慣れていないようでした。
商人ではないかと推測します」
道を進むピコル達は戦闘のあった場所に差し掛かった。
そこには、穴を掘った跡があった。
ピコル「ケルガ達が無事だと良いけど。とっても心配。
マロ、ケルガ達のこと何か分かる」
マロ「すみません。わかりません。
端末に監視を命じていなかったので」
パピ「ここは襲撃されると危険な地形。今夜の野営地まで、急ごう」
パピに促され、ピコル達は今夜の野営場所まで移動した。
今夜の野営場所に着き、
一行は野営の準備を始めた。
その時、パピはピコルに悪漢退治することを切り出した。
パピ「ピコル。村長とケルガ達を襲った8人、退治する」
ピコル「え!」
パピ「ピコル達は野営して待ってて。
俺一人でカタを付ける」
ピコル「ダメ、危険だから、止めて」
パピ「村長と8人組をこのままにするのは良くない。
今、退治しないと、友達や仲間にとって危険。
後々、後悔しないため」
ピコル「でも…」
パピ「もう決めた」
「もう決めた」、その一言でピコルはパピを止められないことを理解した。
ピコルはパピに強く抱き付き「必ず戻ってきて。怪我もしちゃダメだからね」
パピ「大丈夫、絶対、明日、夜明けまでには戻るから」
パピはマロにピコル達を守れと言い残し、
走り去っていった。
* *
パピは走りながら、心話虫を着けた奴の居場所を探った。
ソイツは今、南東、8kmの位置。移動していない。
悪漢達の巣に居るのだろう。
パピは悪漢退治の作戦を考えた。
8人と村長を1カ所に集めれば短時間で処理できる。
パピは悪漢に取り付けた心話虫を操作し、
その悪漢を操り、村に向かわせた。
『緊急事態で、悪漢の親玉が村長を呼んでいる』という設定で、
村長を8人のいる集落に呼び寄せる。
上手くいけば、1度にカタが付く。儲けものである。
1時間後には悪漢たちの集落に着いた。
端末に協力を求め、7人の居場所を特定した。
あと30分で、村長と悪漢の1人も到着する。
パピは7人の集まる大きな建物の外にいた。
壁をよじ登り、明り取りの間隙から中をうかがった。
男1「今日の売り上げは金貨125枚、銀貨、銅貨少々。
荷馬車1台。塩漬け肉8タル。
俺が荷馬車1台、塩漬け肉8タルと金貨30枚を取る。
残り金貨85枚と小銭は7人で分けろ」
男2「親分の取り分が少ないが、良いのか
1日で金貨10枚以上の稼ぎだ。
嬉しくて涙が出るぜ」
親分「いいや、今日の商人はたんまり持ってた。俺は十分儲けた。
塩漬け肉も1タル出す。肉を焼いて宴会だ。
酒も1タル出す。好きなだけ飲め」
悪漢たちは今日の儲けに満足し、宴会を開こうしていた。
悪漢たちが肉を焼き、酒を飲み始めたころ、馬車の近づく音がした。
村長と心話虫を着けた悪漢が到着した。
村長は慌ただしく、部屋に駆け込んできた。
村長「何が起こった。親分」
親分「村長、宴会だ。好きなだけ飲んで、食べていけ」
村長「宴会? 緊急事態だというから来た。
それが宴会だと。ふざけるな」
親分「怒るな村長。緊急事態とは何だ?」
村長「緊急事態といって、儂を呼びだしただろう」
親分「はあ?」
そこまで、聞いて、パピは壁から飛び降り、ドアから部屋に入る。
そして即、高速移動モードを発動した。
まづ、親玉と村長以外の7人の顎を強く回した。
脳が揺さぶられ、意識を失う。同時に頸椎が折れる。
7人は一瞬で崩れ落ち、泡を吹いていた。
先に意識を失ったので、痛い思いをしないで、
死ぬことができたはずだ。
パピは高速移動モードを解き、村長に向かって説教する。
パピ「村長、自分達の幸せを求めるのは良い。
しかしだ。自分達を幸せにするために、
他の人を不幸にするのはダメだ。
その年で、知らないのは恥ずかしいぞ」
村長「お前は大道芸人の生き残りか。
なまいきなことを言うな。
お前に何が分かる」
村長の言い訳など聞きたくなかった。
村長は話を続けようとしたが、パピは高速移動モードを発動した。
そして村長の顎をひねり、首の骨を砕いた。
村長は泡を吹いて、その場に倒れた。
親玉が逃げようとしていたので、パピは親玉の足の甲のを踏みつけ、逃走を阻止する。
高速移動モードで行ったため、足の甲の骨は砕けた。
親玉は痛みで床を転げまわる。
それでもパピを見て、声を絞り出す。
大将「待て、待て。金がある。金をやる。
大金だぞ。
金貨3000枚ある。
お前にやる。
良い話だろう。
俺を殺すと聞けないぞ」
パピは、教えてもらう必要が無かった。
パピは心話虫を親玉に飛ばした。
心話虫で親玉の話の真異を探る。
金貨の話は本当だった。
同時に、親玉はパピのスキを突き、パピを殺そうとも考えている。
パピが微笑んだのを見て、親玉は、パピが自分の話に乗ったと思った。
親玉はニヤリと笑った。
しかし、笑った表情でのまま、親玉の命は消えた。
夜が明ける2時間前、パピはピコル達の野営地に戻ってきた。
パピは何故か荷馬車に乗っていた。
その荷馬車の荷台には荷物が乗っていた。タルが3つ。
パピが帰ると、ピコルが怒っていた。
怒ってパピに抱き着いた。
パピの体に怪我が無いか、入念に調べた。
その間、ピコルは泣いていた。
パピはピコルがなぜ怒るのか分からない。
それに、なぜ泣くのかも分からない。
しかし、ピコルを悲しませたことはわかった。
罪滅ぼしに、ピコルに優しく接しよう。
パピはそう誓うのだった。
今日は荷馬車で街道を進む。カールが御者をかって出てくれた。
エミリーはカールの隣に座り、楽しそうにカールにしがみ付いている。
荷台の上にはピコルとパピ。
パピは昨夜徹夜のため、眠かった。
ピコルの機嫌も、いつの間にか良くなっていた。
ピコルは膝枕で、パピを眠らせてあげた。
パピ一行は次の町に着いた。
この町では嬉しい情報があった。
公演していた旅芸人たちからケルガ達の消息が聞けた。
ケルガ達は5日前に、この村にいた。
皆、元気で、港町リュウを目指して旅立ったという。
悪漢8人とは遭遇していなかったのだ。
ピコルはカール達と臨時の大道芸人一座を組んだ。
演目は以下の通り。
ピコルの歌+パピの踊り
カールのジャグリング
ピコルとエミリーの歌
パピの曲芸
休憩
カールのジャグリング2
ピコルの歌+パピの踊り
パピの曲芸2
ピコルは、リンラから習った歌をエミリーに教えた。
自分の知っているアニメソングで、
観客に受けた歌もエミリーに教えた。
投げ銭については折半した。
投げ銭だけで、十分旅を続けられる額を稼ぐことができた。
明日はチランの国を出る。
ピコルは寝る前に、
久々に「ユニヴの意思」を確認した。
<西へ行け>
<港町リュウに行け>
<幽霊を救え>
いつの間にか2行増えていた。
港町リュウは目的地なので、問題は無い。
次は問題だ。幽霊?、何なのだろう。
ハビアロンでは幽霊は実在するとか。
実在して欲しくない。絶対。
彩は、怖いものが苦手だ。
港町リュウへの足取りが、重くなるのを感じた。




