25 国境を越えて
ピコルとパピ、マロの3人は旅立った。
港町ルフを出発して、今日で10日。
距離にして150km。
ここまでの道中で、村を4つ、通過した。
その内2つの村で、ピコルとパピは大道芸を行った。
村には、他の大道芸人はいなかった。
ピコルとパピの単独ライブであった。
大道芸の演目
ピコルの歌+ピコルの踊り
ピコルの歌+パピの踊り
パピの曲芸+ピコルの司会
休憩
ピコルの歌+パピの踊り
ピコルの踊り+パピの拍手
パピの曲芸+ピコルの司会
やればできるもので、40分ほどの公演をこなした。
2人組での大道芸は初めてで、
聴衆を満足させられるか、最初は不安だった。
音楽が無いので、華やかさには欠けるが、
パピの曲芸は秀逸で、大いに受けた。
投げ銭も、それなりの金額を、集めることができた。
投げ銭だけで、十分、旅ができる。
4つ目の村は、国境の村であった。
この村の西には、アバの国の関所がある。
今日はアバの国を出て、次の国、シウナの国に入る予定だ。
3人は朝、村の宿を出て、関所に向かった。
関所の前には、料金表が掲げられていた。
出国税
自由民 銅貨 2枚
奴隷 銅貨 1枚
荷引車 銅貨 2枚
荷馬車 銅貨 3枚
家畜 銅貨 1枚
商人キャラバン 銀貨 2枚
料金表の横には、指名手配の人相書が張り出されていた。
「戦闘ペット2匹」と題する手配書で、
男女の絵が描かれていた。
しかし、どう見ても、ピコルとパピには見えない。
それどころか、この人相書に当てはまる人間は、
ハビアロンにも、地球にも居そうもない。
ピコルは笑いそうになり、必死に堪えた。
関所を進むと、左側に出国税の料金所があった。
ピコルとパピは2名と言って、
銅貨4枚を人間の役人に渡した。
関所の左、少し高い所に白ガウイがいた。
彼らは、人間の役人や通行人を監視していた。
ピコルとパピは、止められることもなく、
アバの国の関所を通過した。
アバの国の関所を出た先、
30m西に、シウナの国の関所があった。
こちらでは、入国税が徴収された。
税額は、アバの国の出国税と同額であった。
シウナの国に入った。
景色は、アバの国と変わらなかった。
ただ、行きかう人の頬の奴隷紋が、異なっていた。
シウナの国の奴隷紋は、左頬に緑色で、丸の中にZであった。
アバの国の赤い奴隷紋を見慣れていたため、
最初、緑の奴隷紋に違和感を覚えた。
しかし、街道を進むうち、
すぐに慣れて、気にならなくなった。
ピコルとパピは街道を西に進んだ。
村を3つ通過、大道芸の公演を2回、こなした。
地図によると、
このまま街道を進むと、次はシウナの国の領都だ
ピコルとパピは街道を進む。
街道の西に巨木の頭が見えだした。領都は近い。
ガウイ族の王都はキラグンガの大木を中心に作られる。
キラグンガの木を植える、その木の南に王の城を築く。
城の南に、ガウイ族の居住区がある。
奴隷である人間の居住区はキラグンガの木、城、ガウイ族の居住区を
囲むように配置されている。
この王都の配置を習って、
ガウイの領国も、キラグンガの木を中心に、築かれている。
キラグンガの木の南に領城がある。
その城の南にガウイ族の居住区。
奴隷の居住区がこれらを囲むように築かれている。
ガウイ王国には小国が多々あるが、配置は皆同じだ。
キラグンガの木が大きい程、古い歴史を持つ。
王都のキラグンガの大木の樹齢は3万年だ。
シウナのキラグンガの木の樹齢は1万年程であろうか。
シウナのキラグンガの樹高は220m。
平地ではかなり遠くから見える。
キラグンガの木を眺めながら、街道を進んでいると、
左側の側道から、牛の群れが街道にあふれ出していた。
牛を制している少年が、遠くから話しかけてきた。
少年「そこの2人! 済まねえが、少し待ってくれ。
牛の群れを運ぶ」
ピコル「分かった。待つ。どのくらい」
少年「ありがとう。5分くらい」
側道から出た牛は街道を進む。
ピコル達は街道を進みながら、最後尾で牛を追う少年と話した。
牛は200頭ほど、男女10で牛を運んでいるという。
牛はキラグンガの木の麓にあるガウイの幼育場に運ぶ。
牛はガウイの幼体の餌だという。
少年「もう、夕方だ。お前ら何処で夜を明かすつもりだ?」
ピコル「領都で宿を探す」
少年「領都に宿は無いぞ。
少し先に、俺達の牛を溜める場所がある。
水場とテントがある。泊めてやるよ」
ピコルとパピはテントに泊めてもらうことにした。
食後、泊めてもらったお礼に、大道芸を披露した。
場は盛り上がり、話が弾んだ。
話の終わりに滅入る話を聞いてしまった。
男「春分祭が終わって、半月、この次期、
幼育場に牛を運ぶのは嫌なんだ」
ピコル「何が嫌なんだ?」
男「幼体の苗床が置いてある。それを見ると体が震える」
ピコル「幼体の苗床?」
男「元は人間だよ。戦闘ペットの成れの果てだ。
戦闘ペットは成長すると、ガウイの幼体の苗床にされる。
ガウイの幼生は苗床を食って、成体になる。
幼体は苗床をきれいに食っちまう。
ガウイが、戦闘ペットを苗床にするのは、春分祭の夜。
この時期に牛を運ぶと、否が応でも、目に入る。
俺も子がいる。
自分の子がこんなにされたら、堪らん。
本当に嫌なものだ」
ピコルもパピも言葉を失った。
戦闘ペットは、15歳で春分祭を迎えると、
戦闘ペットの楽園に行けると、聞いていた。
幼い戦闘ペットは、15歳になるのを楽しみにしている。
ピコル、パピは信じていた。
姉や兄が戦闘ペットの楽園に行ったのだと。
ピコル「苗床にされた人間は助けられないのか?」
男「苗床にされた人間は芋虫に変態してしまう。
真っ赤なぶよぶよだ。
生きているんだろがな。
あの状態で、助けられても、喜ばないだろうよ」
ピコルは言葉を返せない。
男の言う通りだ。
ガウイは、ハビアロンの外から持ち込まれた悪だ。
私がユニヴの意思を遂行すれば、ハビアロンを浄化できる。
私は使徒だ。ハビアロンを浄化できる存在。
ハビアロンを救いたい。
ピコルは心の底からそう思った。
寝る前、ピコルはユニヴの意思を確認した。
<西へ行け>
変わりは無かった。




