24 再び西へ
さらに半月が過ぎた。ユニヴの意思を確認するが、
<海賊ラプマンを救え>は達成されていなかった。
今まで、提督を信じ、に任せていたが、直接、行動する必要を感じだした。
午前中行うパピの訓練を終えて、
東の広場に来ると、背の高い美人がピコルに近づいてきた。
パピが緊張し、ピコルに寄り添い、ガードする。
背の高い美人「ごきげんよう。初めまして、ピコル様、パピ様」
ピコル「何か用?」
背の高い美人「ナナミと申します。提督の使いです」
ピコル「それで何か用?」
ナナミ「昨日の評議会の結果をお伝えします。
時間を頂けますか」
ピコル達は広場のベンチで話すことにした。
ナナミ「ラプマン氏は我々の組織から追放と決まりました。
また、ここ、港町ルフからも追放されます。
ラプマン氏は、本日12時のルンバル王国行、客船に乗船し、この地を離れます。
今日以降、我々はラプマン氏に関与しません。
また、ラプマン氏も、我々に関与しない制約を立てました。
以上が評議会の決定です。
ピコル様、パピ様。
お二人の確認を取るよう、提督から言われております」
ピコルはその場で「ユニヴの意思」を確認した。
<西へ行け>
<港町ルフに行け>と<海賊ラプマンを助けろ>が消えていた。
ピコル「連絡、ご苦労です。
今、確認しました。
私の使命も達成されました。
提督に確認したことを伝えてください」
ピコルは使徒として、初めて、一仕事終えた。
少しだが、達成感を得た。
ユニヴの意思は、まだ「西へ行け」と告げている。
さあ、西に行こう。
何が待っているか楽しみであった。
* *
次の使命を見付けよう。
ピコルはパピとマロを交え、作戦会議を開く。
『海賊ラプマンを助けろ』が達成され、
西に向け旅立ちたい旨を話す。
皆からは反対意見は出なかった。
作戦会議では、マロが、地図も交え、西方面の状況を説明してくれた。
ガウイ王国は西方向に1100km続く。
その外側には空白地帯と呼ばれる地域がある。
空白地帯の外側に人間の国がある。
空白地帯は人間の国とガウイ王国の緩衝地帯で、
ガウイ族にも人間の国にも管理されていない。
管理されていないから、税金もない。警察者もいない。
一種の無法地帯である。
しかし、税金が無いので人間の国より商業、
工業が発展した都市がある。
港町ルフの西側には、空白地方面に至るまでに、ガウイ族の領国が4カ国ある。
順に、シウナの国、タジタンの国、チランの国、ラオの国。
各領国はアバと同程度の国力で、広さも同じ程度である。
各領国の領民は頬に異なる形、色の奴隷紋が彫られ、
領国間の出入りは禁止されている。
ガウイの国の領国を出入りできる人間は、
頬に奴隷紋のない自由民と自由民の奴隷に限られる。
また、人間の奴隷のみでは領国を出入りできない。
必ず、奴隷主の同行が必要となる。
理由もなく旅する者はいない。
ピコル達の理由は『ユニヴの意思』。
しかし、これを他人に話すわけにはいかない。
旅する理由や職業、設定を考えた。
西に旅するに際して、
ピコルとパピの頬のアバ家の奴隷紋が消えたことは都合がよかった。
ガウイの領国を行き来する者は商人か運送業が大半である。
ピコルとパピでは若すぎて商人に見えない。
馬車を引くわけでもないので運送業も無理がある。
やはり、慣れた大道芸人として旅をすることに落ち着いた。
旅費について計算した。
アバ家の金蔵から持ってきた金貨だけでは足りない。
道中、大道芸で稼ぐ金貨は当てにできない。
手持ちの金貨だけで旅ができるよう、
ピーターに頼み、預けた金貨5袋を持ち出した。
これで、旅費のめどはついた。
ピコル「目的地を決めたい。ラオの国の港町リュウ。
ここから1000kmでキリが良い。
期間だけと半年で行く。
かなり、ゆっくりな旅になる。
パピもマロも良い?」
パピ「ピコルに賛成」
マロ「お供します」
まあ。分かっていた。
会議で方針を出すのはピコルのみ。
しかし、ピコルは会議を省くことはしない。
西への出発が決まり、ピーターとお別れ会を開いた。
ピーターはアイナをお別れ会に連れて来た。
しっかり挨拶ができる。
回りへの気配りもできる。
さらに良いことに、芯のある娘であった。
善人で、善良なピーターである。
悪者に操縦されたら大変だ。
この娘ならピーターの操縦を任せられる。
ピコルは似合いの組み合わせに安心した。
お別れ会の後、
金貸しから貰った金の残りは全てピーターにやると伝えた。
大金過ぎると断ってきたが、
パピの一喝で、ピーターは了承した。
これで、港町ルフでの懸案は全て片付いた。
* *
ここはキラグンガ城、暗殺長官の執務室。
暗殺長官は思案していた。
陛下より命令さされた戦闘ペットの殺害命令。
これを実行させた暗殺隊からの連絡が途絶えた。
連絡が途絶えて3週間。
ギルとマントマはもう生きていないだろう。
暗殺者が連絡を絶つ。原因は死以外ない。
暗殺者は絶対、裏切らない。
ガウイ族がこの地に降りて3万年。
暗殺者が裏切ったためしはない。
これが、ガウイ族の領主などの暗殺なら、
暗殺者が、返り討ちに会うことは普通にある。
しかし、今回は戦闘ペットの暗殺。
時間がかかることはあっても、
ギルやマントマが後れを取ることはない。
何が起こったか。
調査する必要がある。
誰に調査させよう。
長い思索に沈む。そして決断した。
暗殺長官は招集命令書を書く。
招集されたのはガント、とピグミの2体。共に赤ガウイであった。
2体とも、暗殺者は既に、引退していた。
2体のガウイは共に高齢であった。190歳を超えている。
もう生きたとしても後10年、生きられるかどうか。
暗殺長官「ガント、ピグミ。久しぶりだな」
ガント「はい。久しぶりです。命令はもうないと思っておりました」
ピグミ「最後のご奉公と思い、参りました」
暗殺長官は戦闘ペット暗殺の経緯と、
ギルとマントマによる追跡の顛末を説明する。
暗殺長官「ガント、ピグミ。お前達には2点を命令する。
1つ。ギルとマントマの状況調査
2つ。戦闘ペットの行方の調査、暗殺
お前達の生ある限り、追及せよ」
ガント「拝命いたします」
ピグミ「拝命いたします」
暗殺長官「達者でな、ガント、ピグミ」
ガント「死に場所を頂き、こちらこそ感謝します」
ピグミ「命令中の死亡は暗殺者の誉です」
暗殺長官は考える。
神聖球からのお告げを放棄することはできない。
無駄だと分かっていても、やらなければならないことがある。
誰かを使いつぶすことになる。
ガント、ピグミにその役を振ってしまった。
戦闘ペット暗殺は失敗した。
今から、陛下に失敗を報告しよう。
全て私の責任だ。責任を取ろう。




