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彩の異世界転生  作者: 巴空王
23/44

 23 凱旋

ピコルは木の上で、パピを見ていた。

遠く橋の上で、ガウイ族の2体がパピをうかがっている姿が見えた。

ガウイ族を確認すると、ピコルは怖くなった。

もうパピを見ていられなくなった。

ピコルは目を(つむ)ってしまった。


手を合わせ、ひたすら祈ることしか出来ない。


神様、パピを助けてください。お願いします。

仏様、パピを助けてください。お願いします。


パピを失うかもしれない。その恐怖で心が狂いそうになる。

狂いそうになる自分を、祈ることで、鎮める。


お月様、パピを助けてください。お願いします。

大地の精霊、もし、居るのなら、パピを助けてください。お願いします。

海の精霊、もし、居るのなら、パピを助けてください。お願いします。

足りない。もっと。

木の精霊、もし、居るのなら、パピを助けてください。お願いします。

川の精霊、もし、居るのなら、パピを助けてください。お願いします。

水の精霊、もし、居るのなら、パピを助けてください。お願いします。

どれだけ祈っても足りないかった。

ピコルは時を忘れて祈り続けた。


ピコルは気が遠くなっていく。

そんな時、誰かが、優しく肩を抱いてくれた。

ピコルは正気を取り戻した。

パピの手が見える。


パピ「ピコル、お待たせ。行こうか」

ピコル「うん」


パピに促され、ピコルは木を降りた。

ピコルは木を降りられたが、足に力が入らず、歩けなかった。

パピは、そんなピコルを背におぶってくれた。

パピの背の温もりが肌を通して感じられる。


パピは何処を歩いているのだろう。

海の音が聞こえる。

ピコルはパピの背で甘えた。

何時しかピコルは眠ってしまった。


気が付くと、音が聞こえる。

何処からか、大きな音が聞こえる。

飛行機、違う。ヘリコプター、近い。そんな音がする。

ピコルは背を起こし、音の方向を確かめる。

勘であるが、西の方から聞こえる。

まだ、辺りは暗く、何が起こっているか分からない。

パピはピコルの横で、立ち上がり、音の方向を見ている。


パピ「起きた。ピコル?」

ピコル「うん。何の音?」

パピ「心配いらない。マロの友達」

マロ「はい。心配いりません。

黒ガウイと青ガウイの死体を海に運び、捨てます。

私の仲間が出す音です。

ガウイの血や内臓も、きれいに片付けます。

先々、禍根を残さない為です」

ピコル「大きな音」

マロ「すみません。大きい奴なんで。許してやってください」

ピコル「ううん。ありがとうマロ。そして大きなお仲間も」


パピはピコルを促し、移動する。

東門の外、いつも高速動作モードを練習する草場、そこに行った。

草場の隅に流れる小川で体を洗った。

水は冷たかったが、すがすがしい気持ちに成れた。

2人共、用意していた服と靴を身に着けた。


門が開くのはまだ早いが、2人は門の方に向かった。

門の前には、荷馬車の列が出来ていた。

荷馬車は200台以上ある。

今日は特別な日なのか?

最後尾の荷馬車の御者に聞いた。


御者「特別な日? 違う。違う。

朝は荷馬車の列ができる。食い物を町に運ぶ。

曜日によっては、もっと多い。

今日は普通かな。

後10分で夜が明ける。

そうすると門が開く。

今日は、積み込みでへまをして、最後尾だ。

運が悪い。

お前達、歩きだろ。列に並ぶ必要はない。

荷馬車以外は、そのまま入れる」


ピコル達は朝が遅いので、毎日、

こんな列ができているとは知らなかった。

世の中は、人が回している。それを実感した。


御者の忠告を聞き、門に向かう。

門は開いていた。

荷馬車の横を通り、町に入った。


ピコルとパピは宿に戻った。

午前中いっぱい、ベッドで横になり、

取り留めのない話をして過ごした。


午後になり、食事のため、東の広場に行く。

ピーターがいたので声を掛けた。


パピ「昨夜の荷物回収、ご苦労」

ピーターは昨日パピが隠した革袋を宿に届けてくれていた。


ピーター「無事でしたか。心配しました。

聞きましたか。今、町はこの話で持ちきりです」

ピコル「どんな話?」


ピーター「昨日、戦闘ペット2名が、西門から逃げ出したそうです。

例の懸賞金が掛かった者たちです。

最初に、大鷲がこの戦闘ペットに目を付けました。

それを知らないガウイ2体は、戦闘ペットをしとめてしまいました。

エサを横取りされた大鷲は大いに怒りました。

大鷲はガウイ2体を足の鍵爪で挟み、持ち去ったそうです。

そして、巣で待つヒナの餌にしたそうです」


この噂、小学1年生でも信じないと思う。

聞いていて、恥ずかしかった。

このおとぎ話の作者は、上手くできたと、自信がありそうだ。

パピの趣味だろうか、それともマロか。

たぶん二人の合作であろう。


噂話も半月もすれば下火になる。

誰もが戦闘ペット、黒ガウイ、青ガウイの件を忘れていった。


ピコルはユニヴの意思を確認するが、

<海賊ラプマンを救え>は達成されていなかった。


そんな折、ピーターがパピに泣きついてきた。

ピーターの話によると、

ピーターのねぐらの倉庫の借主は、

中堅規模の商会などだが、その商会がこの町から撤退するという。

ピーターも倉庫の荷物がだんだん減って、

この頃は、荷物の出し入れがほとんど行われなくなった。

不安になったピーターは情報を集めた。

それで分かったのが、商会の撤退話。


ピーター「パピ兄。僕はどうしたらいいんでしょう」

パピ「おまえ、年上、俺は兄じゃない。

自分で考えろ」

ピーター「そんな。もう5年も住んで、住み慣れた場所。

あれ以上のねぐらなんて、ありません」

パピ「しらん。野宿しろ」


ピーターは便利屋。

この世界の便利屋は、ホントに稼ぎが少なく、

宿や下宿を借りられない。

ピーターは根っからの善人で、

人を騙すとか、悪事ができない。

裏稼業の情報屋も、正直すぎて稼ぐことができない。


ピコルは、ピーターには便利屋も情報屋も、

向いていないと感じた。

もっと真っ当な商売が向いている。

そう、洗濯屋ののような。


今日も、ピーターはパピにまとわりつき、

ねぐらの愚痴を言っている。

ピーターの愚痴はピコルの我慢の限界を超えた。


ピコル「ピーター。好きな女が居るんだろ。

たしか、幼馴染で、洗濯屋の子のアイナだったけ。

寝る所がないなら、そのこ娘に頼め。

一緒に寝かせろって言え。

寝る所の無いお前を追い出すようなら、その娘、

お前に気が無い。

これは、娘の気持ちを確かめるチャンスだ。

うじうじ言ってないで、

突撃してこい。

分かったか」

ピーター「はい」


ピーターは無事、新しいねぐらを確保できたようだ。

パピに纏わりつかなくなった。

めでたし、めでたし。


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