22 決戦
時刻は11時半を回ったころ、
黒ガウイのギルはホテルの自室で、報告書を書いていた。
暗殺長官に送る報告書である。
ギルは頭を悩ませていた。
報告することが無かったのだ。
戦闘ペットを追い詰める策を施して15日、
今日まで、これと言った成果が無かった。
週1回送る、報告書のネタも尽きてしまった。
しかし、今は戦闘ペットが巣穴から飛び出してくるのを、待つしかなかった。
状況は正確に理解していたが、少し焦れていた。
ギル「そろそろ、追加の対策が必要だな」
部下であるマントマにも、やらせる仕事が無かった。
そこで、マントマには情報収集の訓練をさせていた。
人間の情報屋を使って情報を収取させた。
少しずつだが、マントマも成長していた。
ギルが報告書を書き終えた時、ホテルの中が騒がしくなった。
部屋のドアを叩く音がする。
扉を開けると、白ガウイの衛士が立っていた。
衛士「戦闘ペットを発見。西門を破り、逃走。2匹です」
とうとう、奴ら巣穴から飛び出したか。
自分の作戦が間違っていなかったことに、ギルはほっとした。
ギル「報告ご苦労。
衛士。犬を6匹、用意。西門の前に連れてこい。
大型松明を2本。5分以内に準備せよ。
急げ」
ギルはマントマを連れ、西門に急いだ。
衛士は既に犬と松明を準備し、待っていた。
衛士達も追跡隊を準備している。
ギル「衛士長。追跡は俺達だけで行う。
お前達は追跡するな。
大勢で追うと、戦闘ペットが怖がって隠れる。
いいな」
衛士たちには、戦闘ペット狩りは又とない娯楽である。
衛士たちは不満であった。
しかし、王の勅命を受けた者には逆らえない。
衛士達は仕方なしに、命令に従い、西門で待機した。
ギル達は犬に、西門の前の戦闘ペットの臭いを覚えさせ、追跡を始めた。
マントマ「奴ら何処に逃げますか?」
ギル「町から離れたいはずだ。
20km位は街道を進む。
3時間くらい走るだろう。
そこらへんで、犬をまく行動に出る。
奴らが利口ならだがな」
マントマはこの任務に飽いていた。
戦闘ペットを仕留めれば、解放される。
そう思うと、足取りが軽い。
ジルにしても本音は同じであった。
ジルとマントマの前方に橋が見えた。
橋の近くに来た時、犬に異変が起こる。
犬の足取りが止まった。
マントマが犬をけしかけるが、犬は橋から後ずさりしだす。
ジルが橋を調べると、何か分からないが強烈な臭いがする。
ジル「何か橋に撒いたな。犬の鼻が曲がっちまった。
奴ら、思ったより頭が回る」
ジルは犬での追跡を諦めた。
マントマに命令し、犬の手綱を切った。
ジルが橋の上から街道前方を見た時、遠くに何か見える。
前方の何かは動かない為、複眼のガウイでは判別が難しい。
ジル「マントマ。前に何か見えないか?」
マントマ「確かに、何かいる」
ジルとマントマは走り出す。
走ると頭が上下左右にぶれるので、
複眼のガウイ族には、止まっている物がはっきり見える。
ジルは確信した。戦闘ペットを発見した。1匹。
この1匹の戦闘ペットは囮になるつもりだろう。
たぶん、弱いもう1匹を先に逃がしたいのだ。
ジル「全力で仕留めるぞ。頭と胸は潰すな。証拠が消える」
マントマ「了解!」
ガウイ族のジルとマントマは戦闘意欲が高まっていく。
そして臨界に達する。
2人は吠え声を上げる。
静かな真夜中に、その吠え声が木霊する。
パピは橋の上に、巨人2体を確認した。
遠くなので、色まで分からないが、ガウイ族なのは分かる。
向こうは、こちらをうかがっている。
俺が見えたのだろう。
此方に走り出した。
ガウイ族の走力は強力だ。100mを4秒で走る。
200mに近づくと、咆哮を上げた。
人間ならだれでも恐怖する、不気味な咆哮であった。
パピは石を、思いっきりガウイに向けて、投げた。
石は3mほど右に外れた。
すぐさま、2投目を投げる。
今度は頭上、1mを通過した。
パピは足元の石を拾う。
パピ「難しいな。止まっている的に当てるのとは、わけが違うか」
ガウイ族2体は、もう50mまで近づいていた。
もう、ガウイの色も判別できる。
パピは右に見える、青ガウイに石を投げる。
石は青ガウイの膝に命中する。
青ガウイはその場で転倒した。
黒ガウイはその場で急停止した。
転倒した青ガウイは素早く立ち上がった。
パピ「普通に投げてもダメージは弱いか」
ギルは思う。
あの戦闘ペット、さっきから石を投げているのか。
バカな奴だ。
俺達の外骨格は人間が投げた石など弾き返す。
当れば少し痛いが、その程度だ。
ここは真正面から突進だ。考えるスキを与えず、仕留める。
そう考えていた時、
マントマが転倒した。
ギルは急停止する。
ギル「大丈夫か?」
マントマ「石が当った。痛い程度だ」
マントマは直ぐに起き上がった。
ギルは方針を変える。
戦闘ペットの発見で、喜びすぎ、油断していた自分に気づいた。
ギル「マントマ。武器を出せ。武器で仕留める」
ギルは背負い袋から武器を取り出す。
武器は組み立て式の槍であった。槍の胴3つを繋ぎ、
1本の槍を組み立てた。
マントマは両端に鉄の重りがついた鎖を取り出す。
ギルが戦闘ペットを確認すると、逃げずのその場に立ってた。
ギル達は武器を携え、ゆっくりと前進する。
パピは自然体で立ち、近づいてくるギルとマントマを観察していた。
間合いはどのくらいだろう。身長から考え、16mと見積もった。
ガウイは20mまで近づいた時、武器を構えた。
黒ガウイは槍先をパピに向ける。
青ガウイは鎖を頭上で振り回しだした。
パピはガウイ達の予備動作に注目している。
攻撃するにはどんな生き物でも反動を利用する。
一瞬の溜めや、沈み込み、後退動作が伴う。
ガウイが16mに近づいた時、2体の動作が一瞬止まる。
パピはガウイの予備動作を確認した。すかさず、高速動作モードに移る。
ガウイ達の、溜めの体重移動がスローで見える。
黒の溜めが少し大きい。
先に青に攻撃させ、その攻撃を避けたスキを突き、黒が仕留める連携であろう。
パピは青と黒を仕留める動作を頭の中でシミュレートする。
3パターン程考えた。
どのパターンでも仕留めることは可能であったが、
パピは先に青を始末するパターンを選んだ。
パピは、青ガウイ目掛け、石を投げる。
この距離なら外さない。
全力で、ガウイの体の中央に投げた。
青ガウイは、予備動作で体を沈めている最中であった。
石は吸い込まれるように、青ガウイの顔の、ど真ん中に進む。
石はガウイの顔にとどく。そして、石はそのまま顔にめり込んでいく。
同時に、青ガウイの後頭部が破裂し、
頭の中身が、後方に四散していった。
黒ガウイは予備動作を終え、槍先をパピに突き出していた。
槍先は、パピの中心を正確にとらえていた。
槍先は5mまで近づいていた。
パピは、青ガウイに石を投げた右腕の反動を利用する。
左腕、体の筋肉を使い、体を捻り、体を槍先の導線から逃がした。
槍先はパピの体のすぐ横を通過し、空を切る。
パピは体を捻った反動を使い、
石を黒ガウイの顔面に向け渾身の力で投げる。
石は黒ガウイの複眼に当り、複眼が砕け、石が頭にめり込んでいく。
同時に、頭が膨れ、頭蓋に亀裂が入る。
その亀裂から、緑色の液体が噴き出した。
青ガウイは膝から崩れ落ちていく。
黒ガウイは前方に倒れこんでいく。
ガウイ達2体は、手足をバタつかせ、暴れていた。
パピ「マロ、ガウイはどうなっている?
教えて」
マロ「2体共、心臓は停止、体液の循環が止まりました。
まだ、神経は爆発的に活動していますが、統一が取れていません。
もう戦闘は不可能です」
パピはマロに、ガウイ達の状態を、確認してもらった。
パピは再度、自分の目で、ガウイの状態を確認した。
手足をバタつかせる2体のガウイは徐々に、その動きを弱めだした。
それを確認し、パピは高速動作モードを解いた。




