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彩の異世界転生  作者: 巴空王
21/44

 21 決戦準備

今日は特別な日だ。

ピコルとパピがカオラン一座の臨時団員となり、30日が過ぎた。

カオラン達は人間の国に向け旅立とうとしている。

今日は港町ルフでの最後の公演となる。

公演が終われば、6人で会食し、旅立ちの会を開くことになっていた。

そして6人で1室に泊まる。

翌日、カオラン達は客船に乗って、

空白地帯の港町リュウを経由し、

ルンバル王国の王都に向かう。

2か月に及ぶ船旅である。

ピコルとパピは4人分の旅券を買い、

旅のハナムケとして渡した。


タロンとミーシャはピコルとパピにしがみ付き、

泣いていた。

旅の為に新しく買った服が涙に濡れていた。


客船の出航は午前10時。

岸壁には見送る人であふれていた。

カオラン、リンラ、タロン、ミーシャは船の後方で

いつまでもピコルとパピに手を振ってくれていた。

何時しか船が水平線に消える。


ピコルとパピも、胸にぽっかり穴が開いたような気分であった。

ピコルはカオラン、リンラ、タロン、ミーシャが幸せを掴むよう祈念した。


その日は何もする気が起きなかった。

広場のベンチに座り、

パピにしな垂れていた。

パピの体温を感じ、

ゆるい時間を過ごした。


     *     *


今日は西門から出て街道を進む。

旅に出たのではない。

ピクニックに来ている。

朝、広場の屋台で、パンと飲み物、チーズを買った。

ランチは背負子に背負い、歩いている。

行き先はパピにお任せ。ピコルは知らない。

ただただパピに付いていく。


パピは、彼の行動について、何も説明してくれない。

しかし、パピとマロとの会話で、ピコルにも分かることがある。

今は、町からの街道の状態、橋の位置、街道の左右の地形を頭に入れているようだ。


パピは黒、青ガウイを打ち取るための、準備工作をしている。


ピコルは自分が、準備工作には何も、寄与できないことを自覚している。

だから妄想を楽しんだ。パピとデートする妄想を。


ランチを終えた午後、2人は海岸に来ていた。

パピから石を拾うよう頼まれる。

卵型の石。丸い程良いという。大きさは卵Sサイズくらい。

ピコルは50個ほど集めた。

パピも50個ほど集める。

パピは石を調べ、不良な石を海に向かって投げた。

残ったのは40個ほど。

パピは自分の背負子の革袋に、拾った石を全て詰め込み、街道に戻った。

石を詰めた革袋は草陰に隠し、今日のデートは終了した。


つぎの日は買い物をした。買い物は服1式と下着、靴。ピコルとパピの分。

それに酢を2瓶買った。

買い物を終えた2人は東門を出て街道を歩く。

街道に架かる最初の橋にさしかかた時、

パピは酢の入った瓶を、橋の袂に隠した。

酢など何に使うのだろう。

ピコルは気になったが、パピには尋ねなかった。

デートで盛り上がった気分を損ねたくなかった。


橋からさらに300m程、進む。

2人は其処で休憩した。

この場所には、大きな木が生えている。


何を思ったか、パピは、

「上を見てくる」

といい、木を登っていった。

8m程上ると、葉が茂り、外から内は見えないが、

外はよく見える。


パピ「遠くまで見える。ピコルも登って」

パピは木の枝にロープを括り、下に垂らしてくれた。

ピコルも木登りは得意であった。

ロープがあるので安心して上れた。


ピコルが上に上ると、パピは買った服を入れた革袋を、

木の枝に括り付け、隠していた。


パピ「ここから見える東側の草場で黒、青と戦う。

ピコルはここで見てて、マロはここに繭を張り、

ピコルを隠して」

マロ「了解です。任せてください」

パピ「今日、午前1時ころ。大きい月が真上に来る。

今日はとても明るい。

今日は戦闘日和」


パピは初めて、説明してくれた。

聞いているうちに、ピコルは不安になる。

泣きそうにになったが、我慢した。


パピは戦闘予定地の草場に、

昨日集めた石を、5個づつ纏めて置いていく。

石は白いので、草場でも簡単に場所が分かった。


パピは、これで準備は完了だという。

これだけで、5mもある黒ガウイと

4.5mの青ガウイを倒せるのだろうか。

ピコルは不安で、胸が潰れそうになる。


町に帰ったパピは、雑貨屋でハサミと糊を、

生地屋で、赤と黒の薄手の布を買う。

宿に戻ったパピは、ピコルに指示する。

ピコルは指示に従い、

赤の布を、アバ家の奴隷紋の形に切り抜く。

この布は糊で頬に貼るという。

戦闘ペット紋も同様に、切り抜く。

決戦の準備は全て整った。

後は時を待つのみのなった。


午後11時半を回った。

ピコルとパピは、お互いの頬に、アバ家の奴隷紋を、糊では貼る。

戦闘ペット紋も同様に、糊で貼る。

宿屋の主人に気づかれぬよう、窓から外に出る。

暗がりを選んで、西門に来る。

そこで服を脱ぎ、革袋に詰める。

革袋は家と家の隙間に隠す。

ピーターに明日の早朝、革袋の回収を頼んであるという。

本当にパピは抜かりが無い。


パピ「俺が白ガウイ2体を引き付ける。

十分ひきつけたら叫ぶ。

それを合図に、ピコルはここから門までダッシュ。

良い?」

ピコル「分かった」

パピ「門からは出たら、振り向かずダッシュ。俺を待たないで。良い」

ピコル「分かった」


パピはそう言い残し、白ガウイの面前に飛び出す。

白ガウイはパピに気づき、

2体がパピを追い詰めようと、連携して迫る。

パピが「うぅーおー」と叫んだ。


合図だ。ピコルは西門へダッシュする。

何も考えなかった。直ぐに西門を抜けた。

パピを信じ、ダッシュを続ける。


パピが横に現れるまで、ピコルは不安だった。

パピを見た瞬間、大粒の涙が、ピコルの目からこぼれる。

パピに抱き着きたい衝動を抑え、パピと共にダッシュを続けた。

しばらく2人は走り続けた。


パピ「ピコル、少しゆっくり走って」

ピコルはパピの速度に合わせて走る。

振り向くと西門が小さく見える。西門では大騒ぎが起きていた。

門の上で篝火が大きく揺れていた。


4km程、小走りで走る。

橋に着いた。

パピは橋の袂に隠した酢の瓶を開け、橋一面に撒いた。


パピ「これは犬避け。犬で追跡されないようにね」


2瓶をまいたので、橋は酢の匂いで鼻が痛いほどであった。

パピは瓶を川に流し、始末を終えた。


橋から街道を300m進み、決戦の場に着いた。

パピはピコルに木に登り、マロの繭に隠れているように指示する。

ピコルはパピに抱き付き、長いキスをした。

こぼれそうになる涙を抑える。

そのあと、ピコルはパピの指示に、率直に従った。


遠くから犬の鳴き声が聞こえる。

今は0時30分。大きい方の月が、南中に近づいていた。

辺りは真昼のように明るい。

赤みを失った月の光で照らされた世界は、モノトーンの世界だった。

明るいのだが、寂しさに包まれていた。


パピは静かに立ち、決戦の時を待っていた。

少しづづだが、犬の吠え声が近づいてくる。


そんなパピをピコルが見つめる。

ピコルは両手を合わせ、祈る。誰でも良い。

私の願いを聞いてくれるなら。

どうかパピを守ってください。


さらに犬の吠え声は近づいてくる。

街道の先に火が見えるようになった。

黒ガウイ、青ガウイが持つ松明の火であろう。


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