20 海賊との会談
ピコルとパピは30分前には埠頭の広場に来ていた。
手紙にあった東のベンチも、確認できた。
まだ、会談には時間はある。ピコルは海賊との会談に向け、心を沈める。
パピとマロは周囲の状況を確認した。
まず、周りの人間を確認し、海賊か、無関係の人間か判別している。
海賊と思しき人間が持つ武器の種類を特定する。
次に緊急時の対応方法、退路の確認など、
事細かに打ち合わせしている。
普段はあんなにおおざっぱなパピなのに。
時間になると、急に東のベンチ付近の人がいなくなった。
同時に、西から男が2人、こちらに歩いてくる。
男はピコル達に声を掛けた。
男「パピ殿、ピコル様ですか?」
ピコルとパピは黙って頷く。
男「私は海賊団の副官です、シバンドと申します」
副官「こちらが我が海賊団の提督、アイスマンです」
提督「アイスマンだ。よろしく」
パピ「俺はパピだ」
ピコル「私はピコル。よろしく、提督に副官」
挨拶が終わり、4人はベンチに座る。
提督「早速だが聞きたいことがある。
パピはなぜ、海賊ラプマンを調べている」
パピ「俺は知らん。ピコルの望みだ」
ピコル「そう、私が知りたかった。海賊ラプマンは人の名前?」
提督「それも知らないで、探りまわてたのか?」
ピコル「そうだけど」
提督「分かるように説明してくれ」
ピコル「私は使いなの。神様の。
神様に命令された。『海賊ラプマンを救え』て。
神様はそれしか言わなかった。
私も情報不足で。海賊ラプマンが何なのか、知らない。
だから海賊を探して、教えてもらおうとした」
提督「与太話もいい加減にしろ。
神様の命令だと。
本当の事を話せ」
ピコル「本当の事を話している」
提督「じゃあ、証拠を見せろ」
ピコル「なぜ証拠がいるの?神を疑うのか?」
提督「困ったな。じゃあ、神様の名前を教えてくれ」
ピコル「ユニヴ」
提督「何の神様なんだ」
ピコル「この宇宙を創造した神」
提督「海賊ラプマンを救えなかったら、どうなる」
ピコル「さあ、私は知らない」
提督「もし、海賊ラプマンを殺すといったらどうする」
ピコル「神様に命令は『海賊ラプマンを救え』。
それを実行するまで」
提督「話が神となると、判断が出来ねえ。副官、どう思う?」
副官「え、私には無理です。提督お願いします」
提督「お前達、ガウイが懸賞金をかけた戦闘ペットの情報を持ってないか?
その情報と交換で海賊ラプマンの件を話しても良い」
パピ「知っている。ただし、其方が先に話せ」
提督「分かった。話そう」
提督は海賊ラプマンについて話してくれた。
海賊ラプマンは人名。
先代の提督の孫である。
人間の国の大学で学問を治め、港町ルフに戻ってきた。
ラプマンは航海士として、海賊になった。
海賊としての、ラプマンの最初の任務は、
人間の国で建造された新造船を、
港町ルフの沖にある海賊基地に、運ぶことであった。
ラプマンは新しい航海図と、彼が発明した磁石式方位計を使用していた。
だが新造船を、海賊基地に運んでいる途中、船が座礁した。
そして船は沈没する。
金貨45万枚の新造船をである。
今、彼は囚われ、牢獄で、弁明書を書いている。
今月、評議会で、彼の処遇を決めるはずだったか、
それどころではない、大問題が発生し、評議会は中止されてしまった。
もし評議会が行われていれば、
処遇は、ほぼ間違いなく死刑である。
ピコル「死刑は困る。救ったことにならない」
提督「評議会が決める。どうにもできん」
パピ「なら仕方ないな。海賊ラプマンは俺達で救う」
提督「できるつもりか」
パピ「さあ、でもやるだけだ」
提督「ラプマンについては話した。
戦闘ペットの情報を話せ」
パピ「ああ、戦闘ペットの情報は無い」
提督「騙したのか?」
パピ「騙していない」
その時、副官が何か合図をした。
近くの茂みから、パピとピコルに向け、矢が放たれた。
パピは異変が起きたたとき、即座に高速移動モードになれるよう準備していた。
パピは高速移動モードになった。
スローモーションで2本の矢が近づいてくる。
パピはその矢を軽くハタイた。
方向がずれ、矢は誰もいない方向に飛んでいった。
提督にはパピの動きが見えなかった。
パピが提督を睨む。
沈黙が流れる。
提督は誰かがピコルとパピを、殺害しようとしたことに気づいた。
何が起きたか、ようやく理解できた。
提督「知らなかった。信じてくれ」
パピ「この広場に、46人隠れてる」
提督「本当か? 副官」
副官「… はい」
沈黙がいた堪れない。
提督「副官、お前は下がれ。
そして隠れている連中も、全員だ」
提督の命令で広場で隠れていた人間、全員が立ち去った。
パピとマロも、立ち去ったことを確認した。
提督「これで、部下は誰も聞いてない。
改めて、俺の本心を話す。
ラプマンは殺さない。
絶対にだ。
囚人から解放する。
ただし、海賊の仲間には入れない。
人間の国に追放する。
これで『海賊ラプマンを助けた』ことになるか?」
ピコル「たぶん」
提督「良かった。
俺の全力でラプマンを助ける。
その代わり、海賊に手を出さないでくれ。
ただでさえ、ガウイの嫌がらせで、窮地なんだ。
ここで、お前達と戦争になると、海賊はもたん。
ガウイ奴ら俺達海賊が、戦闘ペットを保護してると思てる。
商船の出航を、3日も遅らせやがった。
商人の損失は莫大だ。
そのせいで、商人も俺達海賊を攻めやがる。
何とかしないと、商人との信頼関係が壊れる。
今、俺達は窮地なんだ」
パピ「お前達に嫌がらせをするガウイは、俺達で始末する。
だから、ガウイの件は心配いらない」
ピコル「え! 」
パピ「黒と青のガウイは始末する。
今、決めた」
パピは心配だった。
ピコルは心の奥で黒ガウイ、青ガウイを恐れていた。
その恐怖がピコルの精神に影を落としていた。
パピは繊細である。
ピコルの全てを観察し、理解していた。
パピはピコルの最善を行う。
もし、ピコルがダメと言っても、
パピは自分の判断で、
黒ガウイと青ガウイを、始末するつもりだ。
マロは提督に聞かれないよう、心話虫で話す。
マロ「今のパピは黒ガウイより強い。
黒ガウイと青ガウイであれば、間違いなく勝てます。
奴らは、しつこい性格なので、いつまでも諦めません。
どこかで、断ち切らないと」
マロの一言が、ピコルを後押しした。
ピコル「分かった。でも、しっか準備して。
良いわね」
パピ「分かった」
提督「お前らホントにやるのか。黒青のコンビだぞ。
兵隊1500人くらいでも勝てるかどうか。
そんな相手だぞ」
パピ「そうなのか?
兵隊は弱すぎるな」
提督「はは、弱いか。もし、本当に始末してくれたら、
海賊は一生、お前たちに敵対しない。
ラプマンも必ず助ける」




