表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彩の異世界転生  作者: 巴空王
18/44

 18 追手の影

東の広場での大道芸公演は今日で30回目。

既に5日前から、カオラン一座は公演のトリをまかされていた。

カオランの話では、金貨は既に250枚程溜まっている。

自由民となった日から1カ月で、

金貨200枚の目標は、既に達成していた。

不確実な世の中、金貨はいくら有っても困らない。

ピコルは、出来るだけ多く金貨を積み増してやりたかった。


ピーターは真面目に、毎日ピコルの前に顔を出す。

ただ、海賊の情報は得られていなかった。


ピーター「済まない。ピコル、パピ。昨日も、めぼしい情報は無かった」

ピコル「地道に探ってくれ。急がない」

ピーター「助かる。今は戦闘ペットの話題ばかりで、

他の情報が流れていない。

この話題が落ち着くのを、待つ必要がある」


ピコル「戦闘ペット?」

ピコルは気になった。そこで、ピーターに詳しい話を聞いた。


ピーターの話は以下であった。


 人間の裏社会に、賞金首が手配された。

 懸賞金を掛けたのがは、黒ガウイと青ガウイの2人組。

 今から25日前である。

 賞金首は戦闘ペット2名

 懸賞金は男に金貨500枚。

 女に金貨500枚。合わせて金貨1000枚

 居場所の通報のみで、賞金は支払われるという。

 15日前、懸賞金が、1000枚、割り増しされた。

 倍になった。

 もし、戦闘ペットを発見できれば、金貨2000枚が手に入る。

 裏社会はこの話題で、フィーバー状態となった。

 懸賞金が増額されてから、5件通報があった

 が、詳しく調べると、全て戦闘ペットではなかったという。


 戦闘ペットは左頬に赤い入れ墨。丸の中にAが刻まれている

 また胸の中央には、2本の槍を交差させた、黒の入れ墨がある。

 年齢は共に13歳。

 代官所に行けば、手配書の似顔絵が見れるという。

 ピーターも手配書を見たが、人間の男女という以外、

 特徴も何もないものだったという。


ピコルは話を聞き終えた。

懸賞金が掛けられたのは、自分とパピだと確信した。

女の直感である。

頬の入れ墨はアバ家の奴隷紋だ。ここはアバ家の領内。

港町ルフの住民の8割は、アバ家の奴隷紋が刻まれている。

しかし、戦闘ペット紋を胸に持つ者は、ここには居ないだろう。


奴隷紋も戦闘ペット紋も、今のピコルとパピには無い。

お陰で、賞金首の網に掛からなかった。

しかし、油断できない。

追われている限り、見つかる可能性はゼロではない。

しかし、どうして黒ガウイと青ガウイは、私達を追うのだろう。

賞金が掛けられた時期は、ピコル達が町に着いた直後であった。

アバ家から逃げ出した直後には、追われていた事になる。

ピコルは理由が知りたかった。


ピコル「ピーター。黒ガウイと青ガウイは何処にいるか分かる?」

ピーター「調べれば分かるけど」

ピコル「調べて頂戴。黒と青のこと。分かる範囲で」


ピーターを見送り、ピコルとパピ、マロは作戦会議をした。


パピ「金蔵から金貨を貰ったこと、怒てるのかな」


金蔵から貰った金貨は300枚弱。懸賞金から考え、ありえなかった。


ピコル「違う気がする。マロは?」

マロ「不明です。しかし、アバ家の城内に黒は何体いました?」

ピコル「黒はグリ、領主の2体しかいなかった」

マロ「グリは死亡。領主は城を出ません。

賞金首を掛けた黒は何処のガウイでしょうか」


情報が少ない。これ以上の議論は無駄だ。

ピーターの情報を待つことにした。


ピーターは優秀であった。

翌日には、ガウイの動向をきっちり調べて来た。


黒と青はガウイ族専用の宿に泊まっている。

宿を午後1時ごろ出て、どこかへ向かう。

代官所、町中、町を出て近隣の村に向かうこともある。

夜は宿に帰るが、時間は早い時もあれば、朝方の時もある。

ここ3週間、この行動を繰り返している。


ピコル「午後1時に宿に行けば黒青のガウイに会えるのか」

ピーター「たぶん」


ピコル、パピ、マロの3人で打ち合わせをする。

黒と青に心話虫を取り付けることに決まった。

ただ、マロの話では、心話虫はガウイ族の精神には入れない。

心話虫は対人間用で、ガウイ族用ではなかった。

ガウイ族の脳の構造は分散型で、

6個の脳が体各所に分散配置されている。

人間のように1局集中型でないと、

心話虫は精神系能力を発揮できない。

ただ、位置情報や、体のモニタリングは可能なので、

相手の現状を把握するには十分機能する。


ピコル「黒、青たちの宿までどれくらい掛かる?」

ピーター「15分くらい」

ピコル「今は12時半か。

間に合うな。黒青のガウイを見たい。ピーター。宿に案内して」


ガウイの宿に着き、外出するガウイから死角になる位置に隠れて、待つこと10分。

例の黒、青ガウイが宿から出てきた。

マロは心話虫を飛ばす。

マロ「心話虫の取り付け、成功しました」

ピコル「ありがとう。マロ。

奴らの行動を見張ってくれる」

マロ「了解です」


     *     *


遡ること15日前、

ギルとマントマは、代官である赤ガウイと打ち合わせをしていた。


ギルとマントマは、港町ルフについて即、裏社会に手を回した。

代官に、裏社会に通じる人間の情報屋を紹介させた。

その情報屋を通じて、

戦闘ペットに賞金を掛け、おびき出そうとした。

最初は、それなりに情報は集まったが、どれもガセで、

無駄足だった。

10日たった。

今では、ガセの情報すら集まらない状態になっていた。

ギル達は、追加の対策が必要だと感じていた。


最初に考えたのが懸賞金の増額である。

金額を2倍とした。

だが、策がこれだけでは物足りない。

ギル達は裏社会だけではなく、

表社会からも、有効な手立ては無いか考えていた。

そこで、港町ルフの代官の協力を仰ぐことにした。


ギル「戦闘ペットに懸賞金を掛けたが、情報が上がらん。

誰か匿っている。代官殿。心当たりはないか?」

代官「町中には人間の密偵を忍び込ませているが、

そいつらからは何も上がっていない」

ギル「個人とは限らん。組織もありうる。裏の組織とか」

代官「裏の組織?うーん、だとすれば海賊あたりか」

ギル「海賊?」

代官「表向きは商人や船乗りだが、裏では海賊。

そんな連中がいる。言うことを聞かん奴らだ」


ギルは考えを巡らしている。


ギル「マントマ。海賊は使えると思わんか」

マントマ「海賊を使って、戦闘ペットを巣穴からおびき出すのか」

ギル「成長したな。マントマ。正解だ」


ギル「代官殿。海賊を痛めつけても構わんか?」

代官「構わん。少しは言うことを聞くようになる」

ギル「表の商人達にも損害が出るが、問題ないか」

代官「期間を区切りたい。1カ月位なら目をつむる」


ギルは代官に提案をする。

密輸の取り締まりと言って、通常より、

商船や客船の出航許可を2日遅延させる。

裏から、出航許可の遅延は密輸の取り締まりではなく、

戦闘ペットの狩りだしが目的だと噂を流す。


代官「商人たちは困るぞ。大損だ。ははは」

ギル「それが目的だ。

表から、海賊に圧力をかける。

どうなると思う?

もし、海賊が戦闘ペットを匿っていた場合、

この状況で、戦闘ペットを匿っていられなくなる。

もし、海賊が戦闘ペットを匿っていない場合、

海賊は戦闘ペットを探して、密告するだろう。

どちらに転んでも、戦闘ペットをおびき出せる」


代官「さすが知恵が回るな。勅使命令状を持つだけはある」

ギル「お褒めに預かり光栄だ。代官殿」


ギルは海賊がどう動くか楽しみであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ