16 金貸し
今日はアズラン虫の駆除をして三日目であった。
ピコル「リンラ、今日で3日目、皆の大は確認した?」
リンラ「タロンとミーシャはオマルにさせて確認した。
次の日には2人共、太いのを出した。
カオランも出ったって。
私はその日、出なかったんだけど、次の日には出た」
ピコル「じゃあ、次の薬を飲んでもらう」
ピコルは4人を集め、水筒に入れた水を飲んでもらう。
水筒にはマロのマイクロマシン薬を少量入れておいた。
結果は明日、話すと伝えた。
いつもの様に大道芸を披露する。
パピは、東の広場のスターに成っていた。
カオラン一座の公演が終わると、
10人前後の女性が、パピの体を撫でに来る。
町の女性に撫でられるのは、男性スターの証だという。
ピコルは、自分の機嫌が悪くなるのを感じる。
焼きもちを焼いても仕方ないが、自分ではどうしようもない。
今夜の宿は、カオラン達と同じ宿にした。
ただし、カオラン達4人と、ピコル達は別の部屋を取った。
ピコル達は宿を抜け出し、金貸しの始末に向かう。
まづ、雑貨屋へ行った。
背負子2つと革袋、硬貨用袋を買った。
次に、ピーターのねぐらに向かう。
ピコル「ピーターのねぐらに寄って、ピーターを連れ出す。
ピーター居るかな?」
マロ「居ます。それに我々が来るのを知っています」
ピコル「ホント?」
マロ「虫の知らせです」
なぜか、ピーターは待っていた。
ピーターに本日の計画を話す。
ピーターは最初、ビビッていたが、
パピに一括されると、以降は積極的になった。
ピーターは、もう完全にパピの子分であった。
ピコルの背負子をピーターに渡し、4人で金貸しの事務所に向かう。
金貸しの事務所の、ドアの前の門灯は、灯っていた。
マロ「事務所のドアから入って、問題ありません。
鍵は開いています。
ただし、声を出して話すのは無しで」
4人は、事務所のドアを開けて、中に入る。
ドアの横の机の上に、ランプが置いてあり、ランプは灯った状態だった。
マロ「ランプを持って、正面の事務室に入ってください」
事務室の扉の鍵も開いていた。
事務室には、金庫室に通じる扉があった。
この扉の鍵も開いていた。
金庫室に入ると、鉄で補強された木の金庫があった。
この金庫の鍵も開いていた。
どうやったか分からないが、マロの手配であることは、
マロの話しぶりで分かった。
金庫の中には、証文の束と帳簿、金貨があった。
ピコル「証文はこの革袋に入れて。
金貨は硬貨用の袋に入れて、背負子の袋に入れてね」
ピコル、パピ、ピーターは手分けして作業する。
10分程で、作業は終わった。
マロの手配は完ぺきだった。
4人は何事もなく、証文と金貨全てを貰い、金貸し事務所を後にした。
ピーターのねぐらに帰る途中、焚火をして夜を過ごす、浮浪者に会った。
丁度いい。手間が省ける。
ピコルは、焚火で証文を焼くことにした。
ピコル「オジサン、焚火に紙をくべていいかな」
浮浪者「かまわん。廃材も集めるのに苦労する。助かる」
ピコルは、証文の束を焚火にくべる。
証文はけぶることなく、燃えていく。
完全に燃えきった事を確認した。
ピコルは銅貨を3枚取り出し、礼として浮浪者に渡した。
今夜の仕事は完了した。
ピコル達は、ピーターをねぐらまで送る。
ねぐらの前で、
ピコル「この金貨はピーターが預かって」
ピーター「僕が? 持ち逃げが心配じゃないの?」
パピ「持ち逃げするのか?」
ピーター「しない」
パピ「だったら、無駄な事、聞くな」
ピーター「はい」
ピコル「私たちが、こんな沢山の金貨を持ってたら怪しいでしょ。
ピーターのねぐらに、隠しておいて」
ピーター「分かりました。お任せください」
パピ「お前、数、数えれるか?」
ピーター「できます」
パピ「金貨の枚数、数えとけ」
ピーター「はい」
ピーターがねぐらに入るのを確認し、宿に帰った。
時刻は午前2時を回っていた。
ピコルは眠かった。
部屋に入ると同時に、パピの服を脱がせ、自分も服を脱ぐ。
公演が終わった後、パピを撫でに来る女達が憎らしかった。
その思いを振り払おうと、パピに抱き付き、甘えた。
パピは私のもの。パピは私のもの。
そう念じながら、眠りに落ちていった。
目を覚ますと、パピに体を撫でられていた。
パピは。優しく体を撫でてくれる。
次第に気分が高揚していく。
時は朝か。まだ朝早い時間の様だ。楽しむ時間はある。
ピコルは体を開いていく。
パピはピコルを十分満足させてくれた。
幸せな気分だった。
今日1日、この幸せな気分が続きますように。
そう願って、朝の支度に取り掛かった。
朝食はカオラン達と一緒に取った。
マロから、4人のアズラン虫の検査結果が、報告されていた。
朗報であった。
ピコル「4人の検査が終わった。
朗報だよ。
4人共、アズラン虫はいなかった。
今日から自由民だよ」
カオラン「自由民か。嬉しい。今夜はお祝いにしよう。
公演が終わったら、奴隷用の下級食堂じゃない、普通の食堂に行こう。
そしてお祝いしよう」
リンラ「そうだね。お祝いしよう。
奴隷に落ちてから、
お祝いなんて、もう一生無いと思ってたよ」
タロン「飯いっぱい食えるなら嬉しいぞ」
ミーシャ「甘いもの食べたい」
カオラン「ピコル、パピ。一緒に祝ってくれ」
ピコルとパピもお祝いに参加することになった。
公演が終わり、カオラン一座は早めに、東の広場を引き上げた。
カオランが目を付けていた、食堂でお祝いをした。
カオラン「ピコル、パピ。
2人に会ってから、俺達の運が上がった。
この10日で、本当に夢のようだ。
文無しの奴隷から、自由民に成れた。
感謝する。
感謝ついでに、お願いがある。
後1か月、俺達と一座を組んでくれ。
厚かましいお願いだが、頼む」
ピコルは、港町ルフでの、ユニヴの意思を達成していない。
大道芸人一座は、都合の良い隠れ蓑だ。
パピの意見は聞くまでもない。
ピコル「パピさえ良ければ」
パピ「俺はピコルと一緒」
カオラン「これで目途が立った」
カオランは嬉しそうに、
これからのことを説明してくれた。
カオランとリンラは結婚する。
そして、タロンとミーシャを、養子として育てる。
本人次第だが、将来、タロンとミーシャは結婚させる。
ガウイの国は危険が多い。
もっと安全な国で生きたい。
ここで、1カ月公演すれば、金貨200枚は稼げる。
その金を元手に、人間の国で商売を始める。
ピコルは、カオラン達を応援したかった。
希望に満ちた話は、気分を幸せにする。ハビアロンでもそれは同じだった。