15 情報屋
突然、マロがピーターの危機を知らせてきた。
東の広場で、大道芸を練習しているときであった。
マロ「ピーターが、誰かから逃げています。
ピーターの行動を分析しました。
現在、ピーターは逃走しています。
救助しないと多分、捕まります。どうしますか?」
ピコル「危険なの?」
マロ「はい。危険です」
ピコル「パピ、聞こえた?」
パピは頷いた。
ピコルは助けようと決断した。
パピ「俺、先に行く。ピコルはゆっくりで良いから」
そういうと、パピは走って、行ってしまった。
ピコルはカオランに事情を話した。
ピーターの位置、パピの位置はイメージとして見える。
マロが心話虫を通じ、ピコルに届けてくれた。
ピコルはパピの後を追った。
マロ「ピーターを追っているのは3人です。
ピーターは逃げていますが、
へばってきています。
もうじき、追いつかれます」
ピコル「パピ。聞こえた?」
パピ「聞こえた」
ピコル「パピ。相手は殺しちゃダメ」
パピ「何で?」
ピコル「殺すと面倒だから。殺さないで、動けなくできる?」
パピ「分かった。そうする」
パピは、ピーターの手前200mにまで、近づいていた。
パピにはピーターが見えなかったが、
マロが提供してくれるイメージで、ピーターの場所は分っていた。
パピは走りながら、地面の砂を手にすくう。
ピーターは3人に追い詰められ、立ち止まってしまった。
その場で、ピーターと3人組はにらみ合いになった。
その時、パピは50mまで、迫っていたが、
路地の障害物が邪魔で、まだ、ピーターは見えなかった。
パピが路地を曲がった時、初めてピーター達が見えた。
3人がナイフを抜き、ピーターを威嚇している。
パピはもう、10mまで迫っていた。
パピは大声を上げる。
パピ「おい! 」
パピの声に驚いた3人組は、振り向く。
パピはさらに、ピーターを囲む3人に距離を詰める。
至近距離から目に砂をぶつけた。
砂は3人の目に正確に命中する。
3人共、手で目を抑え、うめき声を上げた。
パピはピーターに「来い。逃げるぞ! 」
もう、3人組はピーターを襲える状態ではなかった。
パピはピーターを連れて、ピコルの元まで走ってきた。
ピーター「助かった。ありがとう」
ピコル「もう走らなくていい。
歩いて行こう。走ると目立つから。
東の広場まで帰る。ピーターも付いて来て」
ピコルは歩きながら、ピーターから事情を聴いた。
ピーターはアイナの借金を返しに、金貸しの店に行った。
借金を返済し、金と証文を引き合えた。
店から戻る途中、誰かが後を付けてくることに気づく。
ピーターは追跡者をまこうとするが、まけなかった。
怖くなり、逃げ回っていた。
ピコル「また変な奴に追われると怖いだろう。
ピーター、今日はカオラン達と一緒にいよう」
ピーター「ありがとう。そうさせてもらう」
ピコルは、ピーターを襲った3人が何処に帰るか、気になった。
マロに、3人が向かう場所を探れないか、聞いた。
マロ「できます。
3人を監視します。
何処に向かうか分かったら教えます」
ピコル「ありがとう。マロ」
大道芸の練習が終わり、本番までの休憩中に、
マロが、例の3人組の行き先を、報告してくれた。
3人組は金貸しの事務所に帰ったそうだ。
絵にかいたような展開であった。
彩は、時代劇の印籠や桜吹雪が出てくるやつ、を思い出す。
典型的な悪徳業者。代官なんかとも繋がっていそう。
ピコル「ありがとう、マロ。まあ、諦めてくれればいいか」
マロ「いいえ、諦めていません。
金貸しの女主人が3人に命令してました。
明日、またピーターを襲えと」
ピコル「ひつこいなー」
ピコルは、後でゆっくり考えることにした。
今日も、カオラン一座の芸は受けた。
公演が終わった後、カオランから今日の宿について申し出があった。
カオラン「今日の宿だけど、俺達4人は別部屋に泊まる。
2人は別に部屋を取ってほしい」
ピコルは『え!』と思い、理由を聞こうとした。
パピ「ああ、いいぞ。楽しめ」
パピが先に答えてしまった。
まあ、良いか。ピコルはパピに従おうと決めた。
ピコルは明日の打ち合わせを終え、カオラン達4人と別れた。
ピコル「パピ、どうしよう。宿」
パピ「俺は野宿で良いぞ」
ピコル「ピーター、何処かいい宿教えて」
ピーター「食事とか出せないけど、寝るだけなら僕のねぐらでどうだい。
汚くは無いと思うよ。広さも十分だし」
ピコル「どうする。パピ」
パピ「ピコルが決めて」
ピコル「ピーター、お願いします」
ピーターのねぐらは、倉庫の天井裏であった。
出入りするには、倉庫の壁を上り、屋根まで上る必要があった。
屋根には小さな明り取りの窓があり、
その窓から出入りする。
天井裏の床には下に通じる扉がるが、
今は、その扉は倉庫の荷物が邪魔して、出入りできない。
ピーターの性格だろうか、天井裏は清掃、整理整頓がなされ、
ピコルが泊まっていた宿と、遜色なかった。
ピコルとパピには、藁ベットを貸してくれた。
ベットは小さな窓の前に藁を敷き、シーツを被せたものだが、
暖かく眠ることができた。
ピコル「ピーター、泊めてくれてありがとう」
ピーター「どういたしまして」
ピコル「昨日の3人組、まだピーターを狙ってる」
ピーター「そうか、気を付ける」
ピコル「暫く隠れることできない?」
ピーター「僕の仕事は便利屋なんだ。隠れていては商売にならない」
ピコル「3人組はアイナに金を貸した金貸しの手下。
ピーター。何か恨まれることやった?」
ピーター「僕はアイナの借金を返しただけ。それだけだよ」
パピ「ピコル。悪党がやる悪事の理由なんか、考えるだけ無駄」
ピコルは、自分の考えの方向が間違っていることに、気づく。
ありがとう、パピ。
取りあえず、ピーターには例の3人を警戒するよう言い、
カオラン達との待ち合わせ場所に行く。
一宿の恩義がある。
ピコルは決めた。金貸しへの対処に協力しよう。
嫌がらせなど、していられない様にすれば良いだけだ。
金庫から金貨が消えれば、ピーターどころではないはずだ。
東の広場までの道中、
ピコル、パピ、マロの3人は今夜の計画を練った。
東の広場にはカオラン達は到着し、芸の練習をしていた。
パピ「カオラン、リンラ。昨日は楽しめた?」
カオラン「あ、ああ」
カオランとリンラの顔が赤い。
ミーシャが小声で、ピコルに教えてくれた。
ミーシャ「夜、カオラン兄ちゃん、リンラ姉ちゃんに乗っかった。
だからリンラ姉ちゃん、今日、機嫌が良い」
そうか、パピは知っていたのか。
ピコル「パピはカオランとリンラのこと知ってたの?」
パピ「ツガイのことか。リンラが匂い出してた。カオランに向けて」
ピコル「匂い?」
パピ「ピコルも出す匂い。ピコルがやりたい時」
ピコル「私が匂いを出すの?」
パピ「え! ピコル知らなかったのか」
ピコル「…」
パピ「俺、兄達から教わった。
匂い出した時には必ずやる。やらないのダメ。
匂い無い時にやるのはダメ。絶対」
いつもパピが体を求めてくると思っていたが、逆なのか。
私からパピを誘っていたとは。
パピは紳士だったのか。