12 大道芸人
ピコルは野営地で目を覚ました。
もう、日は上って、辺りは明るくなっていた。
ピコル達は4人組に招待され、
カオラン一座の野営地で1泊した。
昨夜の大道芸の公演は成功だった。
まづ、ピコルの歌が好評で、聴衆を確保できた。
最後にパピが披露した曲芸は拍手が鳴りやまず、
3回のアンコールを行った。
カオラン一座も、3回のアンコールは初めてだったと、
言っていた。
投げ銭の合計は銅貨135枚。
カオラン一座の金銭問題も、ひと段落ついた。
カオランからは感謝された。
リンラとミーシャ、ピコルは近くの川に、
水浴びに来ている。
旅の前に、体の汚れを落とすことにした。
カオラン、タロン、パピの3人は来なかった。
まだ寝ている。
彼らは、昨日、水の妖精とケンカしたとか、
水に入ると体が溶けるとか言って、
水浴びを断った。
水浴びが終われば、西に向かって出発である。
女3人が水浴びから戻ると、男3人は荷物を纏め、
何時でも出発できる状態に、
荷造りを済ませてくれていた。
うららかな日差しのもと、
大道芸人6人は街道を西に進む。
ピコルは歩きながら、彩が好きだった曲を皆に披露した。
練習になるし、大道芸になるものがあるかもしれない。
歌って分かった。
自分の知っている歌は、ほぼアニメソングだった。
映画やテレビで聞いた曲ばかりだった。
〇ーラームー〇の主題歌は、おちびさん2人には好評で、
何回もアンコールで歌ったものだから、
2人は、日本語で歌えるようになってしまった。
昼を少し過ぎたころ、次の村に着いた。
この村の規模が小さく、大道芸を演じる場所がない。
村では雑貨屋でパンなどの食料を調達しただけで、
通過した。
夕暮れになり、今日は野宿することになる。
カオランは、街道の左側に場所を見付け、皆を案内した。
街道は海に近づいている。
夜になると、山側から海側に風が吹く。
街道の左側であれば、焚火の匂いが、
街道に漏れることが無い。
夜、街道を進む者に、
野営を気づかれない為の知識である。
食事を終え、皆で雑談をした。
雑談で判ったことだが、彼らには血のつながりが無い。
カオランは人間の国で幼少を過ごした。
家は商家で豊かであった。
音楽は家庭教師から学んだという。
商家が破産し、空白地帯に逃げたが、
そこで捕まり奴隷となった。
奴隷として、大道芸人の元締めに売られた。
顔に奴隷紋が無いが、奴隷薬で縛られている。
通常、元締めは大道芸人を奴隷薬で縛るそうだ。
リンラは人間の国で暮らしていたが、人攫いに攫われた。
空白地帯の奴隷商に売られ、
その奴隷商が大道芸の元締めに売った。
タンバリンはカオランから教わった。
タロンとミーシャは、どのような経緯で奴隷になったか、
記憶がない。
しかし、全員が奴隷薬で奴隷とされている。
パピ「逃げることは出来ないのか」
カオラン「奴隷薬を飲まないと、3カ月で死ぬんだ。
だから、俺達は2カ月間、ガウイ王国で公演をして稼ぐ。
1人あたり金貨2枚。
それだけ稼いだら、元締めの所に行く。
元締めから奴隷薬を金貨2枚で買う。
それを死ぬまで繰り返さないといけない。
来月の20日までに、
4人で金貨8枚稼がないとダメなんだ」
ピコル「奴隷薬を盗めないか」
カオラン「詳しい仕組みは分からないが、
ほかの奴隷主が作る奴隷薬は、俺達には効かない。
元締めの作る奴隷薬でないとダメだ。
元締めの作る奴隷薬は、奴隷主の血から作るそうだ」
袖すりあうも多少の縁。
ピコルはカオラン一座に同情した。
ピコル「マロ、聞いた。奴隷薬の仕組みを解析できない」
マロ「はい。マイクロマシン薬を少し飲ませれば、
解析できます。誰か1人に飲ませてください。
今から飲ませれば、明日の朝には終わります」
ピコル「どうやって飲ませよう?」
マロ「カプセル作ります。それを口移しで」
ピコル「キスで良いの?」
マロ「はい」
マロにはカプセルを作ってもらった。
ピコル「ミーシャ、おいで、この子がキスしたいって」
ピコルはマロを手に乗せて、ミーシャを誘う。
ミーシャは笑顔で、駆け寄ってきた。
目を閉じ、唇を尖らしてくれた。
ピコルは、マロをミーシャの口に近づける。
マロはミーシャの口の中に、カプセルを送り込んだ。
カプセルは一瞬で溶け、
マイクロマシン薬はミーシャに侵入していく。
ピコル「ありがとう。ミーシャ」
ミーシャ「名前あるの?」
ピコル「マロだよ」
ミーシャはマロを撫でながら「どこで捕まえたの」
ピコル「捕まえたんじゃない。最初から居たの」
ミーシャ「そうなんだ」
マロをきっかけに、ピコルとミーシャの話が弾む。
楽しい会話が30分ほど続いた。
タロン「もう寝るよ。ミーシャ」
ミーシャはタロンの元に帰っていった。
タロンはミーシャを抱いて、
ミーシャはタロンに抱き着いて眠る。
ピコルはいつもの通り、
パピに抱かれて眠ろうとしていた。
しかし、眠れない。何か引っかかる。
そうか「ユニヴの意思」だ。
久々に「ユニヴの意思」を確認した。
<西へ行け>
<港町ルフに行け>
<海賊ラプマンを助けろ>
2行追加されている。
港町ルフは西への進路上の町だ。
問題ない。
港町ルフで海賊ラプマンを助けろ。
ラプマン?人の名前か?
まあ、行けばわかるだろう。
次の日、西に向け、街道を進んでいると、
マロが話しかけてきた。
マロ「ミーシャの解析結果が出ました。報告します。
ミーシャの腸壁にアズラン虫が寄生していました。
2匹います。
これが奴隷薬の正体です。
アズラン虫は約3か月で幼生から成体になりますが、
宿主が人間の場合、成体に成れず、
毒を放出して死にます。
この毒で人は死にます。
この寄生虫は厄介なことに、
ストレスを受けるだけで、毒を出します」
ピコル「アズラン虫はマイクロマシン薬で除去できる?」
マロ「できません。
マイクロマシン薬で除去しようとすると、
ストレスで毒を放出します」
ピコル「何かいい方法は無いの?」
マロ「アズラン虫の生態が不明です。
今から研究する方法も考えられますが、悠長すぎます。
困ったときは、ポルポ軍曹に頼むしかありません」
ピコル「ポルポ軍曹なら解決できるの?」
マロ「はい」
ピコル「じゃお願い。頼んでくれる。
でも期限があるの。来月の20日」
マロ「了解です」
ピコル達とカオラン一座は午後、
早い時間に3つ目の村に着いた。
今日は、この村で興行をすることを決めた。
6人は中央広場で、大道芸の練習を始めた。
広場にはかなりの人数がいて、練習を見物していた。
それが良かったのだろう。
夜からの本番では大盛況であった。
その人出をあてにしてか、普通、夜は閉まるはずの商店が、
臨時で営業している。
今日の投げ銭は銅貨162枚に上った。
投げ銭に加え、商店から葡萄酒とパン、
チーズの差し入れも頂いた。
カオランとリンラは、
いつもより2倍の稼ぎと喜んでいる。
6人は意気揚々と、今日の野営地に引き合上げて来た。
初めて酒を飲んだせいか、
ピコルは体が火照って仕方なかった。
いつもならすぐ寝てしまうパピも起きている。
パピは優しくピコルを撫で始める。
パピがピコルの体を求めてきたことがわかる。
ピコルは率直に従おうとする。
しかし、彩は恥ずかしくて、抵抗した。
だって、だって、真横で、
タロンとミーシャが頬杖をつき、
タロンなんか、目を爛々とさせて、見てる。
ミーシャもだ。
パピは、彩が抵抗しても、お構いなしに攻めてくる。
カオランとリンラも起きている。
ただ、知らないふりを、してくれている。
彩は抵抗を諦めた。
戦闘ペットの姉兄は弟妹に何も隠さない。
見せて教育する。
ピコルもパピもそうして育ってきた。
2人にとって、見せるのは当たり前のことなのだ。
彩は夢にも思わなかった。
まさか、自分が、性教育の教材を務めるとは。
タロン、ミーシャ。じっくり学んでくれ。
これは楽しいぞ。早く大きくなれ。
次の日、一緒に歩いていると、
ミーシャが小声で聞いてきた。
ミーシャ「ピコル姉ちゃん、昨日、パピ兄ちゃんに、
乗っかられて、痛くなかった?」
ピコル「ううん。気持ち良かった」
ミーシャ「そうなんだ。重くなかった?」
ピコル「ううん。とっても、気持ち良かった」
ミーシャ「気持ち良いのか。
タロン、私に、乗っかって、くれないかな」
ピコル「うーん、少し先かな。6年くらい」
ミーシャ「そんなに先か。つまんないなー」