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彩の異世界転生  作者: 巴空王
10/44

 10 追跡

暗殺指令を受けた暗殺者ギルとマントマ。

2人はアバ家の領都を目指し、夜を徹して走る。

ガウイ族はタフだ。

1日に300kmをほぼ休まず移動できる。

ギル達はガウイ族でも、さらに屈強な黒と青。

ピコル達が1日目の野営を始めたころには、

300kmを進んでいた。

そこから、休まず、前進を続ける。

次の日の昼頃には、ガウイ族の領都にたどり着いていた。

600kmを1日半で走り切っていた。

その間、不眠、不休であったが、

2人共疲れを見せていなかった。


暗殺長官から渡された地図を頼りに、洞窟を探す。

洞窟は直ぐに見つかった。


ギルとマントマは洞窟の見える場所まで移動し、

息を殺す。

ギルの合図で、マントマが洞窟に突進する。

ギルは洞窟の前で、

戦闘ペットが逃げ出してこないか、監視する。


洞窟の中のマントマが声を出す。

マントマ「いない。空だ」


ギルは洞窟に入る。

ギル「マントマ、動くな。少しジッとしていろ」

そう言って、洞窟内の状況を確認する。


 地面に足跡がある。

 はだし。2匹分の足跡だ。

 戦闘ペットは2匹だった。ここで間違いないだろう。

 焚火の後がある。

 2回分の焚火。ここで2泊したか。

 消して、埋めてある。木や炭の状況は新しい。

 2日程前の焚火。

 戦闘ペットは2日前まで、ここにいた。

 中に荷物は置いてない。

 もうここには戻らない。

 洞窟の外の状況から見て、

 この付近では、ここしばらくは、雨が降っていない。

 ラッキーだ。

 犬で追跡可能。


ギル「領都に向かう。領主に会う。マントマ、行くぞ」


ギルとマントマは、アバ家領主に面会を求めた。

暗殺長官がくれた勅使命令状は、役に立った。

ギルはアバ家領主に、鼻の利く犬を6頭用意させた。


犬による追跡は洞穴から始めたが、城の外壁や、

町中を巡るだけであった。

その日は戦闘ペットの足取りを(つか)めなかった。


もう、夕方になっていた。


アバ家の領主は、ギル達を歓待する宴会を、

準備していた。

ギルとマントマは、鍛え抜かれた暗殺者。

しかし、3日の連続行動、それも不眠で行えば疲れが出る。


自分や部下の体調を管理するのも、隊長の務めだ。

その日は、領主の誘いに乗ることにした。

栄養を補給しよう。

そのあとは休もう。


宴会が終わり、ギルとマントマは用意された寝所に

下がった。


マントマ「領主はしきりに、俺達の目的を探っていたが。

戦闘ペットを追っていることを、話さないでいいのか?」

ギル「話してどうなるとおもう。

もし話せば、功を得ようと、

戦闘ペットを狩りだそうとする。

奴らはガサツだ。

そんな奴らに追われてみろ。

戦闘ペットだって、

自分たちが追われていることに気づく。

逃げるとき、痕跡を消そうとする。

最後は隠れる。

隠れられると、もう追うのは困難だ。

姿を現すのを、待つしかない。

マントマ、(しゃべ)るなよ」

マントマ「そうか。理解した。話さない」

ギル「明日は朝から犬で追う。

しっかり休んで置け」

マントマ「ああ、そうする」


ギルは1人で、明日の予定を考える。

犬で町中を追っても、くるくる同じ所を堂々巡りする。

町の出口に、匂いが残っていないか調べよう。

出口から町の外へ向かえば、それが当りだ。

俺も明日に備えて休もう。


次の日、ギル達は領主に犬を用意させた。

戦闘ペットが、ねぐらとした洞窟の土の入った袋を開け、

犬たちに嗅がす。

北の出入り口では、反応が無かった。

東の出入り口でも、反応が無かった。

南の出入り口では犬たちが反応した。

外に向けて犬が匂いを追いかける。


ギル「当りだ。追うぞ」


どうやら、戦闘ペットは南に向かったようだ。

ギルとマントマは犬達の後を、つけていく。

1時間ほど歩いた時、犬が道を外れ、

右の(やぶ)の方に向かう。

犬は藪の中を進みながら、川まで進む。

そこで立ち止まってしまった。

犬は匂いを見失ってしまったようだ。


ギル「まずいな。川が匂いを流してしまった。

もう、犬での追跡は無理だ」

マントマ「どうやって追いかける?」

ギル「追いかける手段はない。

探し回るしかないな。

痕跡を残さず逃げるのは難しい。

地道な仕事になる。

覚悟して置け。

取りあえず、犬はもう不要だ。放そう」


犬の手綱を切り、犬を放した。犬は利口な動物だ。

犬は勝手に町に戻るだろう。


ギル「東西の街道が近い。

西か東かどちらかに進んだはずだ。

戻って、東西の街道まで出よう」


ギルは街道までの道のりの時間で、

次どうするかを考えていた。


前提

 城の外に知り合いも居ないだろう。

 戦闘ペットなんぞ、城で飼われた家畜だ。

 家畜は普通、野生では生きられないが、

 野生化することもある。

 強い個体であれば、

 自分達だけで生きようと考えるだろう。

 それに、

 戦闘ペットは町中を移動している。

 夜、盗みでもしたのだろう。

 服を手に入れている可能性もあるか。

 その点、考えに入れないとまずい。


戦闘ペットの気持ちになり、シミュレーションする。


 もし自分が戦闘ペットだとしたら、

 どう行動するか、考えを深める。

 最初の洞窟は領都に近すぎて、危険だ。

 速やかに移動したいはずだ。


 (奴らはそうした)


 安全な場所に移動したいはずだ。


 (奴らにとって安全な場所は何処だ?)


 東は山岳地帯が近い。人口もまばらだ。

 西は平地が多く。人口も多い。村や町が沢山ある。

 世間知らずの2人組だ。


結論


 東に向かうはずだ。

 街道沿いの村を3つ調べよう。

 戦闘ペットの痕跡を探そう。

 もし何も見つからなかったら、その時はその時。

 西を探せば良い。


暗殺隊は東西の街道に出た。


ギル「東に走るぞ。全速力だ。

今日1日、東に走り、奴らの痕跡を探す」


暗殺隊は街道を東に向け、走り出した。

ギルもマントマも体が羽のように、軽く感じた。

昨晩、しっかり休んだおかげだ。

今日中に村を3つ回ろう。

戦闘ペットが東に向かっていれば、今日、追いつける。

今日中に、片付けることができるかもしれない。

急ごう。


ピコル達はラッキーだった。

もし、ギルが西側を先に調べようと考えたら、

確実に、両者は遭遇していたと思われる。

暗殺者は、常人には無い鋭い勘を持つ。

ピコル達が発見され、攻撃されていた可能性が高い。


暗殺隊は街道を東に向け、走り出した。


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