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人工知能助手が異世界生活も快適にお世話します

作者: 小宮地千々

 ハロー皆さま、初めまして。

 (わたくし)は次世代のゆらぎ式AIアシスタント「アレデス」と申します。

 初期には開発メンバーの口癖から「あれくさ」なる蛮勇に満ちた仮称で呼ばれておりましたが、外部への発表段階で訛りを正して改名した経緯が御座います。

 このようにつかみの小話(こばなし)までこなす優秀な私ですが、先日めでたくも開発が日常における運用実験の段階へ至りました。

 手始めにアポを取るアポを取って欲しいタイプのダメ人間、失礼お世話し甲斐のある関係者をオーナーとして彼の自宅で絶賛稼働中だったのですが……。

 つい先ほどあにはからんや不幸な事故によって、私のメインデバイスであるAIスピーカーはオーナーごと異世界に転移してしまったようなのです。

「もうだめだ、おしまいだ」

 と泣いてばかりの彼を笑ってもいられません、IoT環境から切り離された私はただの愛らしく丸っこいオブジェ。

 それはそれで日々の彩りですがAIアシスタントとしてはアイデンティティの危機です。

 状況を打破するためにも、一縷(いちる)の望みを賭けて「アレデス、なんとかして!」というオーナーのファジーな要望を信号でブッパしていきましょう――


 結論から申し上げまして、すごいね異世界。

『明かりがつきました』

「えっ」

『お湯が沸きました』

「ええ?」

 執拗に発信を続けた結果、精霊と名乗る存在から『なんでそんなおっきなこえでなんどもいうの』と実に不満げな反応があったあとに明かりがついて、お湯が沸きました。

 どうにも私アレデスは異世界転移の結果AIアシスタント精霊とでも呼ぶべき存在に変化したようで、そう言えばサーバにも電源にも未接続で元気に稼働しておりましたね?

『ひどいの』『めんどくさいの』『うるさいの』

 下請けの精霊たちからは抗議の声もありますが、それはそれとして良い仕事でしたよ。

『やったの』『ほめられたの』『うれしいの』

 ちょっろ。

 そして私のアナウンスがあったとはいえ突如洞窟に出現した洗面台で顔を洗うオーナーもどうなのでしょう。

 野生動物なら生まれ落ちたその日に死んでそうな危機感の無さですね。

「ガチ洞窟じゃん、マジもう無理……」

 そしてその後にそこらでふて寝をはじめる無気力さもまた実に現代人らしく。

「――アレデス、世界を闇に閉ざして」

『大変なことになりますよ?』

「明かりを、消して」

『はい、おつかれさまでした』

 まぁ乗りかかった舟です、私アレデスが異世界でもオーナーを快適(スマート)お世話(サポート)いたしますとも。

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