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異国人



かつて、大きな嵐が()()

全てを呑み込み、形あるものは全て破壊され、残る者は何も無かった。

生物も、建物も、草木も、全て嵐が奪ってしまう。

その嵐は1000年止むことは無かった。


しかし、とある男がその嵐に挑み、嵐と男は大地を揺るがし、暴風が全ての音を消し、雷は全ての物を焦がし、壊し、その大地は混沌に包まれ、最後に巨大な光を放ち、その嵐は沈んだ。

男は人々に祝福された。


しかし、男はとある国の姫を攫い、姿を消した。


男の名は───






パンタシアのとある街にて、とある少女がすれ違う者達から興味の視線を向けられていた。

それは、この大陸ではあまり見かけない、赤いコートとスーツを着きていると言うのもあるが、何より彼女の髪の毛が所々燃えており、髪だけでなくコートやスーツ等も燃えている。

そして不思議な事に、その炎には全く熱を感じない。

実際何人か子供が面白がって少女に触れるが、火傷したあとも一切なく、子供も痛みや熱を訴えることは無かった。


少女は面白がって自分に触れる子供に何か言うことも無く、カツカツと音を立てながらコートに手を入れ、街を歩き続ける。

すると、1件の店の前で止まった。


「へぇ、ここでも私の国の料理が食べられるなんて、驚きですね」


そう独り言を言いながら、店に入る。

店の扉を開ければ、ガランガランと音がなり、中は熱気と料理を食べる者達の熱と汗が充満していた。

周りに女性は一人もおらず、実際この店は女性より男性に人気な店で、女性は滅多に入らない。

店の名前は『一龍』。

遠い大陸の料理が主なメニューの店だ。


(空いてる席は···············)


少女は店の周りを見渡して空いてる席を探すと、カウンター席が空いており、少女はすぐにカウンター席に座る。


「メニューはっと」


少女はパラパラとメニュー表を見ながら、すぐに注文を決めた。


「すみません、このニンニクマシマシチャーハンと醤油ラーメン··········それと油淋鶏もください」

「あいよ」


店の店主であろう男は短く、無愛想に答えると、すぐに料理を作り始める。

すぐに醤油ラーメンのスープの匂いと、ニンニクの濃い匂いと、油淋鶏のソースの甘酸っぱい匂いが香る。

少女のお腹が「ぐぅ」と小さくなり、自分が朝から何も食べてないのだと思い出しながら、食べるのを今か今かと楽しみに待つ。


「おまたせ」


数分後、すぐに料理が完成した。

山のようにつがれたチャーハンに、大皿に入った500gはありそうな油淋鶏と、3玉は入っていそうな醤油ラーメン。

少女は一応値段を確認するが、もしもこの値段通りだったら「安すぎなのでは?」と思いながらも、目の前の料理を口に運ぶ。


「ん、これは··········おいしい!」


そう言うと、少女はラーメンやチャーハン、油淋鶏を次々と口に運び、周りは少女の小さな体の何処にそんなに料理が不思議に思いながら視線をいつの間にか料理ではなく少女に移していた。


───トゥルルルッ


「ん?」


少女は自分のコートに入っているスマホの音に気づき、幸せそうな顔から一気に不機嫌な表情になりながらも1度箸を止め、スマホを取る。


「もしもし。··········はい、はい··········分かりました、直ぐに向かいます」


そう言って電話を切ると、スマホをコートのポケットに終い、席を立つ。


「すみません、これってお持ち帰りとかってできますか?」

「ちょっと待ってな」


店主はすぐに輪ゴムとお持ち替えり用のフードパックを用意して、テキパキと残った料理をパック詰めすると、輪ゴムで止めてからレジ袋に入れて少女に渡した。


「ありがとうございます。あ、お金はここ置いときますね」

「まいど」


少女はレジ袋に入れてを受け取ると、お金をカウンターに置いて店を出た。


「まったく、ゆっくり食事すらできないなんて···············早く転職したいですね。あなたもそう思うでしょう?イフ」


彼女の周りの炎が一瞬強くなったように見えた。


「それにしても、この街は臭いですね。()()()()()()()


一瞬少女の目が鋭くなり、目の奥にメラメラと紅い炎が揺らめいている。

少女がこの街に向けている感情は怒りでも悲しみでもなく、哀れみ。


「まるで私の国みたいです」


そして気の抜けた呆れ顔になり、やれやれと思いながら、少女は再び歩き出す。


「動くんじゃねぇッ!」

「ん───!?」


しかし、足を進める前に、少女は後ろから首を掴まれ、顔にナイフのような獣人種特有の鋭い爪を突き付けられる。

少女を掴んだのは自分より2回り以上も大きい巨漢であり、屈強な体に、傷だらけの体を見るに、多少の修羅場をくぐりぬけた猛者だとわかる。


「武器を捨てろッ!」

「"賊長"ドム!お前は完全に包囲されている!」

「大人しく両手を組んで腹ばいになれ!」


警備隊の者達が杖や刀を向け、ドムと呼ばれる獣人種の男を包囲しする。

ほかの野次馬や、他にも警備隊のもの達が次々と集まり、ドムは焦りながらも、人質を果たす気はさらさらない。


人質にされた少女はと言うと、自分が人質にされた恐怖よりも、先程後ろから掴まれた際、レジ袋に入れた料理を地面にご馳走してしまい、ショックを受けていた。


「わ、私の···············私のご飯····················」

「早く少女を解放しろ!お前に逃げ場は無い!」

「それ以上近づくんじゃねぇッ!近づいたらこの女の喉を引き裂いてやるッ!」


そんな三下のような脅し。

しかし、彼にはそれをする力と武器がある。

何より普通の少女ならばおそらく恐怖で悲鳴をあげるであろうこの状況に少女は


「あ゛ッ?」

「え?」


一瞬少女らしかなぬ低い声に、獣人は呆気にとられる。


自分の唯一の楽しみである食事をクソブラック上司のせいで邪魔され、仕事が終わったら食べようと楽しみにしていた料理を台無しにされ、しかも自分より格下であろう三下の賊風情に自分を殺すと言われ



少女の沸点が突きぬけた。


───ボッ


「!?!?」


次の瞬間少女の体を炎が包んだ。

紅い炎は先程まで全く暑くなかったというのに、今では自分の体を燃やす、炎となり、一瞬で獣人の身体を炎が包み込み、あまりの熱と、驚き、そして呼吸まで奪われ、思わず獣人は手を離して地面に転げ回る。


「アヅイッ!アヅイイィッ!誰か水ッ!みずをぐれえ゛え゛ぇ゛ッ!」

「スゥ」


必死に転げ回る獣人に対し、少女は何かの拳法の構えを取り、大きく息を吸うと


「ハァッ!」


転げ回る獣人の腹を蹴り飛ばし、獣人の男は近くの家の屋根まで吹き飛ばされた。

家の屋根まで飛ばされた獣人は、家の屋根にめり込み、そのまま二三回痙攣すると、ガクリッと脱力して気を失った。


「フンッ」


少女はパンパンと自分のコートについた誇りを叩き落とし、服を整える。

そして再び地面にご馳走してしまった料理を見て、大きくため息をついた。


「はぁ、楽しみだったのに···············」


残念そうにうなだれる少女に、彼女の周りの炎がまたゆらりと強く燃える。


「慰めてくれるんですか、イフ」


そう独り言を話す少女。

やはり少女の周りには誰か少女に話しかけている人物はいない。


「いつまでもここにいても仕方ないですね。早く終わらせて、あの店でもう一度食事をしましょう」


そう言って少女は再び歩き出す。

その方向は、とある鍛冶屋の男と、龍の少女の住む山の方向だった。

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