貴方の膝の上がオレの特等席
「よし」
俺は街へ降りて武器を売るために馬車の荷台に詰めるだけ武器を積むと今日売る武器の個数の確認と、売る武具屋の確認をした。
確認が終われば後はこいつだ。
「うー···············」
「留守番··············させる訳にも行かねぇよなぁ」
俺は頭を抱えた。
武器が売れるのは交渉と信用あってこそ。
まずは信用。この鍛冶師ならいい武器を作ってくれるという信用があって初めて武器の作成の依頼が来る。
次に交渉。これが1番大事だ。俺の作った武器を品定めして、値段を付ける。
それがお互いに納得のいく代金になるまで交渉は続く。無論相手はできるだけ安く買おうとする。
だが俺も高値とは言わないが、その武器に見合った代金は払ってもらわねば困る。よって俺と買う側で交渉になる。
この交渉中に赤ん坊が泣き出したりでもすれば、交渉の場が乱れる。
できることなら置いていきたいが····················。
「···············俺が話してる時は静かにしてろよ」
「うー!」
そんな可愛らしい返事をする。
本当にわかってんのかこいつ。
「はぁ、言っても仕方ねぇか」
俺は少し諦めたように、赤ん坊を抱いて馬車に乗った。
▲▽▲▽▲▽
§数年後§
「武器は積み終わったか?」
「あぁ、これで全部だ叔父貴!」
そう言ってフィリアは最後と思われる武器を荷台に乗せると、俺の膝の上に座った。
「俺の膝に座るのはいいが、落っこちるなよ」
「おう!」
そう言ってニカッと笑うフィリア。
街に降りる時、馬車に乗るといつもフィリアは俺の膝の上に乗る。
ここがお気に入りらしい。
別に悪いことでは無いが、馬車は結構揺れるから、落ちないか心配なのだ。
「さて、そろそろ行くか」
そして俺は馬を歩かせた。
街までそう距離はないが、何せこの荷物だ。俺は武器を一度に多く売るからな、馬車で運ばないと街まで何度も往復することになる。
「なぁ叔父貴」
「なんだ」
「どうして叔父貴とおかぁは結婚したんだ」
「···············惚れたからだろ」
「そうなのか···············。オレもいつか結婚するのか?」
「惚れた相手がいればな」
「惚れた相手なら結婚できるのか?」
「お互いが惚れてればな」
「じゃ、じゃぁ叔父貴は···············オレのこと好きか?」
「好きに決まってんだろ、馬鹿野郎」
俺はそう言ってぐしゃぐしゃと少し乱暴にフィリア頭を撫でてやる。
髪の毛がボサボサになってしまったが、フィリアとても嬉しそうにしていた。
「へへっ、じゃぁオレもいつか結婚できるな!」
「···············お前、好きな奴がいるのか?」
「あぁ!」
「····················そうか」
じゃぁいつかフィリアも、俺の元から消えちまうのか。
寂しくなるな。
だが、こいつにもちゃんとそう言う人間関係が築けている証拠でもあるってことだ。
普段金を渡したら俺の好きな酒と鍛治仕事で使う道具しか買ってきやがらなかったガキが、とうとう色恋に目覚める歳とわな。
「楽しみだな」
そう言って再び頭をぐしゃぐしゃと撫でてやる。
相変わらずフィリアは嬉しそうに「へへっ」と笑っていた。