捨て子を拾った独り者
············ガキだ。
「おぎゃー、おぎゃー!」
鍛冶場の目の前で、明らかに龍の角を生やし、真っ白な髪の毛に、小さな尻尾が生えている、恐らく龍の子供であろう赤ん坊が、俺の鍛冶場の目の前に捨てられていた。
「··············おい、泣くな」
「おぎゃー、おぎゃーッ」
「だから泣くな」
面倒だ。
そもそもここは少し街から離れた山のど真ん中だぞ?つか誰だよ俺の鍛冶場の前に赤ん坊なんぞ捨てた阿呆は。
「·················ガキが」
『本当にあなたは無愛想で、凶悪な顔つきで、そんなんだから子供にもお客にも好かれないのよ?』
「···················」
『ほら笑って?きっと子供も笑ってくれるはずよ?』
「·············あーー」
なんで今更死んだ女房の事なんて思い出してんだ俺。
「おいガキ」
「うぅぅぅぅ··········」
俺はガキを持ち上げて、自分と目線を合わせた。
俺は少しだけ深呼吸した後、覚悟を決めて
「フヒッ」
「────」
無理やり口の端を釣り上げた。
ちなみに傍から見ればその顔は魔王その物です。
何やってんだろ、俺。
「きゃ、きゃっ」
「··············泣き止みやがったか」
さて、この後どうするか。
··············はぁ、街に行ってミルク買わねぇと。
─数年後─
「ん」
「はいよ」
俺は黙って火箸で掴んだ皮鉄をフィリアの前に出すと、短く返事をして口から炎を吐いた。
「ふぅーー」
「············もういい」
「はいよ叔父貴」
俺がそう言うと炎を吐くのをとめ、金床の上に炎で赤く柔らかくなった皮鉄を乗せると、大小槌で皮鉄を折り、そして重ね、力ずよく何度も叩き、長四角になると再び折り、重ね、叩く。
熱が少しでも弱まると再び
「ん」
「はいよ」
フィリアに頼み、火を吐き熱し
「もういい」
「はいよ叔父貴」
また叩く。
それの繰り返しだ。
「次は心鉄だ」
そう言ってまた繰り返し繰り返し同じ作業だ。
「···········楽しいのか」
「楽しいに決まってるだろ、叔父貴」
「·················変わってんな」
今時のガキが鍛冶場での仕事を楽しいとわな。
このガキは金を渡して「街で遊んでこい」て言ったら玉鋼と酒を買ってきやがった。しかも俺の好きな酒。帰ってきた時は驚いたわ。
友達もつくらんでずっと俺の背中を追っかけて、街のギルドに武器を渡しに行く際もピッタリ俺の後ろを着いてきやがる。
なんでこんなふうに育っちまったんだろうなぁ。