三章・第四箱「女児向けアニメのマスコットは大体浮遊してるけどどういう理屈か考えてはいけない」
おはこんばんにちは海人藤カロでーす。
今日は非番なのでお早い投稿となっております。どうぞお楽しみください!!
リベリオンズ幹部になるための試験として『カクメイダー』を使って暴れてくることを代表取締役の大革命から言いつけられたクォンタムは縁沢町の中のある公園のベンチに座っていた。
〇
掌の上でカクメイダーのカプセルをコロコロ転がしながら辺りの景色を眺めていた。
現代の町、どこにでもありそうな公園、住宅街、道路、電柱、飲食店、長らく離れていた故郷に帰ってきたような懐かしさを感じた。
「これから俺はこの町を恐怖のどん底へ叩き込まないといけないわけか。外獣退治のためだし仕方ない」
ひとしきり感傷に浸った後、立ち上がってカクメイダーを使う相手を探し始めた。
バックパックNo1「エアブラスト」を装着することで飛行形態へと変形し空を飛ぶことをができるのだ。
空を飛びながら町中を眺める。
見つけたのはとあるビルの屋上にいた禿げたオッサンだった。さっきから屋上の柵の下にある段差を登ったり下りたりしている。
それを見たクォンタムはゆっくりと彼の後ろに降り立った。
「おいオッサン」
「うわぁ!?」
禿げたオッサンはびっくりして足を滑らせて屋上から落ちそうになってしまうがクォンタムが素早くそれを助けた。
「あ、ありがとう?」
「なんか思い詰めてる感じだったけどどうしたんだオッサン?もし良かったらこのコスプレ兄ちゃんが話を聞いてやろう」
「あ、コスプレなのか」
クォンタムの存在に納得してくれたオッサンはゆっくりと何があったのかを話し始めた。
よくある話だが仕事先の上司に失敗の責任を押し付けられてクビにされたそうだ。そのせいで家族にも逃げられて(なんたらかんたら)。
「不幸だね」
「ああ、もう死んでやろうかと思たけど、ふっ、いざとなったら死ぬ勇気すら・・・」
「そうか、じゃあオッサンこれ使ってみる?」
クォンタムはオッサンにカクメイダーのカプセルを手渡した。
「こ、これは?」
「えーと、説明書によると『本能解放』って叫ぶとすごい力で変身できるんだって。まぁ勇気が出るアイテムみたいな、お守りってかんじかな?これ持ってアンタを首にした会社に直談判してきたら?」
「勇気を出して・・」
「死のうとしてたんだろ?でもよく考えてみなよ。アンタが死んでもアンタに罪を押し付けた連中が喜ぶだけだぜ?」
「た、確かに・・・」
「もう一度話をしてみてそれでもそいつらの性根が変わらないようなら。会社ごと叩き潰しちまえよ。悪人どものために死ぬぐらいなら悪人を消す方が世の中のため、ひいてはあんた自身の為にもなる。自分のために全力で生きるのがよっぽど人間らしいぜ」
「そうだ、私の人生は私のためにある。なのに何故あのクズどもに私の人生を左右されねばならんのだ!!ありがとう君!できるだけやってみるよ!」
カクメイダーを受け取って禿げたオッサンはその場から走り去っていった。
クォンタムはカクメイダーに取り付けた発信機の信号を追って彼の後を追い始めた。
「さてどうなることやら」
〇
たどり着いたのは雑居ビルが立ち並ぶ縁沢町駅前の大通り。オッサンから一分遅れて到着すると同時に。
『本能解放!!』
「早!?」
ついたと同時にカクメイダー解放の呼び声が・・・。雑居ビルの一棟が爆発を起こしてビルの中から人々が悲鳴と共に避難している。
再びビルで爆発が起きると何かが外へ飛び出してきた。
「部長おおおおお!逃げるんじゃねぇよ!!こっちは腹割って話に来たのによぉ!!」
出てきたのは巨大化してシュレッダー機と合体したさっきの禿げたオッサンだった。
本能解放!『シュレッダー田中』出現!!
何故か彼の頭上にそう文字が投影された。どういう仕組みだ?
「テメェ!自分の失態の証拠は全部シュレッダーしたんだろぅ?だったら失態の張本人であるお前もシュレッダーで隠滅してやるよぉ!」
シュレッダー田中の足元には怯えて身動きができない別のおっさんがいた。田中は彼を掴むと自分のシュレッダーの投入口に押し込もうとする。
「隠滅隠滅ゥ!!!」
ギャリリリリ!
巨大シュレッダーの回転刃が部長へ迫る。
「やめてくれぇええ!?」
絶体絶命の部長。その時。
「ピュアリィカリバースラッシュ!!」
別方向からピンク色の衝撃波のようなものが飛んできた。それはシュレッダー田中の腕を弾き飛ばして部長は近くの生垣の中へと落ちて行った。
クォンタムは声のする方へ視線を向ける。そこにはカラフルなドレスに身を包んだ三人の女の子が立っていた。
「赤き刃は正義の証!ピュアアーサー!!」
「叡智宿りし青の盾!ピュアギャラハット!!」
「き、黄色い大槍、巨悪を砕く!ピュアガレス!!」
「「「ピュアリィナイツ!!見参!!」」」
「「理性をなくした獣たち!あるべき姿へ戻してあげる!!」
決めポーズもびしっと決めて三人のピュアリィナイツが登場。
「あいつらが・・・」
ピュアリィナイツたちはシュレッダー田中に対峙しながら辺りをきょろきょろと見回している。
「あれ?いつも『来たなピュアリィナイツ!!』とか言って怒鳴ってくる奴らがいないわ?」
「そうね。カクメイダーだけ作って帰ったのかしら?」
「二人とも!今は目の前の敵に集中!」
「「はい!!」」
「いくわよ!」
三人はシュレッダー田中へ襲い掛かろうとした時だった。真横から大量のミサイルが飛んできたのである!?
「うひゃあ!?」
「爆弾!?いや、熱くない。煙幕・・・くしゅんっ!?」
「め、目が痛いですぅ~~!?」
クォンタム・アーク、バックパックNo2「多段ミサイルポッド・スパイダーネット」
蜘蛛の巣が広がるようにクォンタム・アークの背中から伸びるミサイルポッド群である。
ポッドごとにミサイルの種類を変えることが可能である。今回撃ったのは催涙ミサイルである。
「えーと、『カクメイダー戻すときは再びカプセルを押し当ててください。尚、一度融合したカクメイダーを分離させることはできないので人間ごと取り込む形になります』か」
クォンタムはカプセルに発信機を付けていたのですぐに落ちている場所が分かった。拾うとすぐにシュレッダー田中をカプセルの中に戻した。
(ステルスウェアー)
クォンタム・アークには光学迷彩が標準装備されている。それを起動させると煙に紛れてコッソリとピュアリィナイツたちの体に発信機を取り付けてその場から離れた。
煙が晴れるとシュレッダー田中の姿はどこにもなかった。
「に、逃げられた!?」
「今までこんなことなかったのに・・」
「今回は今までにないことだらけね・・・」
動揺して立ちすくむ彼女の元へなにやらぬいぐるみのようなものが二体飛んできた。
一匹はタスマニアンデビルをデフォルメしたようなヤツ、もう一体はタツノオトシゴをモデルにしたかわいいキャラクターだ。
「やっと追いついたでちゅー!!みんな早すぎまチュー!!」
「本当だぜテメェら。俺ぁともかくタッツーがいなかったらフルフリィフォームにはなれねぇんだからな!」
タスマニアンのマスコットはすごく野太い声でしゃべっている。
「ごめんタッツー、マニアン。困ってる人がいると思うといてもたってもいられなくて」
「アーサーはいつもそうなんだから。それより早くいきましょう。避難してる人たちが戻ってくる前に」
「うん」
彼女たちもその場から撤退するようだ。
そしてクォンタムはその様子を別のビルの屋上から観察していた。
「タッツー。あれが今回の外獣か」
つづく
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