二章・第七箱「中華系SDの装飾はメッキがはがれやすいから気を付けろ」
おはこんばんにちは!海人藤カロでーす!!
二章第七箱更新いたしました!今回はずばり「トラマル編」の序章と言ったところです。
どうぞお楽しみに!では面白いと思ったらブックマーク、感想、評価、もろもろよろしくお願いいたします。
魔族の奴隷たちを解放し、魔物ハンター組織の頭目リヒトから得た情報はトラマルという転移者がテルヒコの居場所を知っているかもしれないというものだった。
トラマルはすさまじきバトルジャンキーで強い奴を世界中を飛び回って探しているそうだ。
彼は現在「天穿山」にある武術の道場にいるらしい。
人間領の奥地にあるという事でリヒトの奴隷として人間領に入ることになった。
奥地の森の魔族たちにわかられを告げ、ディーナとの再会を約束してクォンタムは人間領へと出発した。
〇
現在クォンタム、リヒト、秘書の三名は魔族領内を人間領へ向けて飛行中であった。
クォンタムがSD青龍クォンタムの龍王モードへと変形して二人を背に乗せて飛んでいたのだ。
「ん~、いやぁ、便利だねぇ。お前を奴隷にできたならいったいどれほどの額で売れたことやら」
「なめたこと言ってると振り落としますよ」
「冗談もわからねぇのか」
「アンタの上司の冗談はくだらなすぎるってんですよ」
「確かにな」
「おい」
「あ、あと俺はサラマンダー族のヒコノだ!ちゃんと名前で呼べ!」
「そう言えば名前聞いてませんでしたね。で、このまま領境超えちゃっていいんですか?」
「ああ、通り放題だぜ。今領境はめちゃくちゃ不安定で危険でな。両陣営の兵たちが集まって関所すらぶっ壊されちまってる。見つかると厄介だからもうちょう高度上げろ」
「雲の上行きます。凍死しないように」
「ダイジョーブ。俺にはとっておきのカイロがある」
そういうとヒノコガぎゅっとリヒトに抱き着いた。
「誰がカイロだバカヤロー」
「そう言いつつ俺に抱き着いてくれるお前には感謝してるよ」
「ヒノコさん。顔真っ赤ですけどそれはアニマによる発火現象ですか?それとも」
「テメェは前見て飛んでろ!」
雲の上を通り、領境を超えて、帝都へ近づいてきた。
「そろそろ下に降りて帝都に行くぞ」
「天穿山へは帝都通らないといけないんでしたっけ」
「ああ、天穿山は一応武技の修行場として道場主たちに管理されてはいるが元々はジュピター帝国の所有だからな。登るにも許可がいる」
「ジュピター帝国」
ジュピター帝国。
人間領の最も大きな国。人間領の他の国々は全てこの国の属国と言える。
天穿山を含む周囲の鉱山からとれる鉱物資源、宝石、全てを牛耳っている。
リヒトの奴隷商売の大手の取引先である。
〇
地上に降りるとクォンタムはリヒトから腕輪を渡された。
「これは?」
「俺の奴隷であるという証だ。大丈夫、仕込みなんてしてねぇから」
クォンタムは特に警戒せず首輪を腕につけた。
SDクォンタムにほぼ首はないので腕にしか付けられなかったからだ。
「うっし、いくか」
リヒトに連れられて帝国の門へ。
彼は完ぺきに顔パスで、入国証も必要なかった。
それだけここのお偉方とつながりがあるのだろう。
門を抜けるとクラシックな雰囲気漂う街並みが並ぶ。
「で、どこに行けば許可がもらえるんだ?」
「役所だな。そこで簡単に手続きすりゃいい。俺は訓練用の魔物を届けることもあったからすぐにすむだろ」
「ほう」
役所に行く間にクォンタムは街の中を観察していた。
武器、宝石店、雑貨、どれもこれもお高そうなものばかり。
(異世界の街っつっても似たり寄ったりだな)
クォンタムは前の世界の城下町を思い出していた。
すこしして役所に到着した。
扉を開けて入ると待合室には街の住人以外に武装した物騒な集団もいくつかいた。
「なにあれ?」
「傭兵とかなんでも屋だよ。この役所には貴族、民衆、王族、etc.。様々な依頼が集まってくるんだ。魔族の討伐、畑仕事、鉱山での採掘、色々ある。」
「へぇ」
「今は用はない。とっとと登山の手続きだ」
受付まで行こうとすると。
「よぉ、リヒト!お前生きてたのか!!」
金髪碧眼の小太りの美少年がこっちにやって来た。
小奇麗な身なりをみるに恐らく上流階級の人間だろう。
「お前の本拠地が襲われたって聞いて心配してたんだ!」
「あー、コデ坊ちゃん」
少年の名はコデ・ブータン。
奴隷売買常連の貴族、キモデ・ブータンの息子である。
「パパが今回は僕と同い年くらいのを買ってやるって約束してくれてたんだけどリヒトのお店があんなことになったでしょ?リヒトの店以外じゃ質が悪くて買えたもんじゃないし!本当に良かった」
「ん~そりゃどうも。けど奴隷は全員逃がしちまってね。一から店を始めるにも資金がさぁ」
「そっかー。だから役所に依頼を受けに来たのか!」
「いや、今回は天穿山の方へこいつの配達に来たのさ。訓練用に配達するはずだった奴がまだ残っててこいつの代金だけでも回収したくてね」
リヒトはクォンタムを指さした。
コデは物珍しそうに彼を見つめる。
近寄ってきてペタペタとあちこち触りまくる。
無下に扱って騒ぎになってもいけないのでクォンタムは特に何も言わずされるがままだった。
「見たことない奴だ!こいつ欲しい!」
「んー、悪いけどこいつは売約済みだからさぁ」
「欲しい欲しい欲しい!」
ジタバタジタバタ。
その場でのたうち回って駄々をこねるコデ。
「ん~、坊ちゃん。悪いけどこっちも商売だから一度した契約は・・・」
それを見てクォンタムはリヒトの服の袖を引っ張った。
そして人差し指で耳を貸すようにジェスチャーする。
(ん?)
(この子、貴族の子?)
(ああ、ウチの常連のキモデ・ブータンっていう貴族であり大商人の息子だ)
となるとここで突っぱねると大事になりかねない。
だからと言ってこのお坊ちゃんの言うとおりにするわけにも・・・。
「わかった!じゃあ、天穿山の道場主と交渉する!そいつを譲ってもらう!」
「へっ!?」
「僕も一緒に天穿山に行くよ!パパに許可貰ってくるから!!」
「ちょ、坊ちゃん!?」
コデは勢いよくその場から走り去っていった。
「ん~、面倒なことになったな。あの一族はステレオタイプのボンボンと違って欲しいものは自分の手でって言うのが信条なんだよなぁ。超アグレッシブだぞ」
「それは好感が持てるけど。どうする?とっとと山に登るのか?」
「いや、坊ちゃん置いて行ったらそれはそれで問題になりそうだし。連れて行くしかねぇ。目的を達成してからバックレればいいだけの話だ」
「前途多難だ」
ため息をこぼしつつ彼らは役所の受付へ。
「話しは聞いてたと思うが天穿山への登山許可をくれ。坊ちゃんのも含めてな」
受付嬢は同情の笑みを浮かべながらバッジを六つほど用意してくれた。
「こちらのバッジを見えるところに着けてください。そうすれば天穿山へ自由に行き来できます」
「数が多いように見えるけど」
「これはコデ様の奴隷用です。コデ様はご自分で行動される際はいつも護衛の奴隷を数人連れていますので」
「そんなに一人で行動されること多いんで?」
クォンタムは興味本位で受付嬢にコデについて尋ねてみた。
「はい、遠出をされる際もご自身で馬を駆って行かれるほどです。そのことでよくお父上のキモデ氏と口論しておりますね」
「そうなの?」
「狭苦しい馬車が嫌いで絶対に乗らず、貴族や王族の集まりにもラフというかご自身が好む格好しかしないそうです。キモデ氏からは『もっと貴族らしい格好をしろ』とよく怒られてらっしゃいます」
聞けば聞くほどクォンタムが想像している貴族とは程遠い人間だ。
そして一緒についてこられると相当面倒なことになりそう
そんなこんなでコデが戻ってきた。
「よっし!出発だ!!」
彼の背後にはリザードマンとダークエルフの奴隷が立っていた。
二人とも女性で奴隷であるも関わらず首輪などをしている様子はない。
「ん、お前ら久しぶりだな」
「シュルル・・・三年ぶりくらいかしら。コデ様の家に売られて以来だから」
「ふん、そんな奴の事などどうでもいい」
「おいおい。ガキの頃から世話してやった恩を忘れんなよ」
「お知り合い、というか扱っていた商品の方たちって感じですね」
「ああ、こいつらはリザードマンのニュートとダークエルフのクラン。元々戦災孤児でな。俺が育ててやってキモデに売りつけたんだ。コデの家庭教師としてな」
「家庭教師?」
クォンタムはコデに二人について尋ねてみた。
「うん!二人は三年前から僕の家庭教師をしてくれてるんだ。戦いをニュートが学問をクランが教えてくれてるんだよ。おかげで僕は学院でも成績優秀、武技と剣の扱いは同年代では一番うまいんだぜ!」
誇らしげに胸を張るコデ。
その姿を後ろの二人は微笑ましく見つめていた。
「なんか、仲良さそうですね」
「チロロ、元々は家庭教師じゃなくてキモデの性処理係として売られたんだけどね。どうにもアタシらはお気に召さなかったらしくてね」
「私が学問をニュートが剣技を得意としていたのもあってそのままコデ様の家庭教師としてあてがわれたのです」
「コデ様は優しいんだよ~。リザードマンが寒いのが苦手だって知ったらアタシに暖炉付きの部屋をくれてさぁ」
「私も書物を読むのが好きだと言ったらキモデに掛け合って書庫を自由に使えるようにしていただきました。それ以外にも自分の側にいる奴隷たちには出来るだけ気を配っていらっしゃいます」
「へぇ」
コデに対する心証が少し良くなった。
奴隷を買うような貴族の子どもだから彼女らに対する扱いはひどい物だろうと予想していたが奴隷たちとは良好な関係を築いているようだ。
見かけは小太りのボンボンの息子というありふれたイメージの塊みたいな奴、しかし。
(顔だけ切り取るとイケメンだ)
顔がイケメンだと心までイケメンになるのだろうか?
「んーよし、自己紹介はこれくらいにして行くか」
六名は胸にバッジを着けて天穿山の入り口へ向かった。
入り口は帝都の中を通って反対側の門にある。
番兵にバッジを見せて門を通るとようやく入り口に到着した。
「うおお、高いなー」
「ん~、いつもならハーピィの奴隷を連れてきて上まで運ばせるんだがなぁ。今回は坊ちゃんもいるし徒歩で行くしかない。坊ちゃん、平気ですか?」
「大丈夫!天穿山は体力づくりにニュートとよく上っているから」
「チロロ、リヒトよぉ、あんま坊ちゃんを舐めんなよ!」
(よく上っているのにその体型なのか)
「あ!このチンチクリン!今坊ちゃんの体型に失礼なこと考えたろ!」
ニュートがクォンタムの頭をガシっと掴んだ。
「あ、いや、その」
「だめだよニュート!傷つけちゃダメ!」
「す、すみません坊ちゃん!」
コデはクォンタムの頭を傷がついてないか丹念に確認した。
「ふぅよかった傷はついてない。よかった。じゃあ登ろう!」
登山中、コデは積極的にクォンタムに話しかけていた。
クォンタムの体を舐めるように上から下まで観察しながらマシンガンのように言葉を飛ばす。
「君はゴーレム族なんだろ?ゴーレム族は一度ついた傷を治すために自分の体と全く同じ素材を食べないといけないって聞いたから。どう見ても君は特別な素材でできていそうだし傷つけたら申し訳ない。親はミスリルゴーレムかい?いやそれよりもっと軽い素材のようだし・・・」
(あ、俺、ここでもゴーレムだと思われてる)
「ほんとにおもしろいデザインだね。ゴーレム族は親の排せつ物が固まって子ができるらしいじゃないか。そして親はその塊を削って子供の体を作ってくれる。君の親はそうとう芸術家なゴーレムだったんだね」
(芸術家というか漫画家?演出家?アニメーター?どう言ったらいいだろう)
それにしてもコデはとても魔族について詳しい。
ゴーレムの子どもの作り方なんて人間で知ってるのは戦ったことのある兵士か学者くらいではなかろうか。
「魔族についてなんでそんなに・・・」
「あぁ、僕は魔族に憧れてるんだ。だって僕たち人間にできないことを沢山出来るんだぜ!魔族の事を詳しく調べれば人間にだって同じことができるかもしれないし。そうなれば人間だ、魔族だって分けなくても済むだろ?奴隷なんか買わなくても自由に魔族と親交がもてるでしょ!そうなればテルヒコ様が言っていたように魔族、人族が手を取り合うことだって」
「・・・君はテルヒコの思想に賛同してるんだね」
「は、はい。僕の父は僕が生まれる前から魔族の奴隷を買っていたんです。その為に僕にとって魔族っていうのはとっても身近なものだった。父は魔族を雑用やその・・・『そう言う事』にしか使わないし僕にも魔族はそう言う扱いでいいんだと言っていました。けど僕はその、そういう風には魔族を見れなくて。父が飽きてしまった魔族の皆さんを僕のメイドにしたりニュートやクランのように家庭教師にしてもらって彼女たちからいろんな魔族の話を聞かせてもらった。そんな時、転移者で英雄のテルヒコさんの話を聞いたんです。それで僕も魔族のみんなと仲良くできる世界を作りたいと思って色んな魔族の勉強をしているんです」
「で、今回は珍しいゴーレムである私に狙いを付けたわけだ」
「ね、狙いを付けるなんてそんな・・・。あ、いや、あれだけ駄々をこねればそう取られてもしょうがないですね。ごめんなさい」
「ちょっと意地悪だったかな。君がいい人そうで良かったよ。もし君の所へ行くことになったとしても不自由はしなさそうだし」
「は、はい。出来るだけ対等で!それで僕に色々教えてください!」
笑いあう二人をお付きの二名はなんとも複雑そうな表情で見ていた。
それは大好きな飼い主を新しい犬取られた先住犬のような眼差しで。
「むぅ~」
ニュートは不機嫌そうな顔で舌をチロチロと出していた。
「行儀悪いぞ」
「だってぇ~」
「お前はコデ様の所に新入りが来るとすぐそうなるな」
「チロ、クランだって他人の事言えないくせに・・・」
「なにぃ?」
「新入りが入ってコデ様を気に入りそうになるとコデ様のダメなところを捏造マシマシで話してコデ様とあまり親密にならないようにしてるじゃない!」
「なっ!わ、わたしが!こ、コデ様の悪口などぉぉお」
「声震えてますけど!!」
「もう!二人とも静かに・・・」
コデが二人をなだめようとした時だった。
「危ない!!」
前を歩いていたクォンタムがコデを庇った。
次の瞬間、山の上から何かが降ってきた!
「リヒト!!」
クォンタムが叫ぶとリヒトはすぐさま鞭を使って落ちてきた何かを受け止めた。
「ん!?これは・・・」
落ちてきたのは血まみれの人間。
道着を着ているところを見ると天穿山の道場の門下生だろうか?
血は派手に流れているが傷はそれほど深くないし意識もあるようだ。
「登山セット持って来ていてよかった!布と包帯と傷薬しかないけど」
コデが持っていた登山セットの中から治療具を出してすぐに応急処置をする。
「あ、ありがとう」
「いったい山頂で何があったんだ?」
「トラマルか?」
「そ、そうだ。トラマル。あの野郎、しばらくここに滞在してると思ったらいきなり・・・」
彼が言うにはトラマルは『レベルが低すぎる。間引かねば』と言い出すといきなり門下生たちに襲い掛かってきたそうだ。
そして彼に立ち向かえなかった者、一撃で倒された者は『見込みがない!』と山を下されたのだという。
拒否した者は山頂から叩き落されたのだそうだ。
「道中にまだ落ちてきた奴が転がってるはずだ・・・・」
「うーん、倒れたやつ一々治療してたんじゃ物資が足りなくなるぞ」
「いったん戻って役所に報告してこよう。そうすれば治療薬、包帯、色々用意してくれるはずだ。あとトラマルをどうにかして止めないとな。転移者なら多少無茶しようが帝王は見逃してくれるが・・・これはさすがになぁ」
「やりすぎですね」
「よし、じゃあ二手に分かれよう。役所へ報告する組と上でトラマルを止める組」
「報告だけなら私が一人で行こう。ニュート、コデ様を命に代えてもお守りするのだぞ!」
「当然!」
「よし、じゃあとっとと昇るぞクォンタム」
「うん、俺とリヒトは先に言った方がいいよね。飛ぼう。速度なら青龍よりあの姿の方がいいな・・換装!!」
クォンタムの姿が変わる。
炎を帯びた鳥を模した鎧を纏うその機体とは『SD朱雀クォンタム!!』
「鳥王変形!!」
クォンタムは鳥の姿へと変形し彼の足にリヒトが捕まる。
「んん~、ヒノコ!お得意様をちゃんとエスコートしろよ!」
「おう!お前もトラマルにやられて落ちてくんなよ!!」
「ふんっ。二度は敗けねぇよ!!」
「行くよ!」
リヒトを連れてすごい勢いで山頂へと飛ぶクォンタム。
待ち受けるトラマルとは一体どれほどの力を持った男なのだろうか?
つづく




