第三十箱 大気圏突破の再現は赤のコントラストが難しい。
おはこんばんにちは!海人藤カロでーす!!
今回で『祝三十箱』までやってきました!!
さぁさぁ、来ますよ、来ますよ!色々と!何が来るかは読んでからのお楽しみ!!
ではいつもの事ではありますが!面白いと思ったらブックマーク!ご意見ご感想!ツイッター等での拡散、宣伝!どしどしよろしくお願いしまーす!!
ゾーニ軍親衛隊を退けたシャバルは彼らが身に着けていた魔装具をフェイデラ国へと持ち替えりギド王の謎を探るべくクォンタム、ワーロックと共に研究施設へとやってきていた。
〇
「クォンタム様、施設内の道具などはご利用なさらないので?」
「いや、俺たちはそういうの内蔵されてるから」
「は、はぁ・・・?」
「ほい、ワーロックさん」
ワーロックにはVRヘッドを渡す。
「うむ」
「研究者さんたちも見ます?」
「ええ!?いいので?」
「全員に見せるなら大型スクリーンを出したらどうだ?」
「あ、それだ」
大型スクリーンキットを出してスクリーン部分を壁に貼り付ける。
「ここにお前が見たものが映るのじゃな」
「場所取るからこういう広いところでしか使えないけどね。少人数ならVRヘッド配った方が早いし詳細までわかるからね」
「ホントに何でもあるのうお主のスキル」
「ホントにねぇ。これ要るのかってものまで色々キット化されてるんだよね」
しかも組み立てるまでの材質は完ぺきにプラスチックなのに完成すると本物同様になる。
神様が特別に与えてくれたスキルとはいえなんとも不思議だ。
ブオン。
クォンタムの視界がスクリーンに表示される。
シャバルとクォンタムはそのまま魔装具の欠片の分析に入る。
といっても内部コンピュータに調べてもらうだけだが。
ピ、ピ、ピ、ピピピッ。
分析結果がスクリーンにも表示される
「この鎧、なんかの生物の体の一部を圧縮して作られているみたいだな。そっちはどうだ?」
「こっちも同じだ。しかもこの鎧に使われてる生物に該当する情報がない。つまりこれは『この世界』には存在しない生物で作られてる」
それを聞いて研究者たちはざわざわと騒ぎ始める。
ワーロックもけげんな表情でスクリーンを眺める。
「これどこかで・・・。あ!」
あ、と言った瞬間に彼女の姿が消えた。
いきなりの事に研究者たちがざわつく。
「大丈夫ですよ!転移でどっかに飛んでっただけですから!」
「一度行った場所に瞬時に移動できる『転移』か。そんなレアスキルを持っていたとは」
シャバルも驚いていた。
「あの人、レアスキル腐るほど持ってるからねぇ」
「ん?どういうことだ?」
「えーと…」
クォンタムはワーロックに関するデータをシャバルに送る。
「なるほど」
「ね、すごいでしょ」
一々説明しなくてもデータ送信で知識を共有できるというのはとても便利だ。
そして数分後、ワーロックが戻ってきた。
「これ」
ワーロックは何か小さな便を取り出した。
「中にあるものが入っとる。ただ、ヤバいから何か閉じ込めるものを用意しろ」
言い方からしてそうとう危険なものだという事は察せた。
クォンタムは三角フラスコを取り出して便の中身をその中に放り込んで蓋をした。
中から出てきたのは紫色のアメーバのような物体だ。
すぐさまスキャンしてさっきの鎧の欠片と照らし合わせてみると細胞単位で一致した。
そしてそのヌルヌルは生きていたのだ。
「こ、こんな生物が存在するのか!?」
「えーと、アメーバという奴か。たしか単細胞生物の一種だったな」
「あ、アメーバ?た、たんさいぼー生物?」
シャバルから発される聞き覚えのない単語に研究者たちは困惑しているがクォンタムは気にせず答える。
「んにゃ、アメーバとは別物だ。体がいくつもの細胞で構成されてる。ぬるぬるした生きてる肉片ってところか。ミジンコとかそこらへんかな?ワーロックさん、これどこから?」
「数年前にゾーニ国領内に星が落ちてきた。それの一部だ」
「星が!?つまり隕石。いや、隕石そのものが・・・・」
「こういうの『いんせき』というのか」
「シャバル、コレについて知ってるか?」
「あ、ああ。軍が派遣されて落ちてきた星を調べたって話は聞いた事がある。特に何も発見できなかったらしいが」
「いや、それは間違いじゃ。ワシも星が落ちるのを見て興味本位で落ちた場所を調べたがあれだけ巨大な痕跡が残っていて何も発見できなかったはおかしい。とすれば落ちてきたのものはどこへ行ったのだろうな?」
「ん~」
クォンタムは分析をしながら少し考えると。
「ちょっと待っててください」
研究所を出て行き、数分後戻ってきた。
手には小さなネズミが摘ままれていた。
「それで試してみるか」
ネズミを小さなケージの中へ移すとその上からさっきの紫アメーバを垂らしてみる。
するとアメーバはネズミを取り込んでその体の中へ染み込むように入っていく。
ネズミの体が膨張し筋肉質な体へと作り替えられる。
強化されたネズミがゲージを破るために暴れだそうとした時、クォンタムがそれを上から叩き潰した。
掌にべったりと付いた血の中でアメーバがウニウニと蠢いている。
どうやらクォンタムの中には入りこめないらしい。
「なるほどねぇ。どんな生物の中にも入り込んで宿主を強化する寄生生物か。そっちの鎧はこの生物の細胞を圧縮して硬くしたものだ。生き物が着るとその人間の中に触手を潜り込ませて生き物の体を強化し頭をいじくって本人の才能、スキルを引き出す」
「そしてそのヌルヌルの操り人形になると。気色の悪い生き物じゃのう」
「うん。そしてこいつらは多分、『知性』を持ってる」
「それはどういう意味じゃ?」
「俺達みたいに考える頭があるってことさ」
「こ、こんな肉片がか?」
「こいつは本体から切り離されちまった肉片だから本能だけで動いてる。本体は恐らくゾーニ軍が調べに来た時、その中の誰かに潜り込んだんだろう」
「そして軍の中に侵入して自身の「さいぼう」を使った奇妙な魔装具を作りまくり、才能のある者たちに与えている」
「うん、そんでそれを今やっているのは・・・」
「ギド王だ・・・!!じゃあ、もしかしてギド王は今」
「うん、十中八九この肉片の『本体』による寄生をうけてる」
「ここ数年でギド王が戦争を煽っておるのもそれが原因とみて間違いなかろう。しかし、その寄生生物とやらの目的は何じゃ?奴ら戦乱を広げて何を企んでおる?」
「世界征服でもしたいっていうのか!?」
「うーん、そんなベタな悪役じゃないと思う。(というかこの生物の生態ってまるで・・・)」
敵の思惑についてクォンタムたち三人は頭をひねる。
他の研究者たちは話の流れに付いて行けずオロオロしていたのでクォンタムは分かりやすく噛み砕いて彼らに説明した。
「にしても生物と魔装具の融合、生きている魔装具か。考えたこともなかったな」
「うむ、研究する価値はありそうだな!『魔装獣』などどうじゃ?魔装具を猟犬や戦馬に組み込んで動物にもスキルを扱えるようにするのだ!」
「そうなるとまずは動物でも使える魔装具から考えねばな!スキル発現の法則を知っているワーロック殿が協力してくだされば実現可能なのでは!?」
「あーもう、そういう物騒な研究はこっちの問題が全て片付いてからやってくれジジイども」
「「あ、はい。すいません」」
「はぁ、魔装具の一番の問題点は魔装具を生み出した者の親族、もしくは心を許したものにしか扱えないという点だろうが。まずはそこを解決せねばな」
「あ!確かにそうでした!!」
「でもそう考えるとゾーニ軍はすでにそれを克服したという事か。さすが軍備に力を入れている国は進んでいるな」
(厳密にいえばあいつらが使ってたのは『魔装具』ではないんだけどね)
その時である。研究室のドアがバンっと開かれた。
「クォンタム様方!五将軍ハウラが目覚めました!」
「ハウラが!」
「よかった。話は出来そう?」
「はい!意識もはっきりしていて問題ありません!」
「よし、行こう」
三人はすぐに医療施設へと向かった。
〇
施設ではすでに王がハウラからの情報を聞いていた。
「なるほど。ギドの体は何かに取り付かれていたと。そしてこれまでの戦争はその『何か』によって扇動されたものだったということか」
「はい。ギド王の体から気色の悪触手が大量に噴き出して襲ってきました。王は最後の力を振り絞って奴に抵抗して私を逃がしてくれたのです」
「このままゾーニ軍とGOPの本隊が衝突すれば敵の思い通りになってしまうな。今は膠着状態、王の号令を待っている状態だ。ギド王は本隊の指揮を取るために出てくると思うか?」
「いえ、このところギド様は前線に出ず新魔装具開発にいそしんでいました」
「やはり今までのギドとは違うな。ワシと同じように年齢による衰えで前線に出てこないものかと思っていたが。確かに奴は軍の戦力増強に力を注ぐ節はあった。だが、戦と成れば嬉々として前線に赴いてくる奴だ。それが体が動くにもかかわらず魔装具にかまけて前線にも出ないなど!アイツではない!」
「フェイデラ王・・・」
「ギドを救うにしても今からでは本隊同士の激突を回避する時間がない。下手に止めようとすれば戦場が乱れて死人を増やすだけだ・・・」
「私は事は既に裏切り者として反フェイデラ連合中に伝えられていると考えた方がいいでしょう。なので私が本隊に働きかけることも既に不可能だと・・」
二人は何とか黒幕の思惑から外れようと知恵を絞るが戦争がもう全戦力を持っての衝突寸前の段階まで来てしまっては・・・。
いや、策はあるのだ。だがそれは同時にギド王を見捨てることとなる。
トライブは絞るようにそれを口にする。
「一刻も早くギドの首を取って戦争を終わらせるしかない!」
「はい。王もきっとそれを望んでいるはずです」
そう、王を正気に戻せたとしても戦争は終わらない。
ギド王がいきなり戦争を止めるよう連合に打診したとして、その後いくつもの憶測が飛び交い始めるだろう。
『王が洗脳された』、「別人ではないのか」、『GOPの作戦だ』と。
だが「討ち取られた」と成れば連合は足を止めざるを得ない。
ギド王という御旗を失うという事はGOPに対抗できる人間がいなくなるという事だからだ。
連合の国々もゾーニ国が倒れればすぐに降伏してくることは容易に想像できる。
「奴を・・ギドを・・・俺は救えない!」
掌から血がにじみ出るほど拳を握り締めそう呟く。
そこへクォンタムたちがやって来た。
「やることは決まったみたいですね」
「ああ。行ってくれるか?」
「はい!特別暗殺部隊『マキーナ』出動します!シャバル、お前はどうする?」
「行くよ。他人事じゃない。アースさんに謝らないとな。晩飯までには帰るって言ったのに朝帰りになっちまうとは」
「最後の開戦の火ぶたが切られるのは遅くても明日の朝だ。出来ればそれまでにギドの首を取ってきて欲しい」
「分かりました!」
そう言ってクォンタムとワーロックは仲間たちを集めるべく走り出した。
「シャバル!」
クォンタムの後を付いて行こうとしたシャバルをハウラが止めた。
「アンタみたいなガキにこんな事頼むなんて思ってもみなかったけど・・・。ギド王をお願い!あの方を助けてあげて・・・。もし出来たらアタシが何でもしてあげるから!」
その言葉にシャバルは背を向けながら親指をグッと立てて見せた。
彼は病室から出てクォンタムの背を追いながらため息をつく。
(あのハウラに何でもするって言われたよ。はぁ~、こんな体になる前ならめちゃくちゃそそられたんだがなぁ)
〇
クォンタムとワーロックの呼びかけによりすぐにマキーナのメンバーが集まった。
そして王からの指令を皆に伝える。
「そうか、やっとか!」
「これが最終決戦というわけですね!」
「でも今からゾーニ国へ向かうんですか?明日の朝までって無理なような・・・」
「うん、そこはこっちで考えてあるよ」
クォンタムはいくつもの長距離移動用ブースターのキットそして移動用のジープ、多数の装甲版を取り出した。
「シアルさんお願いします!!」
「はい!!」
特に説明も聞かずにシアルはブースターのキットをくみ上げ始める。
するとそのくみ上げ中のパーツと置いてある装甲板がジープを取り囲んで組み上がっていく。
完成したのは通常のジープより強化された『長距離移動用ジープ』であった。
「おお!」
「ふふふ!実は私いくつもの設計図を用いながらそれらを頭の中で合体させたオリジナルの物品をくみ上げることができるようになったのです!クォンタム様との長き研鑽の賜物!」
「推進力は通常の長距離移動用ブースターの三倍!!これを使ってゾーニ国の城へ直接突っ込みます!」
「なるほど。これにワーロック殿の幻術と隠蔽を加え、ヴァイ殿の闇スキルで姿を消せば」
「到着するまで誰にも気づかれません!!」
「「「おお!!」」」
ただ。とクォンタムは一旦話を区切る。
「城には今までにない程強化された親衛隊なる連中がいるはずだ。俺とシャバル以外は相当やばい戦いになると思う。いや、ギド王との戦いは俺とシャバルでも死ぬかもしれない。それでも皆は付いてきてくれる?」
クォンタムはそう問いかけた。
皆の返答は
「「「当たり前だろ!」」」
迷わずそう告げた。
「隊長の私を置いてくことは許さん!」
「ここまで来てそんな事聞くなんて。心外ですわ!」
「「私たちの命はクォンタム様と共にあります!!!」」
「そんなオイシイ場面に俺がいないなんていかんよなぁ~。いかんよそれは!!」
「アタシらはずっとみんなで力を合わせてきたじゃないか!!」
「わしはどっちでもいいぞ。来いと言われれば付いてく。行かなくていいならいかない」
「付いてきてください!」
「なら行く」
みんなの言葉になぜかホッとした。
今になって思えば王都へ旅立った時はこんなに仲間が増えるとは思わなかった。
今なら何でもできそうだ。
(これがシアルさんへの俺の最後の恩返しだ!)
事の発端、世界を平和にすることがシアルへの恩返しだと自分で決めて行動してきた。
今、クォンタムの最後で最大、最難関の恩返しが始まる。
皆が車に乗り込み。フリージアが号令をかける!
『これがマキーナのラストミッションだ!!出動!!』
彼らは空へと飛び立つ。全ての決着の地へ。
〇
だが、彼らは気付いていなかった。彼らのジープの中に潜んでいる『ある者』の存在に!
つづく




