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転生して1/10プラモになったら村の守り神に間違われた話。  作者: 海人藤カロ
第一章 転生して1/10プラモになったら村の守り神と間違われた話。
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第三箱 ポリキャップの方向にはご注意を


 ゾーニ軍に襲われた村の少女シアル。

 村近くにあった洞窟に逃げ込んだ彼女はその中でバラバラになっていたゴーレムの様なものを見つける。

 彼女はそのゴーレム?を組み立てればゾーニ軍を撃退できるかもしれないと自身のユニークスキルを使いってそれをくみ上げた。

 彼女の願いを受けて洞窟の中に眠っていた機械闘士が目覚めた。

 彼は瞬く間に四人の敵兵を葬り去ったのであった。



 シアルは驚愕していた。

 自身が呼び起こしてしまったモノのすさまじさに。それと同時に思った。

 これは本当に呼び起こしてよかったものなのか、と。


 レーザーブラスターを再び腰に納めたクォンタムの赤く光るサーモアイが彼女の方へ向けられる。


「ひっ!?」


 ゆっくりと彼女の前までやってくる。

 もしかしたら私も殺されるかもしれない。嫌な汗が背筋をつたう。

 クォンタムは両手をシアルの方へ向ける。

 シアルはそれを見て諦めたのかぎゅっと目をつぶった。


「ありがとうございましたああああっ!!」


 クォンタムは両手を地面について深々と頭を下げていた。


「いや、もう本当に!寂しかった、心細かった!もう作品全部再生しつくしちゃって後はもう全ての機体での戦闘シミュレーションしかやることなくてさー。いやー…ほんとにもう感謝しかない…。しかも戦闘シミュをやると変な電子音が頭の中に流れてくるしさ…。それがクォンタムの内部コンピュータだって声ですぐわかったけどまさかあれだけリアルな戦闘シミュが頭の中で行えるんてすげーなって。最初は思ったけどやればやるほど相手を破壊することに慣れていって、人間的感情がどんどん希薄になっていってさ。もう最近なんて無心でひたすらやってたね。もう俺という心が消滅してもおかしくないレベルだったよ。ほんとにありがとう」


「あ、えと、どういたしまして?」


 早口すぎて「ありがとう」としかわからなかった


「いやーもうどれくらい放置されてたかな。インドア派だから一人でもまぁ大丈夫かと思ったけど。…一人ぼっちの本当の意味を初めて味わったよ…何回か死にたくなった。死ねなかったけど」


「言ってることがよくわからないわ。貴方は一体何なの?」


「おれは…」


 普通に自己紹介しようとするが少し思いとどまった。

 そしてすこーし頭をひねり、考えをまとめると。


「俺の名はクォンタム!偉大なる研究者、ドミノ博士の研究をもとにして生み出された機械闘士だ!」


 自分の正体をごまかすことにした。

 死んで別の世界から来た人間だなんて信じてもらえるかわからないし。

 第一、人間ですらなくなってるし。


「ドミノ。その人があなたを作ったのね?」


「うん。彼は世界平和の為にと俺を作ったが悪い奴らに研究成果を奪われそうになり何とか逃げ延びてこの洞窟に身を隠した。そして俺をバラバラにして隠したんだ」


「そうだったのね。ドミノ博士はゴーレム使いだったのかしら?貴方、普通のゴーレムとは全然違うようだけど?しゃべるし」


「えーと…、ドミノ博士は人間の友として共に生きていけるゴーレムを造ろうとしていた。感情を持ったゴーレムを」


「それってまるで人間みたいね」


「そうかもしれないな。博士はもしかしたら人間を、自分の友人を自分の手で作ってみたかったのかもしれない。アニメでも友人少ないって言われてたし」


「アニメ?」


「あ、いや。何でもないよ。この箱の汚れ具合を見るに相当な時間放置されていたのだろう。博士も生きてはいまい。ならば俺は俺の感情に従って行動する。この君に対する『恩返し』の感情に従おう。まずは村を救う事からだ」


「っ!!」


「ちゃんと聞こえていたよ。さぁ行こう!俺はここの地理データは持ってないから案内してほしい!」


「待ってその前に!」


 シアルは洞窟の奥へと駆け出していく。

 クォンタムも頭部のライトを強くして後ろを付いて行く。


「見つけた!母さん!」


「シエル!大きな音がしたものだからやられてしまったのかと思ったよ!」


 涙を流しながら抱き合う二人。

 だが、シアルはすぐに顔を上げた。


「母さん、今から村を助けに行ってくる」


「なっ!?なぜそんな危険なことを!せっかく助かったんだよ!」


「だーいじょうぶ!アタシにはこの人がついてる!」


 母はさっきから自分たちを照らしている光源のに気付いた。


「こ、これがアンタが言ってたゴーレム?」


「ううん、彼はクォンタム。私たちの救世主よ」


「どうも、クォンタムと申します。感動の再開のすぐ後で悪いんですが急がないと村が」


「うん、母さんも付いてきて。さっきの轟音でまたここにゾーニ軍が来るかもしれないから」


「っとその前に武装を確認せねば」


 シアルが組み立てたのはクァンタムだけではなかった。

 先ほど使ったものとは別の武器、箱に入っていた者はすべてくみ上げられていた。

レーザースピア用アタッチメント、クォンタムバズーカ一丁にスーパーグレネード、チェーンニードルが一つ、武器輸送用コンテナが一箱か防具はエネルギーシールドが二枚.

 クォンタムは手早く武装をコンテナに積み込んでシールドをシアルに渡した。


「これは?」


「取っ手部分のスイッチを押すとシールドが出る」


「私と母はコレで身を守ればいいのね」


「はい。あとは私が兵士たちを何とかしましょう!ちょっとした作戦があります」


 二人と一機は急いで村の方へと向かう。



 村では集会場にシアル親子以外の村人たちが集められていた。

 皆がおびえてガタガタと震えていた。

 村人たちの周りを緑色の甲冑をきた兵士たちが囲い、集会場にある壇上

の上にあの赤い甲冑が立っていた。


「村人はまだ全員集まらんのか?」


「はい。この村で唯一ユニークスキルを持つという女が母親を連れて逃げたとのことですがまだ捜索に出た部下たちは戻っていません。先ほど聞こえた森の方からの轟音。部下たちがスキルを使ったものだと思っていましたがもしかしたら…」


「GOPが森から攻めてきているというのか?」


「はい」


「むぅ」


 ここは部下をつかって索敵をすべきか。

 しかし、GOPが本当に来ているという確証がない。

 下手に動けば逆に敵に見つかってしまうかも・・・。

 そう思考を巡らせている時であった。集会所のドアが開いた。


「将軍殿!残りの二人を捕まえてまいりました!」


 緑甲冑がシアル親子を捕まえてきたのだ。


「放せっ!このぉ!」


 シアル達はそのまま集められた村人の中に放り込まれた。


「きゃっ!」


 倒れこんできたシアルに村人たちが駆け寄る。


「シアルおねぇちゃん」


「シアルちゃん!無事だったのかい!」


「これ状況を無事だといっていいかわからないけどね」


 シアルは赤甲冑をにらみつけた。


「これで全員揃ったな。皆殺しは一人でも逃せば意味をなさない。君たちを殺した意味が失われてしまう。これでやっと君たちの死は無意味ではなくなった。我ら大いなるゾーニ軍の礎となれるのだ」


「屁理屈を!」


「よくやったな。お前は村周辺の見張りに当たれ。敵が来たらすぐ知らせろ」


「はっ!」


 シアル達を連れてきた兵士はそのまま外へ出て行った。

 集会場のとびらが閉じると将軍は壇上から立ち上がり、腰に下げている真っ赤な剣を引き抜く。


「皆殺しを行うときはいつもこの剣を使う。赤雷(せきらい)の剣だ。鮮やかな赤い雷が君たちを痛みもなく安らかにあちらへ送り届ける!」


「それはどうかしらね」


「む?そこの女、今何と?」


「アンタの弱っちい静電気なんてへでもないって言ったのよ!」


「なら、試してみるか?」


 将軍が軽く剣を振ると剣から赤い雷がシアルへと伸びる!

 だが、それは彼女を包むように発生した光る壁に阻まれた。


「なに!?」


「母さん!」


「ええ!」


 シアルと母が同時に発動したエネルギーシールドは共鳴し、村人たち全員を包む巨大なドーム状のバリアとなった。


「バリアのスキルか!?だが、そんなもの長くは・・・」


 将軍はバリアを破ろうと更に強い赤雷を放とうとする。

 だが、その瞬間集会所のステンドグラスを突き破って何かが入ってきた。

 それは黒い球。その球はコンマ数秒後に爆ぜ、集会所を村人、敵、もろとも爆炎で包んだ。



『生命反応感知。味方勢力・生命反応数減少ナシ。敵勢力・生命反応残リ2』


「了解。作戦シフトを敵残存勢力の排除に移行する」

 

 犠牲者が出ないようシアルたちにエネルギーシールドの使い方をあらかじめ教え、ドームバリアの展開を確認してから教会内にスーパーグレネードを打ち込んだのだ。

 だが、やはりイレギュラーはある。二人も残っているのはクォンタムとしても予想外だった。


 村人たちは一瞬何が起こったかわからず混乱していた。


「光ったと思ったら集会所がなくなっちまった・・・」


「でも私たち生きてるわよ!?」


「周りの兵士たちも全員吹き飛んだみてぇだ!」


「シアル!どうなっておるんじゃ?何か知っておるのじゃろう?」


 村の長がシアルに問いかけた。


「はい。私と母は彼に救われ。彼は今こうして皆を救ってくれました」


 シアルが指を刺した。その先には白い鎧がたたずんでいた。


「おねぇちゃん、あれだあれ?」


「彼は私たちのきゅうせ・・」


「あれはっ!!」


 いきなり長老が興奮気味にシアルの声を遮った。


「わしのひい爺さんに聞いたことがある。このフェイデラ国にはその昔、白き衣をまとった賢者がおった。その賢者は邪悪なるものたちがこの世にはびこるという未来を見たそうじゃ。そしていつかは分からぬが必ず現れるその邪悪に対抗するために世界を守護するためのゴーレムを造ったそうな。そして賢者亡き今もそのゴーレムは己が使命を果たす時を待ち、眠り続けているという。よく絵本をよんでもらったもんじゃ」


「長老様。ではあれが!この村の、いや、この世界の」


「守護神様じゃ!」


 長老の言葉に村人たちが歓喜する。


「そうか!ゾーニ軍が平和を乱すこの時に目覚めてくださったんだ!」


 バンザーイ、バンザーイと喜んでいる村人たちの後方、吹き飛んだ集会所の瓦礫の山の下から出てくる人影が二つ。


「将軍!ご無事で?」


「すまんなレドン。お前の風のスキルによる防壁がなければ私は吹き飛んでいただろう」


「なにをおっしゃるのですか。我が身を盾にしてでも将軍を守るのが私の務めです」


 レドンの両腕は黒く焼け焦げていた。


「っ・・・すまん。少し休んでいろ。我と我が忠臣に無礼を働いた愚か者はどこだ!」


「うわぁ!?まだ将軍が生きてるぞ!」


 村人たちは蜘蛛の子を散らすように一斉にその場から逃げていく。

 その間をゆっくりと歩きながらクォンタムは将軍の前へと向かう。


「貴様か。外には相当数の部下がいたはずだが?」


 クォンタムはコンコンと自分のこめかみ当たりを指で叩いて告げる。


「俺の中のセンサーによると敵残存勢力は貴方たちだけらしいです」


「っ!?」


 よく周りを見渡してみると所々に戦闘の跡が見て取れた。

 血だまりや死体も転がっている。


「人じゃなくなった身ですが心苦しいという感情は多少残ってるのでここで退いていただけたらなと」


「ここまでされておいて?退く?冗談にしてはわらえんぞ」


「まぁ、そうでしょうね」


 対峙する両者を不安そうに村人たちが眺めていた。


「だ、大丈夫かなぁ・・・」


「大丈夫。守護神様は強いから!」



「貴様の行動は万死に値する。よって本気で殺してやろう!」


 将軍は先ほどに赤雷の剣に加えてもう一本の剣を取り出した。

 

「見るがいい。我が赤雷の剣と時駆(ときかけ)の剣の威力を!」


「気を付けてください守護神様!奴は魔剣を使います!」


「は?魔剣?」


 すると、また脳内に電子音が。


『データ解析完了。

 <赤雷の剣>

 保有スキル「雷刃」

 電撃を操ることが可能。凄まじい切れ味を有する。

 脅威判定:D


<時駆の剣>     

 保有スキル「時間加速」

 自身の全ての行動、思考を三倍に加速させる。

 脅威判定:A』


「なるほど。武器その物にスキルがついているのか」


「貴様が一体どんな武器を使うのかは知らんが。我が速さには付いてこれまい!我が名はシャバル・クワト!ゾーニ軍が誇る五将軍が一人!その命もらい受ける!」


 クォンタムがレーザーブラスターの銃口を向けると同時にギュオンっといきなり目の前からシャバルの姿が消える。

 それと同時にコンピュータが警告音を鳴らした。

 センサーが敵の方向を矢印で表示する。

 

「右っ!」


 右側のレーザーセイバーを掴んでそのまま下から上降りぬくがすでにシャバルはいない。


「いないっ!?ぐあっ!?」

 

 いないと気づいた瞬間に背後から斬りつけられた!

 左かと思えば右、前かと思えば後ろ、目まぐるしくセンサーの表示が変わっていく。


(センサーも追いきれない!?)


 ビュンビュンと周囲を飛び回るシャバルはクォンタムを滅多切りにしていく!


「ふははははっ!!どうした?私の影すら捉えることが出来んか!」


 両腕で頭をガードしたまま切り刻まれていくクォンタム。


「くっ!この魔剣でこの程度の傷か。なかなか頑丈だがどこまで持つかな?」



「ああっ!?守護神様が・・・。おい、本当に俺ら見てるだけでいいのか!?」


「だけど、行ったところで・・・」


 その時であった。


『大丈夫ですよ』


 クォンタムが渡してくれたエネルギーシールドから彼の声が。


「クォンタムさん!?」


『安心して見ててください。恩は絶対に返します』


 シアルは唇をかむと今にも泣きそうな顔をしながらもクォンタムに祈った。負けないでと。



シャバルの猛攻は止まらない。


「あの世への引導を渡してくれるわ!!」


 シャバルはトドメの一撃をクォンタムの頭部に突き立てる!

 だが!


『戦闘パターン記録完了。内部機能ヲアップグレード完了。敵カラノ攻撃、着弾マデ3,2,1、0』


 ゴシャっ!!

 鈍い音が響いた。だがそれは剣が当たった音ではなく。

 クォンタムの拳がカウンターでシャバルの顔面に叩き込まれた音だった。

 シャバルの甲冑がへしゃげて顔面にめり込む。

 クォンタムはそのままシャバルを地面へと叩きつけた!


「がはぁっ!?」


 地面でワンバウンドしたシャバルの体が反転しうつぶせの状態で地面へと倒れこんだ。

 離れたところから村人たちの歓声が聞こえる。


「が、が、な、なぜ・・・」


 シャバルは顔を押さえてよろめきながらなんとか立ち上がる。


「う~ん。貴方の戦い方を『覚えた』から。かな?」


「た、たったこれだけの内に!?そんな、馬鹿なことがあるかあああああ!!」


 シャバルはまた動を加速させて襲い掛かってきた。

 それに対してクォンタムはレーザーセイバーを取り出す。


「もう一度切り刻んでくれる!!」


「こっちだな」


 クォンタムは誰もいない宙にレーザーセイバーを振るった。

 だがその振るったタイミングがシャバルの動きと完ぺきに合致したのだ!

 ズバンっと時駆の剣を持っている方の腕を切り落とした!


「がああああああっ!?わ、私の腕があああ!」


「ここまでです」


 地面に転がるシャバルに向かって最後の一振りを加える!

 

「させるか!風よ砂塵を巻き起こせ!!」


 クォンタムのまわりに砂塵が巻き起こる!

 彼が一瞬ひるんだ隙を付いてレドンがシャバルを抱えて空へと飛び立った。


「風が使えるとあんなこともできるのか」


 一瞬ではるか空の彼方まで行ってしまった。


『現在ノスラスターデ追ウ事ハ不可能。対象ヲロストシマシタ』


「今回はここまでか・・・」


 ふぅとため息をつこうとするとため息の代わりに排気口から蒸気が出た。


「守護神様ああああ!!」


 決着を見届けた村人たちが一斉にこっち来た。

 その一番前にいるのは・・・。


「クォンタム様!!」


 いの一番にシアルが抱き着いてきた。

 こうして村の危機は去った。

 そしてそれはクォンタムの村と世界の守護神としての冒険の始まりでもあった。


『今回ノ戦闘ニヨリデータガアップグレードサレ『スキル:金型(かながた)の王Lv1』ヲ取得シマシタ』


  

つづく

















 

何とか三話までこぎつけた。一日一話投稿って結構きつい。

でも何とか続けていきたい!あらも目立つと思いますがご容赦くださ!

ではまた次回!

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