第二十一箱 頭部のダメージ加工は1ミリの油断が命取り。
第二十一箱投稿完了!
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『眠い!』
ワーロックのせいで何処かもわからぬリンゴ農園へ来ることになったクォンタム。
クォンタムのコアを拾った少女ティシアの母であるアースに自分の現状を伝えることは成功したものの新しい体は造ってもらえず何故か汚いぬいぐるみに放り込まれて園内の手伝いをさせられることに。
マキーナのメンバーはクォンタム捜索を中断して新たな仲間にワーロックを加えて城へと戻っていた。
ゾーニ軍は五将軍マールガンの訃報が伝わり、ゾーニ王は全身に伝説の魔装具を装備して暴れまわるシャバルをフェイデラ国へと向かわせる。
シャバルの力は既に一国の軍事力を凌駕するほどに高まっていたからだ。
だがその話を聞いていた五将軍マーベックは手柄をシャバルに渡すまいとフェイデラ国へ先回りしようとしていた。
〇
「どっこいしょ」
今クマンタムは町まで荷車で運んだリンゴ箱を果物やスイーツ店、飲食店に下ろしていた。
「お疲れクマンタム君。イヤー助かったよ」
彼はティシアの父、クラッシュ・マウ。クマンタムが居候しているリンゴ農家の経営者。
居候する代わりにお仕事のお手伝いをしている真っ最中だ。
行く先々で可愛い可愛いと女性従業員に名で繰り回されることが少し苦痛である。
「君がいてくれて助かったよ。ティシアもいるが年々辛くなってきていてね。そろそろ人でも雇おうかと思っているんだ」
「収穫とかも全部家族だけでやってるんですか?」
「収穫の時期には他の農家の方々が手伝ってくれるんだ。ウチみたいな小さい農園は持ちつ持たれつで成り立ってるのさ」
クラッシュさんと話しているところにティシアが戻ってきた。
「代金貰ってきたよ!今回は出来がいいっていつもより割り増し!」
「そりゃいい!晩酌も豪勢にできるな!」
「使い過ぎると母さんに怒られるわよ」
楽しそうに話しながら帰路につく。
クマンタムはティシアの腕に抱きかかえられていた。
「まさか私が持って帰ってきた宝石に魂が入っていたなんて驚きだったわ」
「だがそのおかげで可愛い従業員さんが手に入ったんだから感謝しないとな!」
「いや、あの。俺は早く仲間と合流したいので王都へ行きたいんです」
「そう焦らない。王都へは遠いから長い休みを造らないと連れてってやれないからねぇ。そのためにはどんどん仕事を終わらせないと。君の為にも手伝ってね」
「はぁ」
「大丈夫よクマンタムさん。貴方のおかげでほとんど仕事が終わったもの。あと二、三日すれば送ってあげられるわ」
「ほんとぉ?」
「ほんと!」
不安になっていたクマンタムの頭をなでながらティシアは優しく励ましてくれた。
「明日は首都への配送だ。それが終われば残ったリンゴで果実酒づくりをして仕事は一旦終わりだな」
「たしかこの国はフェイデラ国の隣国でしたよね」
「ええ、ケイワン国。フェイデラの東隣に位置してるの。農園はそれの更に東の端っこだけどね」
「それは遠いですね」
「安心してくれ。働いてくれた分はちゃんと返すよ」
「はい。私も王都に送って分は頑張ります」
「頼むよ!」
農園にまで帰り着くとアースが家の前で他の農家の男性と話していた。
「どうかしたのかアース?」
「いや、隣の国の首都がゾーニ軍に壊滅させられたって」
「レーガス国が!?GOP加盟国の中でもフェイデラ国に次いで戦力を持っているはずの…」
「そんな…」
「ここ最近、反フェイデラ同盟の領域内からフェイデラに向かって一直線上にある国の首都が壊滅していってるって話は聞いてたが」
「ここも戦争になるの?」
「「・・・・」」
みんな不安で意気消沈している。
「今は仕事をしましょう!考えても今何もできません」
「そうだな。私たちが不安になってもしょうがない。母さん、夕飯なんだい?」
「シチューだよ!冷める前に早く家に入んな。あんたもありがとうねいろいろ知らせてくれて」
「何言ってんだ今更。だが用心はしとけ。このご時世いつ何が起こるかもわからん」
「ああ。良かったら夕飯食ってくかい?」
「いや、うちの女房が丹精込めて晩飯作ってくれてるんでね。遠慮しとくよ」
農家のおじさんはそう言って自宅へと戻っていった。
マウ一家も家の中へ。
〇
夕食を食べている間にクマンタムはマウ一家のことを色々と聞かされていた。
ティシアが実の子どもではないことやゾーニ国の出身だという事など。
「どういった経緯でお二人はティシアと出会ったんですか?」
「私は十数年前の戦争の時にゾーニ国に攻め込んできたフェイデラ国の兵士たちの慰み者にされてね。そのままさらわれて奴隷商人に売られたの。何とか商人の下から逃げ出したんだけど。右も左もわからない国で一人ぼっちだった私を拾ってくれたのがリンゴを配送してた母さんたちだったの」
「へー…、故郷に帰りたいとは思わなかったの?」
「本当の父は兵士として死に、母は私を攫おうとした兵士に立ち向かって殺されたわ…。兄もいたんだけど今何をしてるか、どこにいるのかもわからない。」
「へ、へー…」
予想以上に重いっ!!
「最初はアタシらにも心は開いてくれなかったよ。当然だけどね。両親を殺して自分を慰み者にした国の人間なんて信じられるわきゃない。旦那なんて果物ナイフで腹刺されたこともあったよねぇ!」
「はははは!そんなこともあったなぁ!寝てるときに布団を蹴脱いでいたからかけなおそうとしたら刺してくるんだものなぁ。びっくりしたなぁ」
笑いながらする話なんだろうかソレ。
その話にティシアはとても申し訳なさそうな顔をしている
「で、でも父さんはそんなことをした私の頭をなでて『大丈夫だ』って笑って言ってくれたの」
「それからだったかね。ティシアからアタシ達に歩み寄ってくれるようになったのは」
「家事や仕事の手伝いを進んでやってくれたよ。そう考えたらこの腹の傷は私たちの絆の証と言っても過言ではないな!!」
この家族、というかこの夫婦は今までなあってきたこの世界の人間の中で聖人と言っていい程に人間が出来ている。
彼らの心根に感動し、同時に罪悪感の様なものがクマンタムの胸に去来していた。
(俺は早くここを出て行かないとこの人たちに危険が…。仕事を手伝い終えたら一人でここを出よう)
〇
一方その頃、マキーナの面々は城へと戻っていた。
ワーロックも王と謁見し、マキーナの新たなメンバーにみとめられた。
「それでクォンタム様が行方不明なのです」
「心配ではあるが今はそれどころではないのだ。現在GOP加盟国の首都が次々に壊滅させらるという事件が起きていてな」
「ゾーニ軍ですか!?」
「いや、目撃証言では首都を襲撃したのはたった一人の人間だそうだ」
「一人!?たった一人で国の首都を・・・!」
「ああ。加盟国の戦力の大部分がいま反フェイデラ同盟との戦いに割かれているとはいえいくらんなでも異常だ」
「では次の我々の任務は」
「ああ、その襲撃者を討ち取ってもらいたい。恐らく次に狙われるのはこの国の東隣のケイワン国だ」
「了解いたしました。マキーナ、出動いたします」
「あの、でも、クォンタム様が‥‥」
「我々は特別部隊とはいえ軍隊だ。命令が最優先なのは変わらない」
「ううぅ~」
「シアルよ。クォンタムの捜索についてはこちらでも手配はしておく」
「王様…。ありがとうございます!」
「では行けい!」
「「「はっ!」」」
こうしてマキーナは図らずもクォンタムのいるケイワン国へ向かう事となった。
〇
翌日。クマンタムは誰よりも早く起きて荷車に今日の分のリンゴを積み込んでいる。
今回の配送はケイワン国の首都だ。それで今ある仕事は終わり。
その後は休みを取って王都まで連れてってくれるという話だ。しかし、
(この仕事が終わったと同時に俺一人で王都に戻ろう)
こうしている間にも反フェイデラ同盟、ゾーニ軍の侵攻は続いているはずだ。
クマンタムの捜索は打ち切られてマキーナには新たな任務が与えられているはず。
皆が戦っているというのに自分だけがここで足踏みしているわけにはいかないのだ。
それにここに自分がいると何か危ないものがやってきそうで怖い。嫌な予感がする。
「朝から精が出るね」
「アースさん」
「焦っちゃいけないよ。言うだろ、急いては事を仕損じるってね」
「でも、俺にはやるべきことがある。返さなきゃならない恩がある。俺がここにいることで既に多くの人に迷惑をかけてるんです。アースさんたちにも…」
「アタシらはアンタを迷惑だなんて思ってないよ。それどころか神様が使わして下さったクマの姿の天使様だとおもってるくらいさ。アンタのおかげで本来なら数週間かかる仕事を数日で終わらせられたんだから」
「俺が言ってるのはこれからの事です」
「これから迷惑かけるって?人間ってのは色んな人に迷惑かけながら生活してる生き物さ。今更一人分の迷惑がかかったところで屁でもないさ。そんなやわじゃないよ!」
「は、はい」
アースさんは本当に人間が出来過ぎているというか肝が据わりすぎているというか。
でも、少しほっとしたクマンタムであった。
このまま自分勝手に出て行ったらこの家族に失礼だ。
「さあ!アタシも朝食の準備だ!今回の配達は量が多いからあたしも付いて行くからね!」
家の中へ戻るアースを見送ると積み込みを最後まで仕上げてからクマンタムも戻った。
〇
そして昼頃、クマンタムたちは首都へ到着していた。
「首都というだけあって栄えてますね。町中がキラキラだ」
「ケイワン国の代表的な物産品は宝石や芸術品だからね。多くの国々の貴族が愛用している我が国の自慢さ!」
「まぁ一般人には手の届かないレベルのモノばかりだけどね」
「アンタ、今日の配達先は?」
「今日は貴族様御用達のレストランにお城の厨房とスイーツ店、最後にGOPの支部だね」
「へぇ、ここのリンゴってお偉いさんにも愛されてるんですね」
「そうよ!父さんが作るリンゴは貴族様の舌も虜にしちゃうんだから」
「さ、今日も張り切って配達だ!まぁ量は多いが配達する場所は4か所だけだしね。クマンタム君がいればおやつ時には終わるだろう」
「あ!だったら私、スイーツ店でお茶したいな!」
「そうだな。折角首都まで来たんだし少し遊んでいくか!」
「羽目を外しすぎんじゃないよ!」
今日も元気よく配達に取り掛かるマウ一家とクマンタム。
そんな彼らのいる首都の上空になにやら鳥のような影が…。
それはカラスの様な真っ黒な鎧に身を包み、蝙蝠の様な羽を背中から生やしていた。
「ああ、ここにもいる。フェイデラ国に毒された下らん連中が。何故だ、何故フェイデラの連中なんかを支持するんだっ!!平和の象徴だからか!?いいや!そんなもの!奴らの平和は上辺だけの戯言だ!虚偽だ!隠蔽だ!フェイクだ!嘘だ、嘘だ、嘘、嘘、ウソ、うそ、ウソ、ウソオオオオオオォっ・・・・・だからこそ」
『俺の妹はああなったんだ!!』
「殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!ころrrrrrrっ!!!」
彼は鋭くとがった爪で自分の甲冑の頭を何度もガリガリと掻き毟る。
しばらくしてその手を止めた。
『仇討ちだ』
黒い殺意の塊が今まさにクォンタムの頭上から降り注ごうとしていた。
つづく




