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転生して1/10プラモになったら村の守り神に間違われた話。  作者: 海人藤カロ
第一章 転生して1/10プラモになったら村の守り神と間違われた話。
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第二箱 ランナーは跡が残らないよう専用ニッパーで斬りましょう。

おはこんばんわー第二箱できましたー!

戦闘描写って意外に難しい。分だけで迫力を伝えるのは限界があるのではとなやんでます。

擬音ばっかりになったらそれはそれでつまらないと思うので。


それでは!お楽しみください!


 機械闘士クォンタムが大好きな青年、祖聖寺 朱火(そせいじ しゅか)は友人の久遠 雷流(くおん らいる)と共にクォンタムの40周年イベントにやってきていた。

 彼らは会場での記念撮影の最中に巨大な地震に見舞われる。

 自身の衝撃で1/1スケール初代機械闘士クォンタムが二人に向かって倒れた。

 雷流を庇って一人クォンタムの下敷きとなった。

 そして死後、彼は初代クォンタムの1/10プラモデルとなって異世界に転生したのである。


               



 プラモデル(組み立て前)になってどこかの洞窟に置き去りにされていた朱火は絶望に打ちひしがれていた。

 

(暗いよー。狭いよー。怖いよー。ここどこだよー。天国に行くんじゃなかったのかよー。雷流元気かな。母さんたちどうしてるだろう。次の仕事も入ってたのにな)


 体が動かない、声も出せない。


 孤独。


 彼の心はそれにさいなまれていく。


(は!そうだ!クォンタムの元祖から最新作まで頭の中で再生しよう!そうすればさみしくない!戦闘シーンも徹底追求だ!そのうちだれか見つけてくれる)


そして誰にも見つからないまま3年の時がながれていった・・・。





 朱火が放置されている洞窟はフェイデラ国の領内にあった。

 フェイデラ国はこの世界の大陸の中で一番巨大な国である。

 過去にあった幾多の戦争を勝ち抜いてきた強国である。

 この国以外は殆どが小国と言われざるを得ない程であった。

 それほどの力を持ってはいたが国王トライブ・フェイデラは何よりも平和と国民の幸福を重んじていた。

 フェイデラ国の思想と多くの国との協調によってこの世界は最後の戦争から10年間平和を保ってきた。


・・・しかし、平和を乱すモノが現れた。


 その名は『ゾーニ国』、周辺諸国の中でも軍事の発展に力を入れていた国であった。

 今までフェイデラ国との協調関係を続けていたにもかかわらずいきなり打倒フェイデラ国を掲げ周辺諸国を次々と侵略または吸収し規模を拡大していった。

 現在ゾーニとフェイデラの戦火は大陸全土まで広がっていた。


 ゾーニとそれに同調した小国から成る『反フェイデラ連合』とフェイデラを中心とした平和維持連合軍『GOPガーディアンズ・オブ・ピース

との戦いだ。

 開戦から3年。戦いは今もなお激しさを増し続けている。




 

 戦争とは自分たちとは関係のない対岸の火事、そう思っている人は多いだろう。

 たとえ自分たちの国が戦争になったとしても国の軍隊が何とかしてくれる、自分たちにまで火の粉が降りかかることはないと。

 だが、その考え方は突発的に打ち壊される。

 今から起こる出来事もその一例であった。


 すでに悲鳴と怒号が飛び交っていた。

 小さな村がゾーニ軍の軍隊に襲われているようだ。

 暗い緑色の甲冑を纏った兵士たちが村人たちを殺戮している。

 その一段の中に一際目立つ血の様な赤い甲冑を身に着けている者がいた。


「将軍!村の物資を全て奪取しました。大した量はありませんでしたが」


「よし。この村の連中は皆殺しにする。全員捕まえて村の集会場に集めるんだ。抵抗するものはその場で殺して構わん。火は放つなよ。煙でGOPの連中に気付かれるかもしれんからな。一人も逃さぬよう注意してな。」


「はっ!」

 

 伝令に来た部下を戦列に戻す。

 赤い甲冑の将軍は生き残りがいないかとあたりを見渡した。

 するともぞもぞと動く影があった。血まみれの村の青年が倒れていた。


「まだ息があるか。若い連中は血の気が多いのはいいが詰めが甘いな」


「な、なぜ・・・」


「ん?なんだ?」


「我々はただ、穏やかな…、何故…」


「貴様らが『フェイデラ国の人間である』というだけで殺すには十分すぎる理由なのさ。私にとってはな」


 腰に下げていた剣を取り、速やかに止めを刺す。

 剣の血をぬぐってさやに戻すと彼はその場を後にした。 




 村近くの森の中を走る二つの影があった。

 女性二人が片方が片方を支えながら必死に走っている。


「もうだめ、私を置いて行って…」


「母さんさっきから何言ってるの?一緒逃げるのよ」


「でも、父さんも殺されて…村も…これからどう生きていけばいいのよ」


「お願いしっかりして!」


 母親の方は精神的に限界だった。

 走ることを止めてその場にうずくまってしまった。

 背後からはガチャガチャと鎧の動く音が迫っている。


(母さんはもう限界だ。どこかに隠れなきゃ…。あれは洞窟?こんなところに洞窟なんてあったんだ) 

 

 周囲に隠れられそうな場所はあの洞窟しかない。

 何とか母を支えながら洞窟の中へと隠れる。


「母さん早く。ちゃんと歩いて!」


 二人は洞窟の奥へ奥へと進む。

 少し遅れて二人を追っていた兵士たちも洞窟の前にやって来た。


「足跡はこっちだな」


「ちっ、この洞窟の中に逃げやがった。松明なんぞ持って来てねぇぞ」


「どうする?」


「誰か灯になるスキル持ってるか?」


 兵士たちは首を振る。


「他の村の連中はみんな広場に集めたし二人ぐらい逃がしたって」


「馬鹿、逃がしてGOPが来たらどうすんだよ。おい、お前火か光のスキルを持ってる奴を呼んで来い」


「はい!」


 兵士の中の一人が駆け足で村へと戻る。


「面倒なところに逃げやがって」





 洞窟の中に逃げこんだ二人だったが光もなく壁伝いにただ前に進むしかなかった。

 今自分たちがどこにいるのかも敵がどこから来るのかもわからない。

 精神を擦り減らしながらも。足を動かす事しかできない。

 だがそれにも限界が来て母の足がもつれた。

 娘が庇おうと体を母の前に出そうとしたとき、背中に何かがぶつかった。


「きゃっ!?なに?」 


 壁ではない。硬い岩の感触はしなかった。

 恐る恐る手を伸ばしてぶつかったモノに触れる。

 この感触は紙だろうか?いや、それにしてはつるつるしている。


「いったいこれは・・・?」


 彼女は一旦母をすわらせ、目の前の道を塞いでいる物体を調べることにした。

 ゆっくりと触れながら全体を手でなぞる


「形からして箱?」


 物体が箱状になっていると気づいた時だった。。


「・・ちで・・・は・・・・・・・・・・・よう・・・・ピット・・う」


 どこからか不気味な声が…。


「誰!?誰なの!?」


 その声はこのつるつるとした箱の中から聞こえるようだ。


「中にいるの?」


 彼女は箱の上部分が二になっていることに気付きそれを持ち上げた。

 大きな蓋だったが女性一人でも持ち上げられるほどに軽かった。 

 中に入っているのは巨大初代クォンタムのキット。しかも全体が光って、脈打っていた。

 だがそんなものを彼女がすぐに理解できるはずもない。


「なんなのこれ?まるで生きてるみたい」


 訳の分からないまま中身を眺めていると箱の中に一冊の本を見つけた。

 そう、取扱説明書である。

 彼女はパーツから発する光で説明書を照らしながらページを開いた。

 書いてある文字はほとんどわからないが絵と記号は読み取れた。


「これは設計図だわ。恐らくこの本に書いてある人型の像を作るための。それでこの光っているのが部品なんだ・・」


 彼女の顔に希望が戻る。彼女は説明書を読んで理解していたのだ。この像が『戦うための兵器』だという事を。


「母さん!私たち助かるかもしれないわ!」


「どういうことだい?一体それは?」


「これは恐らくゴーレムの様なものなのよ。どこかのゴーレム使いがこれを作ってここに隠していたんだわ!これを完成させれば兵士たちをやっつけてくれるかも」


「でも私たちを襲ってくるかもしれないよ?」


「そうかもしれないわね。母さんは壁伝いにさらに奥に進んで隠れて」


「シアル、あんた…!」


「大丈夫、迎えに行くから。私のユニークスキルがあればこのゴーレムをすぐに作り上げて兵士たちなんてやっつけちゃうわ!だから、行って」


「いけないよそんな!」


「母さんがいたって足手まといなの!!」


「う、うぅ・・・」


 母は涙を流しながらシアルを残して洞窟のさらに奥へ。

 シアルは両手でパチンと自分の顔を叩いて渇を入れる。


(組み上げ方はすべて覚えた。集中しろ。いくわよ・・!)


 彼女が目を閉じてクォンタムのキットに手をかざすとランナーが全て宙に浮いてパーツがランナーからひとりでに外れてクォンタムが組みあがっていく。

 シアル・ティセラ。ユニークスキル「ビルド」の所有者。

 設計図と材料がそろっていればどんなものでも短時間で作り上げてしまうという。だが作るには彼女がちゃんと設計図の内容を暗記し、理解していなければならない

 彼女はこの力で村の井戸や水車、風車なども作り上げていた。


(もう少し、もう少しで)


 あと一歩で完成と思われたその瞬間、彼女の背後で爆発が起こった!!


「きゃああっ!?」

 

 シアルはほぼ組み上がったクォンタムごと吹き飛ばされた。

 その爆炎の中から金属が動く音が聞こえる。

 先ほどの兵士たちだ。


「ばかやろう!こんな洞窟で爆発のスキルなんて使うんじゃねぇよ。崩れたらどうすんだ」


「大丈夫だよぉちゃんと加減したから。にしてもお嬢ちゃん俺達の鎧の音にも気づかないとはいったい何をしてたんだい?」


 シアルはクォンタムに覆いかぶさるようにして倒れていた。

 背中と足には火傷と爆で飛んできた小石が突き刺さっている。


「何だこりゃ?でっけー箱。それにみろよ。あの女の下敷きになってる奴!一体なんだ!?」


「人型をしている。まさか戦闘用ゴーレムか?」


「はぁ?そんなもん造れたらとっくに造って戦ってるだろ。多分ここに捨ててあったんだよ。馬鹿な女だな。ゴーレム使いじゃねぇ奴にゴーレムが操れるわけねェだろ!」

 

 シアルは兵士たちの嘲笑を聞きながら歯を食いしばった。

 悔しかったのだ無力な自分が、憎かったのだ笑いながら村の仲間を殺していく奴らが。


「ははは、この女震えていやがるぜ!」


 彼女はクォンタムの最後のパーツを握り締め、祈るように彼に言った。


「お願い、動いて。村の皆を、母を助けて。父の敵を討って。こんな最悪な結末だれも望んでないのよっ!!!」


 そう叫んで最後のパーツをクォンタムの額にはめ込んだ。

 その瞬間、眠り続けていた機械闘士の眼に



            『光が灯った』



 ブシュウウウウ!!っとクォンタムの排気口から蒸気が噴出する!


「なんだ!?」


 クォンタムはゆっくりと立ち上がり兵士たちの方を見据える。


「う、動きやがった!?」


「・・・らえ」


「喋った!?」


 驚いたのもつかの間、背面のスラスターから推進力を得て兵士たちの方へと突進する!


「うわぁああああ!?」


 突進しながら腰の左右につけられたレイザーセイバーを引き抜き・・・。


「市街地戦では敵機を爆発させないようコックピットを狙ええええっ!!」


 という叫びと共にレーザーセイバーが敵の腹部をぶち抜いた!

 血しぶきはでない。あまりの高温に血は蒸発し肉は溶けて固まっている

 レーザーの部分を消して息絶えた兵士の体を蹴り倒す。


「あと三つ!」


「ば、化け物だ!!」


「ひ、光を消せ!ここまでの道のりはほぼ一本道だ!奴の眼が闇になれる前に脱出を!」


「逃がすものかぁ!」


 クォンタムは再びレーザーセイバーに火を灯し、兵士の一人に切りかかった。

 背を向けて逃げる兵士を腰から真っ二つに両断した!


「二つ!!」


「ああああああ!?」


 光のスキルを使っていた兵士が光を消してもう一人と共に一目散に洞窟の出口へと駆け出す!

 

『サーモカメラ起動』


 暗闇の中でクォンタムの視界がサーモグラフィと赤外線を利用したカメラに切り替わる。

 そして腰の後ろに取り付けられたレーザーブラスターを取り出すとサーモカメラでとらえた敵の方へ銃口を向ける。


「見える。敵が見える!」


 引き金を引くと同時に赤い閃光が飛び出した!!



 逃げ出した兵士たちの眼に出口が映った。


「ああっ!!出口だぁ!!」


「早くみんなのところへ!」


 安堵した瞬間、変なことに気付いた。自分の前に影があるのだ。


「後ろが明るい?」


「えっ?」


 背後に違和感を感じて振り返った瞬間。彼らは赤い光に飲まれた。





「四つ」


『反応ロスト。敵戦力の全滅を確認』


 電子音がクォンタムの頭の中に鳴り響いた。



               つづく。


 



 




後書き。

みんなに初代クォンタムと元祖クォンタムの違いが『おおまかに』分かるようにイラストを置いておきます・

初代

挿絵(By みてみん)


元祖

挿絵(By みてみん)


元祖はギャグ路線を言っていた頃の姿です。

外側ではなく内部のフレームが同じなのです。

尖った耳の部分がそっくりでしょ。作者の画力ではここまでが限界です

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 王道人助けストーリーで期待できる。 主人公は必死なのに、村人に伝わってないのがユーモラス。 [気になる点] サイズ感がよく分からないけど、だいたい人間と同じサイズなのかな?
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