第十五箱 モノアイの効果音考えた人は天才だと思う。
やっとできたわー!お待たせしました!楽しんでいってね!
反逆者フリージアへの処罰。それはGOPの新設部隊の責任者になることだった。
その部隊の任務は『敵軍の主要人物の暗殺』というものだった。
さらに王はクォンタムを隊員の一人として指名してきたのだった。
〇
「私をその暗殺部隊にですか?」
「ああ、君はあの『光の天使』と異名を持つヤマトを討ち取ったそうだな」
「え、ああ。あの光る鎧ですか。でもあれは俺の力って言うよりヴァイが一緒にいてくれたからです。闇スキルに精通していたヴァイがいたからこそあいつに対応できたんですから」
当のヴァイはクォンタムに褒められて赤面してうつむいていた。
シアルとドナウはそれを見て少しムッとしている。
「わかっている。ヴァイくんも一緒だ。彼女が持つ妖精族の最上級闇スキルは暗殺の成功率をぐんっと上げてくれるはずだ!」
「なら私も入隊していいですよね!」
王様の勧誘にシアルが割って入った。
「シアルくんだったね。君の能力は出来ればGOP本体の方で使っていただきたいのだが…」
「いやですっ!!私はクォンタム様の従者として旅をしてきたのです!!クォンタム様の為にしかこの力は使いません!!」
「こら小娘!お父様、王になんという口を!」
「あー!!ちょっと待ってください!俺もシアルさんがいてくれないと困るんです!理由を説明しますから」
クォンタムは金型の王の能力とシアルがどれほど必要かを説明する。
クォンタムに自分が必要とされてシアルはとてもうれしそうだった。
それをドナウとヴァイがジト目で睨みつけていた。
「ふむ。確かにその方が暗殺の成功率が上がりそうだのう。わかった!新たな暗殺部隊の隊員はドナウ、クォンタム、ヴァイ、シアルの四人!最後の一人は有望な人材を見つけ次第追加しよう!!ではワシはこのことをGOP各国の責任者連中に報告してくる!明日にでも任務が始まるから心しておくように!」
そう言って王は高笑いしながら執務へと戻っていった。
「では私もこれから軍部の方々に話を通さねばなりませんので。アナタたちは今のうちから新部隊の親睦を深めるように」
そう言って王妃様も行ってしまった。
取り残される新部隊の面々は困惑しながら皆の顔を伺う。
「えーと、結成のお祝いでもしますか?」
〇
そして王城内の一室を借りて親睦会を始めることにした。
「では、新部隊の親睦会を始めまーす!!」
シアルが音頭を取り、周りが拍手するが。
王女とフリージアがしていない。
ただただ重苦しい雰囲気を醸し出している。
(ううう。空気が重いよー。折角お城のシェフの方々が色々と作ってくれたのにー)
「お前ら暗いぞ!いい加減にしろ!特に王女様!もうコイツは裏切らねぇって王様が太鼓判を押してたじゃねぇか」
(ど、ドナウさんがいったー!?)
空気を読まない女ドナウが切り込んでいった。
「こいつはお父様の危機を知っていながら見て見ぬふりをしようとした!!それがただ決闘に負けただけで改心したなどと信用できん!何が隊長だ!!」
「それは私自身も重々承知だ。王は曇っていた私の眼を覚ますために命まで張ってくださった。今の私の命は王のモノ。周りが私の事をどう言おうと構わん罪を償うためにも私はこの任務を遂行する、まずはこの部隊の責任者として命を懸けてこの親睦会を成功させて見せよう!その為にはキレカさまの態度はいただけません!親睦を深めようと頑張っているシアルさんたちの事も考えるべきです!」
(こ、こいつは・・・!!)
自分がこの空気の原因と分かった上で開き直っている。
いや、まぁ、ここまで開き直られると何も言えなくなってしまう。
「もういい!また貴殿が裏切った時は私がその首を跳ねる!そのつもりでいろ!では乾杯だ!!」
「おっしゃ!カンパーイ!」
「「「カンパーイ!!」」」
という訳で親睦会が始まった瞬間だった。
バタンと会場のドアが開く。
そして高笑いと共にある男が入ってきた。
「ハーっハッハッハ!!お待たせしたね皆!!ネス・フェイデラ、ただいま到着だ!!」
「黙れクソ兄様」
(うわ、お兄さんに対して辛辣っ!?)
「はっはっは!こりゃ傑作だ!この身分もスタイルも顔も完ぺきな俺にクソとは!それにその汚い口の利き方は王女とは思えんな!」
「兄様はもう少し慎みを覚えてください。誰にでも上からモノを言うからその年で結婚もできないんですよ(30歳)」
「ハハハこりゃ傑作だ!」
「さっきからそのセリフ言いたいだけでしょう!!すぐ読んでる本の影響を受けるんだから!!」
「まぁそれはそれとしてそちらの美しいお嬢さん。私とお茶でもいかがですか?」
「お断りします」
「そう言わずに。隣国から取り寄せた高級な茶葉をご用意いたしています。さぁ」
ネスはテーブルについて食事を楽しむシアルに片膝をついて手を差し出した。
と同時に手をはたかれる。
「お断りします。タイプじゃないんで」
「・・・ハッハッハ!こりゃ」
「もういいですからそれ!」
「ならばそちらの艶めく黒妖精のお嬢さ…」
「消えてください」
「・・・・こ」
「だから!!」
「これは一本取られたなぁ!」
(あ、この人変化付けてきやがった)
決め台詞の変更に開いた口が塞がらないキレカ。
「ん~?我が妹よ『だから!!』なんだ?おれは『こりゃ傑作だ』なんて言ってないぞ?何が『だから』なんだぁ~?行ってみたまえ、発言を許そうwwww」
「…女性たちに相手にされないからと私に八つ当たりしないで下さい!」
「ん~?八つ当たりなんてしていな~い。ただお前の『だから!!』の後の言葉を聞きたいだけなんだが~?」
ブチっという音がハッキリと聞こえた気がした。
「表に出なさいクソ兄さま!!」
「表には出ない!お前に体力では絶対勝てんからな!蔵書室に入れ!魔装具製造に関する論文で勝負だ!」
「私が頭で兄さまに勝てるわけないでしょう!」
「なら俺の勝ちだな!!」
「なんでそうなるんですか!!」
クォンタムは王女と王子の兄弟喧嘩をほほえましく見守っていた。
さんざん言い合って落ち着いたのか王子の視線がクォンタムの方へ向いた。
「まぁ妹との戯れはこれくらいにしてと。君がクォンタムか父上を凶賊から救ってくれたこと礼を言う」
ネスは深々と頭を下げた。
「王子様!?いいですよ!頭を上げて!」
「にしても…」
ネスはクォンタムの体を上から下まで嘗め回すように見る。
「君、ちょっと僕に解体されてみないかい?」
「「「はぁ!?」」」
「私は優秀な知恵者であり研究者の端くれでもある。君が一体どうやって作られたのか大変気になるんだ!解体させてくれ!試験官から聞いた話によると君をくみ上げたのはシアルさんだったね。君の意見も聞きたい!くみ上げる時に気になったモノ、構造、何でもいい!私にくれないか!」
「いや!だめですよ!」
「私は別にいいですが」
「いいんですか!?」
「いいならアタシもクォンタムの中見たいぞ!」
「私は一度クォンタム様の中に入れてもらったことがあります(照」
「な、何ですってー!!」
シアルがヴァイを掴もうとするとひらりとそれをかわす。
「クォンタム様の中は優しく温もりがあってまるで私もクォンタム様の一部になったかのようでした」
「き、きぃいいいい!!クォンタム様!私も中に!!」
「しっかりしてシアルさん!無理ですからね!」
むぅーっと泣きそうになってむくれている。
そんな彼らを見て王子は笑顔を浮かべていた。
「いやー新設された部隊、しかも暗殺が主な任務だと聞いていたからどんな陰気なやつが来るかと思っていたがこの面子ならうまく行きそうだ。フリージアもいるしな」
「お、王子。その言葉、胸に刻ませていただきます」
「さて、私も本格的に親睦会に参加しようか!!」
ネスが参加したことによってキレカの怒号が飛び交う親睦会となった。
〇
「はっはっは!皆楽しめたようだな!」
「おう!アタシも大満足だぜ!!」
「ドナウさんもいい飲みっぷりだったよ!」
肩を抱き合いながら高笑いする二人。どうやらこの二人のノリが似ているようだ。
その時、部屋の戸を開けて王の従者が入ってきた。
「皆さま、王より最初の指令です」
「よっしゃ!」
「来たか」
「王の期待に応えて見せよう」
親睦会の後片付けを侍従たちに任せてみんなで王の下へ。
謁見の間へとたどり着き、みな王の前で跪いた。
「面を上げろ。では、お前たちに最初の指令を伝える。ゾーニ軍の一大隊がフェイデラ国内に隠密の拠点を築いているという報告があった。率いているのは五将軍の一人、マールガン・ガウ。今回の標的だ。奴らはフェイデラ国の国境付近にあるガウラハの森に向かっているそうだ」
「ガウラハの森ですと!?」
「何か知ってるんですか?」
「ああ、強い魔物たちが生息する危険な森だ。近隣住民も滅多に近づかない。それにあそこには恐ろしい魔女が住んでいるという噂もある」
「魔女?」
「ああ、時折森からローブをかぶった美しい女性が出てきたという目撃証言が数百年前から記録されている。今もなおその目撃証言がある。しかもその女性の顔は数百年間変わっていないと」
「捕まえたりしないんですか?」
「いや。特に悪事を働いたという証拠もない。ただ住民から不気味だと…」
「今回はその魔女についても調べてきて欲しいのだ。ワシも若いころからずっと気になっとったんで。では行くがよい!新設暗殺部隊よ!」
〇
と、いう訳で王都を出発した新設暗殺部隊一行。
「ではガウラハの森へ向かうが準備に抜かりはないか?」
「お前に言われるまでもなく準備万端だ!」
キレカ王女は巨大なリュックサックをパンパンにするほど物を詰め込んで背負っていた。
「・・・キレカ様。それはあまりに」
「何を言っている!軍の遠征に付いて行ったときはいつもこれくらい持って行っていたぞ!」
「いえ、我々は隠密活動を旨としなければならない暗殺部隊なのです。出来るだけ持ち物は少なく目立たぬように…」
「そういう貴様だって大剣を背負っているではないか!!」
「私はこの慣れ親しんだ武器が良いのです!今更暗殺用の短剣など使うよりよっぽど早く取り回しができます!それ以外は必要最低限しか持っていません!!見てください!ドナウ様や他の方々は殆ど何も持ってないではないですか!!」
「た、確かに。というかお前たち何も持たなすぎでは?」
「あー、アタシは自分のスキルで武器や荷物は運べるから。何も持ってないようで別空間にちゃんとある」
「兄様は着の身着のままじゃないですか!」
「この私の荷物は全てクォンタム君のコンテナの中に入っている!!」
「こ、こんてな?」
クォンタムが背負っている四角い箱である。
「兄様の持ち物があんな箱程度に収まるというのですか!?」
「おさまっちゃうんだなぁこれが!何とこのコンテナとやら、内部に凄まじく広い異空間が形成されているようでな!牛100頭だろうが放り込めるだろうと私は予想している!」
「キレカ様もよかったら入れますか?」
「なんでもかんでも放り込んだら中がぐちゃぐちゃになるのでは?」
「それも心配ない!見ていろ。カモン!マイスティック!!」
ネスがそう言うとコンテナから宝石の装飾のついた杖が飛び出してネスの手元へ。
「このようにコンテナに向かって自分の入れたものをイメージしながら呼べば手元に飛んでくるのさ!」
「確かにこれなら整理整頓の必要がない。よし!ならば私も入れさせてくれ!」
キレカの持って来ていた者は殆どが食料とお酒であった。
「こんなにお酒要るんですか?」
「馬鹿者!戦場で不安を消し飛ばしたり、寒い土地で暖を取る時などにはよく使われるんだ。現地人との取引の交渉材料にもなる」
「なるほど」
皆の荷物をコンテナに詰め終わるとクォンタムはヤマトとの戦いで成長した金型の王に追加された新たなキットを生成する。
それは軍事用ジープであった。
「シアルさん」
「ハイ!お任せを!」
シアルに任せればこんな物でも数分で出来上がった。
「はい!完成です!説明書によると兵隊さんを運ぶための荷車のようですね!」
「すごいな!でも荷車を引く家畜がいないぞ?」
「まぁ、乗ってみてくださいよ」
クォンタムが運転席に乗り込み、仲間たちが全員乗ったのを確認するとアクセルを踏む。
気持ちのいい音を立ててジープは勢いよく発進した。
「す、すごい。何という速さだ!馬など目じゃない!揺れも少ないし」
「確かに快適だが少し音が大きすぎないか?このじーぷとやら隠密活動には向かんぞ」
「それなら私にお任せを」
ヴァイが運転席のクォンタムの膝の上にちょこんと座ると闇スキルを発動する。
するとジープから発せられていた音がすべて消えた。
「おお、さすが闇の妖精」
ヴァイはえっへんと胸を張っていた。
「これなら半日もすればガウラハの森へ付けると思います」
「ふむ、なら到着までの間に『部隊名』でも決めるか?」
「いいな!ずっと新設暗殺部隊じゃ締まらねぇもんな!」
「私が提案するのは『美しき王子ネスと家臣たちによる崇高なる暗殺団』というのはどうかね?」
「長いわ!!」
「だが誰にでも覚えてもらえるぞ!インパクトは大事だ!」
「暗殺部隊が名を売ってどうするんですか!!ここは私が持つ剣の名にちなんでスカーレットアサシンなんていかがかしら?」
「はっ!短絡的な名前だなぁ~」
「兄様のより百倍マシです!!」
「ここはやっぱりアタシのサルトゥアクラーヌ暗殺団で!」
「それでは貴方がリーダーみたいじゃない!!」
「いいだろアタシがリーダーで!」
「キレカ様、部隊長は私なので私の名前も入れてほし‥‥」
「裏切り者は黙ってなさい!!」
「は、はい」
「というか一番の戦力であるクォンタム様のお名前が入っておりません!!」
「そうです!『クォンタム様』は必須ですよ!!」
「それではクォンタムがリーダーになってしまうではないですか!」
「それの何がいけないんですか!!」
皆それぞれギャアギャアと自分の考えた部隊名を言い合うが一向にまとまらない。
という訳で最終的にくじ引きで決めることとなった。
皆それぞれ紙に書いた部隊名を袋の中に入れてそれをフリージアに一枚引いてもらう。
「では、引かせていただきます」
フリージアが袋の中から一枚を取り出した。
(サルトゥアクラーヌ暗殺団!)
(スカーレットアサシン!)
(美しき王子ネスと家臣たちによる崇高なる暗殺団!)
(見えざる者・フリージア部隊!!)
(クォンタム&シアルの暗殺家族!!)
(機械主人と闇妖精!!)
(まぁどれでもいいけど)
それぞれの思惑を胸に引き当てられた名前とは・・・。
「暗殺部隊マキーナ」
「マキーナ?」
「あ、俺のヤツ」
「クォンタム様の!どういう意味なのですか?」
「機械仕掛けの神様の名前をそのまま書いたんだが」
「機械仕掛けの神…あなたの事を表しているという事か。ふふふ、ゴーレムが神を気取ろうとは面白い。いいじゃない、気に入ったわ」
「マキーナ。簡単だがどことなく高貴な響き。うん、私ほどじゃないが良いセンスだ」
「決まりです!!」
「アタシもクォンタムが決めたんなら異論はねぇぞ!!」
「なら、決定だ。これから我らの部隊名は『マキーナ』とする!」
暗殺部隊マキーナ。
彼らの最初の仕事は今までにないほど苛烈な戦いとなるだろう。
つづく
ここまでが物語の序章。やっと終わった感じです!
ではまた次回!




