第十二箱 プラモ買った時についてる兵士はいつの間にか消えてるから怖い。
おまたせしました!第十二箱始まります!
クォンタム一行はGOPに入隊するため王都にやって来た。
クォンタムは王都の近くにある大きな森での体力、精神力測定のためのサバイバルを入団試験として行うことに。
シアル、ヴァイは特殊なスキルをどれほど使えるかを検査するためスキルの訓練場に行くこととなった。
なお、ヴァイは脱走しクォンタムの方へと付いて行った。
〇
ビゴロの森。
GOPの入団試験に使われている王都近くにある巨大な森である。
ビゴロという魔物が多く生息しているところから名付けられた。巨大な羽を持ち、細長い腕と三本に分かれた指に鋭い爪、つぶれたカエルの様ないでたちの高速で空を飛び回る魔物である。肉食。
森全体に巨大な結界が施されており一般人はそこへは入れない。森の結界の管理をしている者にGOPの兵隊証か試験官の刻印を持つものだけが入ることを許されている。
クォンタムは今、森のスタートラインに立っていた。
『じゃあはじめてください!死なないように気を付けて』
「で、なんでドナウさんもここに?」
「いやー、アタシはスカウト枠だから試験受けたやつにあとで何癖付けられないか心配で!やらなくてもいいけどやっとこうと!」
「気にする人でもないでしょうに。じゃ、行くか!」
この森は普通の森よりも巨大な木々に囲まれていて根っこだらけの地上を走るよりも木々の上を跳んで移動した方が早い。
しかし、その木の上の方にこそビゴロが住んでいるのだ。
身軽なものが安易に楽な道を選ぼうとすると集団でビゴロに襲われる!
地面にも狼や他の恐ろしい魔物、獣がうろついている。ここを切り抜けるのに正規兵でも一週間かかるといわれるのはそのためだ!
だが。
「ここまでの道中に魔物なんて出なかったから新鮮だな!」
「確かにな!こりゃおもしれえ!」
この二人はその範疇にはいなかった。
木の上を跳び回り、おそってくるビゴロたちを次々に撃ち落としていた。
クォンタムはレーザーブレードでドナウは再びクォンタムから授かったウッドペッカーとエレメントナイフでまるで羽虫の群れに殺虫剤を吹きかけたかの如く次々と叩き落していった。
そうして進んでいくうちにビゴロも寄ってこなくなった。
「だいぶ楽になったな」
「アタシらが危ないって気づいたんだろ。日が暮れる前に進んじまおうぜ」
ビゴロが襲ってこなくなったことにより一週間かかると思われた試験コースの半分を夜までに踏破。
日も落ちて下に降りて野営をすることにした。
「地図の通りだともう半分来たな。あと一日で行けるんじゃね?」
「いや、こっからはまた様子が違う。なぜかこの森、ここからすげぇ霧が濃くなってるんだ」
そう、いまクォンタムたちがいるのは森の中間。
ここから先は深い霧が発生している。そしてまるで壁でもあるかのようにその霧は中間からこちらへは寄ってこないのである。
「おそらく試験用に色んな仕掛けがしてあるんだろうな」
「ああ、あの霧の中に生体反応がわんさかある。ビゴロみたいにある程度たおしたら退いてくれたらいいんだけどな」
「こういう視界の悪い中で狩りをする連中ってのは大体目が退化してたり他の器官が発達してたりするからな。ヤバイ状況を目の当たりにできない分しつこいんだよ」
『ならば。私の出番ですね』
唐突にクォンタムの耳の近くで声がした。
それに驚いて彼の体が跳ねる。
「ヴァイ、お前付いてきてたのか。おどかすな!それと試験はどうしたんだよ!」
「私はいついかなる時もクォンタム様のお役に立つためにいます。GOPなど知ったことではありません。どこに配属されようが私は貴方のお側にいます。ともに死ぬるときまで」
「だから俺をよりどころにするなと…もういい」
「でも丁度良かったじゃねぇか。ヴァイがいれば楽にここを通過できるぜ!」
「ドナウさま、言っておきますが私が仕えているのはクォンタム様です。勝手にここへ来た貴女に力を貸す気などありません」
「な!テメェ!命の恩人に向かって!!」
「確かに貴女は私を見つけましたが地下から出してくださったのも家族の敵を討ってくださったのもクォンタム様です」
「なんだその言い草!」
「頼むから喧嘩しないでくれよ」
ギャアギャアという騒音と共に夜は更けていく。
〇
その頃、シアルは・・・・。
「な、なんと」
一瞬で軍事用要塞の壁をくみ上げていた。
彼女の『ビルド』はクォンタムの様々なキットを作っている内に凄まじい成長を遂げていた。
(す、すごい。この子がいれば敵陣にいきなり砦を築くことも可能…)
「もういいですか!早くコースに行かせてください!!」
「あ、ああ。でももう夜だし」
「行・か・せ・て・く・だ・さ・い!!」
「わ、わかった」
クォンタムと同じように試験用のバッグを渡す。
それを手に持った彼女はVRヘッドを取り出すと金型の王を起動する。
現在金型の王は先のシャバルとの戦いの経験値でLv4まで成長し、作り出せるキットも増えていた。
そのキットの中から空中戦用補助メカ『ゾーリ』のキットを出すとすぐさま作り上げてそれに乗って飛んで行ってしまった。
「すごいなぁ…」
そこへ。
「すごい音がしたのだけれど、何かあったの?」
「あ、キレカ王女様!なぜここに?」
「ちょっと剣を振りに来ただけだ。あの空を飛ぶ光は」
「あ、はい。本日入団希望してきたものでユニークスキル『ビルド』の持ち主です。どんなものも設計図と材料さえあればくみ上げてしまえるという!見てくださいあの城壁!あれをモノの数分で作り上げたのです!」
「なんと」
フェイデラ国王女、キレカ・フェイデラ。
女だてらに剣を振り、その力は将軍フリージアに匹敵するとまで言われる美しき女剣士。
「空を飛べる物まで作れるのか!」
「ああ、それはもう一人のスキルでして。彼女の力は組み立てるだけです」
「どういうことだ?」
試験官はキレカにクォンタムの事を話す。
「伝説の賢者が作ったゴーレム。心を持ち、感情を持つか」
「はい!彼はゾーニ軍と戦うために来たといっていました。良い戦力となってくれるでしょう!」
「どれほどのものか少し興味があるな。もしクォンタムとやらが帰ってきたら私を呼べ。手合わせしたい!」
「ちょっとキレカ様!ここで問題起こされたら私がフリージアさんに怒られるんですよ!」
試験官の心配をよそにワクワクするキレカであった。
〇
そして次の日の朝。
クォンタムは珍しくタイマーをかけてスリープモードに入っていた。
スリープモードでいるメリットは体から全ての熱が排出されて体の切れが増すことだ。
そして再起動し目を開くと。
彼の右腕にはドナウが胸の上にはヴァイが左腕にはシアルが眠っていた。
「シアルさん!?」
「んう…、あ!おはようございます!」
シアルは両手に新たなキット、二重連レーザーガトリングを両手に装着していた。
しかも服がクォンタムのパイロットが着ている白兵戦用スーツ。こんなキットもあったのか。
最近はキット管理をシアルさんに任せていたのだが隠れて色々作っているのでは…。
そして体中が何らかの生物の対液まみれだった。恐らくビゴロの体液だろう。
「あの、まずはあっちにある小川で体洗ってきた方がよろしいのでは?」
「あ!そうですね!」
シアルはすぐ立ち上がって小川に向かった。
そしてクォンタムも乗っかっている後二人を起こす。
「ふあああ。おはよ~クォンタム」
「すみません、クォンタム様に起こしていただいてしまって」
「いや、それくらいいよ。二人とも顔洗ってきなよ」
二人も小川の方へ行くとシアルと会ったのか驚いたような声を上げていた。
ここから試験のコースは後半、油断せずいこう。
〇
そこからはハプニングの連続であった。
二日目は霧を発生させる顔が二つある巨大な蛇グッゾをヴァイの闇スキルでやりすごし、三日目は森そのものが食人植物と化しているエリアで巨大ラフレシア型魔植物アッグイのスキルを封じる花粉攻撃を乗り切って森の出口にある湖まで到着した。
そこで待っていたのは‥‥。
「アグググググゥ!!」
背中に巨大なフジツボ魔獣を背負った巨大蟹型魔獣『キャンサークラーブロ』であった。
「蟹だ!あいつ火を通すとうまいんだぜ!」
「ならばブラスターだと溶かしちまうからこいつだ!ヴァイ、俺の中に」
「はい!いつでもおります!」
クォンタムはクォンタムアズラーイルに姿を変えてコックピットにヴァイを入れる。
クラーブロは背中のフジツボから溶解液を噴射しようとするが。
「させません!!」
シアルの両腕のレーザーガトリング四門の一斉射撃でフジツボが破裂してクラーブロは自身の背中に大量の溶解液が!
「こら!溶かしちまったら食えねぇだろうが!」
ドナウは氷のエレメントナイフを投げつけて溶解液を凍らせた。
更に二本のチェーンで両側の足全てを一纏めにした!
「アグゥ!?」
完ぺきに身動きが取れなくなったクラーブロの額の上にいつの間にかクォンタムアズラーイルが乗っかっていた。
ヴァイの能力で存在感を消しているので蟹も気づいていない。
「あらよっと」
巨大なレーザーサイズを振りおろし、頭を両断する。
「いっちょ上がり!」
「よっしゃ!」
こうして森を突破して今日の晩飯を手に入れたのだった。
「いったん凍らして城まで持って帰ろうか」
「おう!」
〇
クォンタムたちは凍った蟹を輸送コンテナの中に入れてGOPの試験官のところに戻ってきた。
ついた頃には
「ただいま帰りました!!」
「二日で帰ってきたのか!刻印で居場所はちゃんとわかってたけど半信半疑だったんだが。すごいな君たち」
「あ、これお土産です」
コンテの中から氷漬けにしたクラーブロを取り出した。
「クラーブロ!倒してきたのかい!?」
「ええ。ドナウさんがおいしいというのでみんなで食べようかと」
「こいつの背中についているフジツボでだしを取ったスープが最高なんだ!こいつ自身も焼いてもゆでてもうまいんだよ!っと、それより。クォンタムくんとシアルくんは合格だ。明日には正式に入隊手続きが完了するだろう。配属が決まるまでは王都にいてくれ。」
「あの私は?」
「ヴァイ君はスキルの検査がまだだろう?」
「そうでした」
「クォンタム君のスキルも一応確認しておきたいから明日彼女と一緒に検査を受けてくれないかい?」
「明日でいいんですか?」
「今日はもう日が暮れてしまうからね。ここから検査となるとちと長い」
「検査うけたら自分のスキルの詳しい事とか分かりますか?」
「うーん、ここではスキルがどれほど使えるかを確かめるだけだからなぁ。何か自分のスキルに問題でもあるのかい?」
「俺みたいな存在がスキルを持ったことがなんとも不思議なんですよ。もしスキル発生の経緯とか分かれば」
「となるとスキルの研究者に頼んだ方がいいね。君はとても稀有な存在だろうから生半可じゃだめだ。私が知ってる中で最高の研究者がいるけど会いに行ってみるかい?」
「お願いします!」
「なら紹介状を書いてあげるよ。辺境に住んでてとても性格に難がある人だからちょっと困るかもしれないけど」
「えぇ…」
「明日検査が終わり次第、紹介状を渡そう」
「はい」
と、いう訳でやっと試験が終わった。
「さてどうする?宿の前に飯でもいくか?」
「まだ宿決まってなかったのかい?」
「王都についてから直接ここに来たからな」
「もしよかったらGOPの宿舎に泊まっていくかい?」
「いいのか?」
「もう入隊は決まってるようなものだからね。食堂もあるからそこで食事もとれるよ。お風呂も付いてるよ」
「お風呂!」
「じゃあお言葉に甘えて」
という訳でGOPの宿舎に案内してもらうことに。
〇
「あっちが男性用宿舎、門を挟んで向こう側が女性用だ。男性が女性用宿舎に入る場合は宿舎の管理人の許可がいる。勝手に入ったら入隊取り消しの上に超高額の罰金が課せられるからね。くれぐれも邪な考えは起こさぬように」
「じゃあまた明日な!」
「クォンタム様、何かあったらすぐお呼びくださいね!」
「では主様」
クォンタムはシアル達と別れて男性用宿舎の一室へ。
机にベッド。空き部屋なので別に他のものはない。
ゴロンとベッドの上に転がる。
「タイマーかけてスリープするか。いや、何かあったら対応できないな。このまま起動継続」
寝転がっていても特に休まる気がしないのがこの体の嫌なところだ。
暇だしスキルに増えたキットの確認でもしておこう。
金型の王を起動して増えたキットに目を通していく。
「空中戦用の補助メカ「ゾーリ」にレーザーガトリング。ん?レベルアップで解放される機体があるのか」
解放されていたのは量産型クォンタムの機体だった。
量産型は装甲も薄く、武器もクォンタムほどの火力はない。
コストカットの末に大量に作られたがワンオフの機体のやられ役として設計されたような機体だった。
説明文に『コノ機体は三体製造可能。自立機動型デ命令二従ッテ行動シマス』と書かれていた。
「まだ使う機会はないかな」
そして次のキットに目を移すと。
「これって」
そこにあったのは武器でもなければ機体でもなかった。
「…」
〇
風呂から上がったシアルは与えられた部屋でVRヘッドを使っていた。
今作れるキットを確認していたのである。
すると、クォンタムからVRヘッドを通して通信が。
「はい!どうかなされましたか?」
『今大丈夫ですか?』
「ええ」
『作ってもらいたいものがあるんです』
「はい。どのキットですか?」
『えーと…』
クォンタムの指示でシアルが作り出したのは二つの機械。
一つは何かのスイッチ、二つ目はハードディスクの集合体のような形をしていた。
二つ目の機械からコードを伸ばしてVRヘッドにつなげる。
『ダウンロード完了』
その音声が流れた後、つなげた機械はまるで霧のようにその場から消えた。
『ありがとう。もういいよ』
「あ、あの、こんなものを作る必要があったのですか?」
『万が一のためです。できることなら使いたくないけど』
「私も使いたくありません」
『いや、これを任せられるのはシアルさんしかいないんです。俺を起こしてくれた貴女に持っていて欲しい』
「…わかりました」
『では、おやすみなさい』
「お、おやすみなさい」
通信が切れるとシアルは深いため息をつく。
そして自分の手の中にある何かのスイッチを憂鬱な表情でながめていた。
彼女はもういちどVRヘッドをかぶって作ったキットの説明に目を通す。
「コンヴィクトシステム…」
コンヴィクトシステム。
そのシステムが持つ恐るべき力を彼女が目の当たりにするのはそう遠くない。
〇
夜も更けて。王城に忍び寄る影が四つ。
そして王城の中庭にコローシが立っていた。
「着いたか」
コローシの下に黒いマントで身を包んだ男たちがやってくる。
「はい。我ら夜を駆ける暗殺者」
「ヤマト」「カシツネ!」「オクジ!」「…ウェイ」
「「我らイービル・フォー」」
「こら!ヤマト!ウェイ!ちゃんと言わんか!新入りのカシツネはちゃんと言ってるぞ!」
「知るか」
「ちょ、ちょっと恥ずかしくて」
イービルフォー。
誰もかれもから死を望まれている四人の賞金首兼暗殺者集団。
やって来たことの醜悪さから国問わず全ての人々に嫌われている。
自分の思いのままに行動することをモットーとしその結果関係ない人間が傷つこうと意にも介さない。
団体名はカシツネとオクジで考えた。
「静かにしろ。それでも暗殺者か」
「で、今回のターゲットはあのフェイデラ王とか」
「ああ、頼むぞ」
「でも、やっぱり殺すのは良くないよ。手足をちぎって動けなくすればいいんじゃないかな?どこかに閉じ込めておけば」
「なにを甘いを事を言っているんだヤマト!コローシ殿が言っていたではないかフェイデラ王にこのまま国を任せていては国が滅ぶと!この国の目を覚ますための正義の一撃を王に見舞わねば!」
そう鼻息荒くオクジが熱弁する。
「オクジの言う通りさ!僕たちは今まで自分の正義を貫くために戦ってきたんだ!」
「分かってくれるかカシツネ!」
そんな二人を横目にウェイはとてつもなく嫌そうな表情でため息をはいた。
(正義、正義と簡単にのたまうなよバカどもが)
と思いながらも黙っていた。
「…まぁ、任せたぞ」
「ハイ!ではウェイよ。闇スキルで俺たちの姿を消せ!」
「わかってるよ」
このチームは基本的にウェイとヤマトがいないと成り立っていない。
ウェイの闇スキルによる隠密とヤマトの高い戦闘能力がこのチームの要。
オクジは元々貴族の子息で隠し財産を持っているだけ。チームの財布である。
カシツネはオクジが酒場で意気投合してチームに連れてきた気持ちだけの役立たずである。
カシツネを入れないとオクジがスネてしまうので仕方なく仲間に入れたのだ。
(はぁ、とっととオクジの隠し財産を見つけてバカ二人を始末しないと)
そんな暗殺者二人とバカ二人が王の身に迫る。
〇
その頃、クォンタムはGOP訓練場にいた。
そして彼の目の前にはキレカ王女様がいらっしゃった。
事は数十分前に遡る。
クォンタムが部屋で寝っ転がっていると。
いきなり部屋のドアが開かれた。鍵もかけていたのに壊して。
『お前がクォンタムか!一戦交えるぞ!全くあの試験官め!教えろと言っておいたのにこんな時間になって連絡してくるなんて!』
『え!?どちら様?』
『いいから来い!』
という訳である!
「ほら!早く獲物を抜け!」
「勝手にこんなことしていいんですか?王女様に剣を向けるなんて」
「大丈夫だ!私が許す!」
キレカさまは意気揚々と腰に下げている魔剣を抜いてくる。
「我がおばあ様より授かりし魔剣『スカーレット』!どう捌くか見せてもらう!」
「いや、ちょっ!?」
彼女が切りかかってきそうになった時であった。
『クォンタム様』
クォンタムの顔の正面にヴァイが現れた。
「うわぁ!?」
「なんだ!?妖精?」
「だから脅かすな!」
「それはお詫びします。お伝えしたいことがあってきました」
「なんだ?」
「私と同じ闇スキルを使う者が近くにいます」
「何っ!?」
「クォンタム様を狙った暗殺者ではないかと思いここまで飛んできたのです!」
「えーと、王女様は闇スキル持ってます?」
「いいや、私が持っているのは持ち前のユニークスキルだけだ」
「そいつらは今この周辺にいるのか?」
「感じたのはあちらの方向です」
ヴァイは城の方を指さした。
「城!?ま、まさかお父様に!」
「間違いないのか?」
「はい、妖精族はエレメントの力を感じることにかけては世界一です。それが自分と同系統ならばなおさら」
「しかし、王城には侵入者を阻む結界が張られているはずだ。暗殺者など入れるはずが…。いや、でも…」
何かを言いあぐねている王女様。
「内通者がいれば別…ですか?」
「ああ、王城内にいる者には結界を通るための条件を教えている。だから…」
答えは分かり切っていたが彼女は悩んでいた。
恐らく身内に裏切り者が出たことを認めたくないのだろう。それほど身の回りの人間たちを信頼していたのだ。
王女様の様子を見てクォンタムは持って来ていたコンテナを背負う。
「行きましょう」
「え…」
「勘違いならよし。本当にいれば撃退すればいい。捕まえれば犯人も割れる。でしょ?」
「そうだな!一緒に行こう!私と一緒ならお前達も結界を超えられる!」
彼女の決断を後押ししてクォンタムたちは王城へと向かう。
〇
王城内、王の寝室の扉の前。
そこには闇スキルを解いたヤマトとウェイの姿があった。
オクジとカシツネの姿はない。
「あいつら…」
「まよってはぐれちゃったのかな?」
「だからあれだけ城の見取り図を頭に入れておけと言ったのに!!!」
ウェイの闇スキルは姿を消すことは出来るがそれほど使い勝手がいいモノではない。
姿を消すと仲間同士も見えなくなる。隠密活動なので音も消している。
仲間の後ろを付いて行くという事が出来ないのだ。自分でちゃんと目的地を覚えるしかないのだが。
(これで何度目だ!!ちっ…まぁいいか。後で回収しよう)
「二人でやるぞヤマト」
「いつも通りだね」
彼が王の寝室のドアノブに手を駆けようとした時。
彼の手に向かって何かが飛んでくる!
ウェイはそれに気づいてとっさに手を引くとドアノブが吹き飛んだ。
ヤマトは気づいてもいない。
「うわっ!ドアノブが音もなく!?どんだけ強く握ったんだよウェイ!!」
「違う!これは‥」
「さすがは同じ闇スキル持ち。気づくとは」
飛んできた方向を見るとそこには人影。
そこにいたのは肩に黒い妖精を乗せた白い鎧。
「アンタが暗殺者かい?」
「お前らは…」
「クォンタム」
「ちっ!」
ウェイたちはまた姿を消して逃げようとするが。
「斜め左前ですね」
逃げようとしたウェイの左耳をレーザーが吹き飛ばした!
「っ~~~~!?」
(コイツ…俺たちが見えているのか!?)
「大体の居場所しかわからないからちゃんと命中しないな」
腐っても暗殺者。激痛だが叫び声は上げない。しかしスキルでのステルスが解かれてしまった。
そんな彼の前ヤマトが出た。
「ウェイ!行って!」
「ヤマト…」
「大丈夫、きっと追いつくから!」
「すまない!」
振り返らずにウェイはヤマトを置いて姿をけした。
「アンタは?」
「ヤマト」
彼が腰から剣の柄の様なものを取り出した。
つまり刀身のない剣。
ブォンっと柄の部分から光の刃が飛び出す。
「レーザーブレード!?」
『解析完了。スキル『成形』ト断定』
「成形?」
「聞いたことがあります。触れたモノに形を与えるスキル。恐らくあの剣の柄が魔装具で彼は光のスキル持ち」
「自分で出した光に剣の形を与えてるってわけか」
「剣、だけかな?」
ヤマトは全身から光を発してそれを鎧に変換して身にまとう!
背中に光の羽まで生やしている。
「まるで光る天使だな…」
「いきます!」
ヤマトの姿がクォンタムの視界から消える。
次の瞬間クォンタムの体が吹き飛ばされ、廊下の窓ガラスを突き破り外へ放り出された。
「!?」
王の寝室がある階は王城の三階。
王城は少し地面から盛り上がった地形に作られているため吹き飛ばされた場所は地上10mほど。
クォンタムはすぐさま機体をフルブースターに変えて空中に浮遊する。
「クォンタム様!」
「すまねぇ!ケガは?」
「ありません!」
上を見ると光る天使がゆっくりと降りてくる。
「知っていますか?光は何よりも速い!!」
クォンタムと光る天使ヤマト、新たな戦いが始まる。
つづく。




