第一箱 クォンタムに押しつぶされたらクォンタムになっていた話
おはこんばんわ!海ト藤カロ(みとふじ かろ)でーす。
今回から新しい異世界転生したらプラモロボットになっていた話を書いていきたいと思います。
このお話ですね。ずっと書きたいなーってプロットだけ溜めてたんですけども内容がもうアレ、ある作品へのリスペクトの塊だという感じで問題あるかないかでいえばあるんだけどやっぱ書きたい欲には勝てなかった。
なので全力で書いていきたいと思います。目指せ!一日一話投稿!!どうぞお楽しみください!
俺は機械闘士クォンタムが大好きだ。
クォンタムは闘士なんて言われているが実際は『家族で一緒に遊べる巨大ロボット』という議題の下にドミノ博士が作り出したアミューズメント用ロボット。みんなを笑顔にするロボットだったんだ。
ずんぐりむっくりしたフォルムに狐の耳のようなヘッドパーツが愛らしい、そんなロボットだったんだ…。
この世界とは別の宇宙からやってきたASC(Another Space Creature)による侵略が始まるまでは。
彼らに対抗するべく国の軍隊はクォンタムの製造ラインに目を付けてドミノ博士からそれを奪った。
そして笑顔を作るロボット計画を戦うためだけのロボットにシフトチェンジした。
各国がこぞってクォンタムの設計図をベースに独自のクォンタムを作り上げていった。
そして人類は一丸となってASCの脅威を退けたのだ!!!
〇
「・・・っていうのが機械闘士クォンタムのまぁ導入だな!こっから国同士によるクォンタム戦争が始まって、それを見かねたドミノ博士が新たなクォンタムを作り上げて戦争を止めるために仲間たちと奔走するんだよ。メディアじゃスリムな軍事用のが初代クォンタムだとか言ってるけど違うんだぜ!あの可愛らしいずんぐりむっくりのが本当の初代クォンタムなんだ!」
「ふ~ん、そうなんだー…」
ほんの少しの間…。
「ノリが悪いお!!お前が待ち時間暇だって言うからクォンタムの話してやってるのに!」
「あのなぁ朱火。俺はお前が一大事だって言うから彼女とのデートをキャンセルしてまでここまで来たんだよ。でも来てみれば限定商品を買うための手伝いだぁ!?」
彼らは今『機械闘士クォンタム40周年記念イベント』会場限定プラモ販売
の待機列に並んでいた
。
「だって一人一つまでしか売ってくれないんだもん!!元祖・初代クォンタムのキット化はこれが最初で最後なんだぞ!!なんでかというと・・・」
「クォンタムが最初ほのぼのギャグ路線でいったけど売れなかったから途中でシリアス戦闘ものに路線変更したって話だろ。ロボットの外見もその時に変わったって。聞き飽きたわ」
「そう!そこから人気がうなぎのぼり!元祖クォンタムはみんなの記憶から消えていった・・・。長い時を経て今やっとなんだよ!なんで数量限定生産なんだ!?」
「この元祖?クァンタムを知ってるのがお前みたいなコアファンか古参ファンだけだからバンライ的には新規ファンを取り込むことの方が大切なんだろ」
「バンライめ!もっと古参ファンを優遇してくれたっていいじゃないか!」
「キット化されるだけありがたいと思っとけ。それと俺の働いてる会社の悪口はやめろ」
「雷流!お前会社で元祖クォンタムを優遇する企画を出せよ!
」
「俺の部署はクォンタムの担当じゃねぇの」
クォンタムについて熱く語る青年、祖聖寺朱火。
夢は設計、機械設備、工事のスキルで本物の元祖クォンタムを作ること!
朱火に振り回されている青年、久遠雷流。
朱火とは友人でなんだかんだ趣味にも付き合ってくれる。
株式会社バンライで働いている社会人だ!
名前をよく電流と間違えられるよ!『電流』じゃないよ『雷流』だよ!
列に並んでいる間、雷流は朱火のどうでもいいクォンタムうんちくを効かされ続けた。
「よっしやああああ!!」
「はぁ、やっと買えたな」
「これでやっと立体化した元祖クォンタムが・・・俺の家にくるんだああああ!!」
スキップしながら駆け回る朱火に雷流は笑いとため息をこぼした。
「そうだ!記念写真撮ろう!あの実物大クォンタムの前で!」
「はいはい」
二人はクォンタム立像の前に行くとまずは朱火が雷流にスマートフォンを渡した。
「箱と立像がちゃんと入るように撮ってくれよ!」
「立像は全身入れるのか?離れすぎると箱の絵が分からなくなるぞ?」
「そうだな。上半身だけでいいよ。イベント限定プラモとクォンタムが一緒に写ってるのが分かることが重要だからな!」
「ってーと、斜め下から…。よし、ポーズとれ!」
「じゃあ、箱持ちながらジャンプしてドロップキックするから!」
「はぁ?なんでだよ?」
「バッカ!お前!元祖クォンタムはなぁ!お友達をいじめる奴には容赦なくドロップキックをかましてたんだよ!」
「思いのほかバイオレンスな作品だったんだな、元祖クォンタム。わかったよ。早くやれや」
「よし行くぞ!とうっ!!」
カシャッとまずは一枚。撮った画面を朱火に見せてみる。
「いーじゃん!パッケージの絵もちゃんと入ってる!天才かよ!」
「お前のことだからもう何枚かいるだろ?」
「いやいいよ。次は雷流の番だからな!」
「俺はいいよ」
「そういうなって!こういうイベントでの思い出っていつまで作れるかわかんないじゃん!お互い!」
「それもそうだな。かっこよく撮ってくれよ」
朱火は雷流のスマートフォンを受け取り片膝をついてスマホカメラを構えた。
「任せろ!」
雷流も朱火と同じく限定プラモのパッケージを手に持つ。
「クォンタムのパッケージをを顔の横に!そうそう。いくぞ!はい、チー…」
その時であった持っていたスマホからいきなり緊急地震速報が流れだしたのである!
「うわ!?え、地震!?」
雷流も咄嗟に朱火の方へ駆け寄った。
「今の音、地震速報か?」
「うん。これ」
雷流にスマホの画面を見せる。
「震度・・7以上!?」
次の瞬間、巨大な轟音と共にイベント会場全体に激震が走る。
立ってられない程の衝撃が人々を襲った!
周りから悲鳴が上がる、物が倒れる音が聞こえる。
そして朱火は見たこちらに向かって倒れてくる実物大クォンタムの巨大な影を・・・!
「雷流っ!」
朱火は雷流を突き飛ばしていた。
考えるよりも先に体が動いたのだ。
雷流は離れていく朱火に向かって手を伸ばした。
しかし、その手が届くより先にクォンタム立像が朱火を押しつぶした。
「・・・?」
何が起こったのかをすぐに理解できるほど雷流に冷静さはなかった。
ただ茫然と倒れたクォンタム立像とその頭部の下から流れ出る血をながめていたのだ…。
〇
「あ、雷流…無事だったんだ。よかった」
彼の意識は空の上にあった。そこから雷流の事を見下ろしていた。
「そうだ!早く帰らなきゃ!期間限定元祖クォンタムを作り上げなきゃ!」
ジタバタと手足を動かすが上下左右どこにも進めない。
「だめだよ」
「?」
もがいている背後から声をかけられた。
そこに立っていたのは背後から光を発して人型のシルエットしか見えない何かだった。
身長からして子供だろうか?
「誰?」
「君死んじゃったんだ。もうそっちには戻れないよ。こっちに来なさい」
シルエットの少年がくいっと人差し指を自分の方へ曲げると朱火の体が少年の方へ吸い寄せられていく。
「ええええ!?まさか天国に連れていかれる!?なら!ならせめて元祖クォンタムのキットと一緒にーーー!!」
「クォンタム?あのロボットね。あれと一緒になりたいんだね。いいよ。君は自分の命も顧みず他人を助けた。そんな人、稀の中の稀だ。それくらいサービスしてあげるよ。『初代クァンタムのキット』と一緒になーれ」
「え?いや違う!俺が言ってるのは元祖っ…」
「ほーい」
シルエットの少年の体の中へと吸い込まれていく。
「いやあああ!?」
光の少年は朱火の魂を吸い込み終えると一息ついた。
そこへ。
「あー!一足遅かったか―!!」
「あらあら、お早いお着きで」
なんと老若男女、複数のシルエットがやってきたのだ。
「ちぇー、俺もそいつ狙ってたのにー!」
「私の方が先に目を付けてたのよ!」
「早い者勝ちですから。今回は諦めてね」
シルエットたちがギャアギャアと言い争いをしていると。
「こらああああああっ!」
大声で怒鳴りながらなんとも古風な格好をした日本人っぽい顔立ちのおじさんがやってきた。
しかもデカい槍を持っている。
「貴様らぁ!!また勝手に我が子らの魂を自分の世界に送ったな!!」
「うげー、イザナギのおっちゃん。なんだよー。一人貰っただけじゃんか。僕初犯だよ。一回くらい見逃してよ」
「こちらの輪廻の輪から魂が減るという事は!こちら世界の人間がどんどん減っていくという事なんだぞ!というか貴様らはなんでワシの世界からばかり子供らを持っていくんじゃ!」
「70億人もいるんだろ!一人くらい何さ!それに俺は死んで彷徨ってる奴を狙ったけどこの女はどこかの高校の一クラス丸ごと生きたまま持ってったんだぞ!」
「げぇ!?あんたそれは言うなって・・・!」
ギロリとイザナギの眼が少女の形をしたシルエットへ向く。
彼女は踵を返して逃げ出そうとするがイザナギは持っていた槍を投げ、彼女の体を打ち抜いた。
「ぐべぇ!?」
そして槍は少女を先端に付けたままイサナギの手元に戻った。
「持って行った子らは後で返してもらうからな」
「は、はい」
どうやら体を槍で貫かれた程度では死なないらしい。
イザナギは朱火を連れて行ったシルエットの方へ向き直る。
「魂で連れていかれた以上はもうその子はそちらの世界の輪廻に乗ってしまった。奪い返すことはできんか…」
「ちゃんと責任もって管理するからさぁ。今回だけは見逃して!お願い!」
「ハァ…、二度はないぞ」
「やった!」
「でものう。イザナギさんとこの子らは本当に素質がある子が多くてのう。ワシの世界や他の連中の世界でも大活躍しとるし」
「だよなぁ。俺の世界でもすっげぇスキルを発現したり、持ち前の技術で発展途上国を一気に発展させたりさぁ!」
「良質な人間の畜産農家みたいな・・・」
「言い方を考えろ!気分悪いわ!!ワシはお前らのように子らに無駄な力を与えとらんだけだ」
「イザナギさんの世界の人たちは魔法やスキルとか使えないですもんね」
「ワシらからすると魔法もスキルもレベルもなくよくここまで」
「ふん、良い事だけではないわ。この世界の子らはもう妖も魔も神も必要としなくなった。空想の中の産物と化した。この世界の神々はお主らのように子らに干渉することはもうない。ワシらは輪廻だけを管理し、傍観者になることにしたのだ。この世界は人間のモノになった世界なのだ」
「なるほど。世界をすべて人間に託したと…」
「だから人間そのものスペックが高くなってるんだ!」
「特別な力などないからこそ異世界にたどり着いた時の強い力への欲求がすさまじいのか!我々でも予想外の力を発揮するのはそのためか!」
シルエット達(おそらく異世界の神々)がイザナギの世界に関心している中で朱火を連れて行ったシルエットだけが暗い顔をしていた。
「でも、それって悲しくない?自分の子どもたちと触れ合えない、声もかけれない、気づかれない。ね?寂しいよ」
「そうかもな。でもな子というのは何時か親から離れていく。遠からずお前らにもそういった訣別の時は来る。人の行く末。それを決めるのは誰か。その時までに一度考えておくことだ」
イザナギはポンポンと彼の頭をなでる。
「話は変わるが今まで他の世界の魂を必要としてこなかったお前がどうしていきなりこんなことをしたのか教えてくれるか?」
イザナギの顔がシリアスな面持ちに変わる。
「なんかヤバいモノがこっちの世界にやって来たみたいなんだ」
「魔王とかそういった類か?いや、『やって来た』と言ったな」
「うん、どの世界にもない異物。すでにそいつの侵略が進んでる。多分僕らの世界の神々の与える力じゃ太刀打ちできない・・と、思った。だからイザナギさんの子を借りたかった。力があって誰がために戦える人間を・・・ごめんなさい」
「そ奴らは世界の壁を越えられると?」
「うん。僕はそう予想してる。まだ全貌はつかめてないけど。放っておいたら僕の世界の問題だけじゃ済まなくなる。そんな気がするんだ」
「わかった。こちらでも調べてみよう。我が子を頼んだぞ」
「うん!ありがとう!じゃあ僕行くね!」
「ちょっと待て。周りのお前らも聞け!今度無断で我が子ら連れて行きよったら!ゼウスと閻魔とサタンと共に来るからな!!覚えとけ!!」
鬼の形相でそう言うとイザナギは帰っていった。
見ていた皆は震えながら『次からちゃんと許可とってからやろう』と心に誓った。
「ふぅ。さてと。頼んだよ祖聖寺朱火。君が僕の世界の希望だ・・・」
そう言ってシルエットの彼もまた自分の世界へと帰っていった。
〇
(ん・・・ん?)
朱火が目覚めた。眼前あるのは真っ暗な空間。
(生きてる?なんだぁ~あれ夢だったのか~。でも、ここどこだろう?暗くて何も見えないや)
どこかに明かりがないかと起き上がって手を伸ばそうと思ったが動かない。
というか手にあたる部分の感覚がない…。
(え!?ナニコレ!?ドユコト?)
『あれと一緒になれればいいんだね』
頭の中にその言葉が反響する。
(ま・・・まさか・・・・)
動こうと思うと多少体をゆすることはできるがそれと同時にカシャカシャというプラスチックのこすれるような音が・・・・。
(い…。いやああああああああっ!?プラモデルになってるうううううっ!?しかもこれ『初代』の方だ!『元祖』の方にしてッて言ったのにいいいいっ!?」
祖聖寺朱火、世界の希望となるべき彼は今1体の1/10スケール初代クォンタムのプラモデルとなった。彼の運命やいかに!
つづく
望まぬプラモとなってしまった朱火。
だが彼には後戻りはできない。というか今の状態では前に進むこともできない!
彼はこのままパッケージとして洞窟に置き去りにされたままなのか!
次回!彼の前に救世主が現れる!




