1 平和な魔法少女
「カムイはどこ行った!?」
ポルゾイが強く言う。
「見つかりません」
と答える側近の近衛兵。
空を見つめ、城があった足元の土を、思い切り蹴飛ばすポルゾイ。
「さっきの女もどこだ!?」
城と同時に、少女も消えていた。
「ちくしょう!!」
追い詰めた、カムイを仕留め損ねたのを、相当悔しがっていた。
―――――――――
ここは戦場から遥か彼方の、湖。水面に、城が浮いている。
辺りは森に囲まれて、人目から隠している。
城の窓から顔を出す青年、カムイ。
「こ・・ここは?」
キョロキョロしながら、不思議がっている。
すると、
「大丈夫ですか?」
目の前の、湖の上に、空から、ふわりと現れる少女。
水面に浮いている。
「き・・君は?」
驚きながら聞くカムイ。
「私は、アリシャです」
「ぼ・・僕はカムイ。君が助けてくれたのかい?ありがとう」
「いいえ、当たり前のことをしただけです」
と謙遜して答えるアリシャ。
――カムイは城内へと、アリシャを招き入れる。
戦いの後のため、ボロボロ。
「痛・・!」
カムイは肩に怪我をしている。それを見たアリシャは、
「診せてください」
と言うと、そっと手で触れる、そして目を瞑ると。
あっという間に、傷が塞がる。
「・・魔法?ありがとう」
魔法自体は、カムイにとって、珍しくなかったけど、
回復が早すぎて、驚く。
「いいえ」
笑顔で答えるアリシャ。
「せめてもの恩返しに、お料理でも、ご馳走させてくれないかな?」
カムイは、そう言うと、城内の食堂へアリシャを招く。
そして、簡単な食事を用意する。
中は、あちこち崩れている。テーブルへ座り、向かい合う2人。
辺りは、夜も更けて、暗くなっている中、
ロウソクの、明かりで照らしながら、食事を準備する。
「こんなところで、ごめんね」
と言う、カムイ。
「いいえ、ありがとうございます」
と、礼をするアリシャ。
「いただきます」
そんな中、2人は食事を摂る。しかし、食が進まないカムイ。
「・・大勢の仲間を失ってしまった」
悲しみの余り、涙を流す。仲間は、ほぼ全滅。
「僕が無力なせいで・・」
その姿を見ていたアリシャは、立ち上がり、近付くと、
カムイの肩にそっと触れる。
「泣くことはありません、カムイ様」
とアリシャは言う。
「大丈夫。命は戻ります」