カミングアウト
2018年11月に文学賞受賞した作品が、2019年4月に書籍化されることが公表された。
また、会社の管理からは、出版されて印税が入ってくることは問題ない、との認識をもらっている。
ならば、いっそ文学賞受賞、出版決定を大っぴらに公開しよう、というふうに考えた。
というのも、僕は以前から、小説を書いていて文学賞に応募している、ということを公表していたからだ。
(タイトルとペンネームは伏せていたけど。)
僕が務めている会社では、朝礼で「1分間スピーチ」なるものを持ち回りですることになっている。
一つの部署ごとに、そこに所属している人の前で、何かしらのネタを発表するわけで、まあ、人前で話すことに慣れる、という意味もあるのだと思う。
それだけ聞くとよくある話なのだが、実は僕が所属している部署、朝礼時に200人ぐらいが聞いているという、かなりの大所帯なのだ。
これまでも、
「文学賞に応募して、最終選考に残ったけど、あと一歩のところで受賞を逃した」
というスピーチをしていて、それを聞いたU係長などはすれ違うたびに
「先生!」
と、からかい半分で声をかけてくれていた。
「文学賞で最終選考に残った」
という言葉だけ聞くと、わりと凄そうに聞こえたのだと思う。
しかし、今回のスピーチではそれ以上の内容、
「ようやく受賞することができました! この7月に出版されます!」
と宣言することができたのだ。
すると、U係長は
「えっ、じゃあ本当に先生になるの?」
という感じで驚いてくれたし、他にも、僕の上司に
「あの人が朝礼で言っていた内容の、小説のタイトルを教えてほしい!」
というような問い合わせもあった。
(ちなみに、このときもタイトルは伏せていた。)
やっぱり、「最終選考で落選」と、「受賞して出版される」では、インパクトが数段上のようだった。
また、そのスピーチの中で、
「僕が数年前に小説を書いている、と言ったとき、『まあ文学賞でも受賞して出版でもされれば買って読んであげます』と言っていた同じ係の同僚には、是非約束を果たしてもらおうと思っています!」
と冗談っぽく触れたところ、彼(同僚Y)にはなぜか
「ちゃんと買うって言ってるじゃないですか!」
と軽く逆ギレされてしまった。
ちなみに彼は後に購入してくれたものの、
「部屋が狭くなる」
という理由で電子書籍版の入手であり、しかも
「ほかにもまだ未読の本があって、順番に読んでいっている」
という理由で、未だに僕の小説は読んでもらえていない。
しかしまだこの時点でも、「出版確定」の状態。
実際に本が店頭に並ぶ2019年7月まで、ヤキモキしながら、しかしワクワクしながら過ごすことになったのだった。
※実際に出版された後も、思いもよらない大きな反響、意外な展開がありました!
それはまた次回に書こうと思っています!