受賞の瞬間
僕の小説は、「ネット小説大賞」など、いろんな文学賞で最終選考まで残ったことが何回かあった(今回書籍化された作品以外も含めて)。
しかし、受賞に至ったことは一度もなかった。
だから、この時(2019年11月)も、一次選考は通過していたものの、主催者から何の事前連絡もなかったこともあり、半分あきらめていた。
そんな中で、その投稿サイトに「小説コンテスト最終選考結果発表」の文字が表示されているのを見て、
「ああ、今回もダメだったか……」
とため息をつきながら上から順番に受賞作を見ていった。
最終選考に残っている作品は、全作品、少なくとも第一話はすべて目を通していたので、
「ああ、やっぱりこれが受賞したのか」
などと考えながら眺めていると、最後の一作に、一番見慣れた作品のタイトルが。
「はふぇ?」
数秒間、理解が追い付かなかった。
それは、間違いなく、自分が書いた作品のタイトルだった。
「えっ……受賞した!?」
思わずそう声にしたのを鮮明に覚えている。
そして特集ページのリンクをクリックすると、僕の作品に対する評価が書かれており、ここで初めて、本当に受賞したのだと理解した。
賞金を伴う文学賞を受賞したのは、人生で初めてだった。
さらに、サイトでの発表から少し遅れて、その日のうちに主催者からメールが届いた。
ここでようやく、受賞の実感が湧いてきた。
とはいえ、この時点ではまだ「書籍化検討」だった。
実際に出版が決まるまでは、いくつかの試練と、さらに数か月の時間を要することになるのだった。